処刑という名の復讐劇
現世・クロサキ医院。
草冠の一件から、疲れて現世に戻ってきた一護とルキアは、それぞれの寝場所ですぐ眠ってしまった。
よほど疲れていたのか、伝令神器の鳴る音にも気付かず、ルキアと一護は熟睡している。
鳴り止んだ伝令神器。
室内は、不気味さを感じるほど静かだった。
「ん・・・」
ようやく目を覚ましたルキアは、まだ寝むそうに目を擦りながら起き上る。
ルキアの寝ている押し入れは日差しが入らず、永遠の夜のようなもの。
日差しで起きることは不可能だった。
押し入れの襖を音も立てずに開けると、眩しい朝日が目に入ってくる。
それに目を細めながら、ルキアは押し入れを出た。
「よう、ルキア」
「うむ」
自分同様、寝むそうにしている一護に軽く頷くと、寝ぐせのついた髪を手で整える。
「もうこんな時間かよ・・・」
時計を見ると、9時を過ぎていた。
「まぁ、休みだからいっか・・・」
平日ならば、あの煩い父親が起こしに来るが、今日は休日のため静かだった。
「ん?」
「どうした、ルキア?」
何かに気付いたようにルキアが伝令神器を手に取る。
「どうやら尸魂界から着信があったようだ」
「・・・お前、起きなかったのか?」
近くでなっていて起きないとは、と一護が呆れる。
「仕方ないだろう!疲れていたのだか・・・――?」
「なんだよ?」
いきなり口を閉ざしたルキアに、一護が問う。
「いや・・・随分と早い時刻に来たものだな、と・・・」
「ん?」
画面をのぞいてみると、着信が来たのは朝の4時。
「確かに早いな」
「・・・尸魂界で何かあったのか?」
「おいおい、勘弁してくれよ・・・」
王印が盗まれ、この後直にまた何かがあったのだと考えると気が遠くなってくる。
げっそりと呟いた一護の頭をルキアは思い切り叩いた。
「痛っ!!」
「たわけ!!そんなこと言ってる場合か!!とりあえず、浦原商店へ向かうぞ。浦原なら何か知っているかもしれん」
「ああ、わかったよ」
一護とルキアは死神化すると、窓から飛び出し浦原商店へ向かった。
***
浦原商店。
「おや、黒崎さんに朽木さん。何スか?こんな時間から」
もう10時前だというのに、寝むそうに出てきた店の店長・浦原に若干呆れながらルキアは聞いた。
「浦原。尸魂界で何かあったと聞いてないか?」
「何のことッスか?」
「今朝の4時頃、尸魂界から連絡があったのだ」
そう言ってルキアは伝令神器を見せる。
それを受け取りながら「何かあったんすかね~」と浦原は呟く。
「だからそれを貴様に聞いているのだ」
「いや、アタシにはわからないッス!」
「そんなハッキリと・・・」
笑いながらそう言う浦原に、一護は肩を落とす。
「まぁ、あったとしても『瀞霊廷が崩壊!』とかじゃないと思うんで、大丈夫でしょ♪」
「・・・」
冗談でも恐ろしいことを言う浦原を、二人は冷めた目で見つめていた。
「どうしても気になるなら行ってみればいいじゃないっすか。穿開門なら開けますよ?」
「結構だ!!」
浦原の穿開門を使えば、尸魂界に行くのにも命がけだ。
ルキアはそう言って斬魄刀を抜刀する。
「遠慮しなくてもいいのに・・・」
「遠慮ではない!」
ピシャリとそう言うと、ルキアは空間に斬魄刀を突き立て、
「解錠!」
すると二重になった障子が現れ、それが開くと中から二匹の地獄蝶が現れる。
「何かあった、か・・・」
「何か言ったか?浦原さん」
ポツリと呟いた浦原に、一護は聞き返す。
浦原は「何でもないッスよ♪」とハイテンションで言うもんだから、一護は若干引きながら、「そ、そうか・・・」と言った。
「行くぞ、一護!」
「おう!」
二人はそうして穿開門の中へ入って行った。
残された浦原は穿開門が消えたと同時に、ニヤリと口角を上げる。
「何にもないと、いいッスねぇ・・・」
そう呟いた浦原は、商店の中へ入っていく。
その浦原商店の上には、不気味な姿をした女の姿があった。