処刑という名の復讐劇
懺罪宮。
その中で日番谷は立ったまま、ジッと天井を見つめていた。
「・・・」
先刻感じた二つの霊圧。
一つは死神代行のもの。もう一つは朽木白哉の義妹のもの。
その時感じた霊圧の揺れに、疑問を覚えた。
(何をしにきたんだ・・・?)
呆然と、生気のない瞳で、日番谷は思った。
首を元に戻して、外の光が漏れる隙間に近づいた。
そこから外の様子を見ると、記憶の中にある日常より静けさを増した世界。
しかし、今の日番谷にとってはどうでもいいことだった。
外がどんな風になろうと、自分がどんな運命を辿ろうと、なんとも思わない。
今、心の全てを埋め尽くしているのは――罪を償うこと。
それ以外は、何がどうなろうと、知ったことではなかった。
「やがて、ここは静かな場所になる・・・」
生き物の気配が消え、風と自然の音のみが鳴る世界。
それは――世界の壊滅だった。
***
十番隊執務室。
乱菊に連れてこられた一護とルキアは、室内に入って見渡した後、あることに気付いて足を止める。
「乱菊さん、冬獅郎は?」
「え?何が?」
乱菊は一護の問いを気にすることもなく菓子を出し始めた。
「ま、松本副隊長・・・?」
「何よ?朽木」
「いえ・・・日番谷隊長は何処へ・・・?」
ルキアが改めて問うと、乱菊は「ああ、そういえばあんた達には言ってなかったわね」と言って振り返った。
「隊長は今、懺罪宮にいるのよ」
「・・・え?」
乱菊の言葉に、二人は一瞬息をすることを忘れる。
「な、何言ってんだよ、乱菊さん・・・」
言葉を震わせながら、一護は言う。
ルキアは未だに呆然としていた。
「え?何のこと?」
「何のことじゃねぇよ!!どういうことだよ!!冬獅郎が今懺罪宮に居るって!!」
怒鳴る一護を鬱陶しそうに乱菊は不機嫌な表情になって、「どうもこうも、まんまの意味よ」と言って二人に向き直った。
「何が不満なのよ。隊長が懺罪宮に居て何か困ることがあるの?」
「困ることって・・・だって、懺罪宮にいるってことは・・・!!」
「ええ。隊長は一か月後に処刑されるのよ」
「――っ!!」
平然と言う乱菊に、二人は驚愕して眼を見開いた。
普段は隊長である日番谷をいつも心配し、日番谷に何かあろうものなら誰にも止めることもできないほど、日番谷に駆け寄っていくのに。
「どうしたんだよ!!乱菊さん!!」
「何がよ・・・あんた達、さっきから変じゃない?」
「なにもおかしくはありません!!松本副隊長!日番谷隊長が処刑されるというのに、何もされないのですか!?」
「何もしないわよ。だって命令だもの。逆らえるわけないじゃない」
「・・・!!」
本当に乱菊の口から出た言葉だと信じられなかった。
一護は拳を強く握りしめ、
「ふざけんなよ!!あんなに冬獅郎のこと慕ってたじゃねぇか!!何で命令に逆らってでも助けようと思わねぇんだよ!!」