第一章 問いかけ
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「あの…」
私はおそるおそる、聞いてみた。
「何で、縛り付けられてるの?」
もしかして…誘拐されてるとか?
それとも…児童虐待とか?
つか、子どもが縛られて夜中に神社に放置されてる時点で、虐待だと思うけど…。
江戸時代の世間の常識って時々なんかすごく違ってたりするから…。
でもやっぱ…この子の表情というか、雰囲気って…何か複雑な事情がありそうではあるよね。
夜中にこんなところにいて、親は心配してないのかな?
そう、私がいろいろ気を回しちゃってるのも知らず、ふん、と男の子はなぜか得意げに答えた。
「別当に、お気に入りの壺を割った罰に、一晩こうしてろと言われた」
「べっとう…って何?」
「は?妖怪のくせに別当も知らないのか?」
いや…だから妖怪じゃないってば。
「別当は、神社に住んでる坊主だろ」と、当り前のように言う。
「お坊さんがなんで寺じゃなくて神社に住んでるの?」
「何故かは誰も知らん。住んでるんだから、しかたないだろ?
神主より威張りくさって、汚い金で壺なんか集めちゃ、へらへらしてる下卑た坊主だ」
なんか、年の割に、小難しい言葉を使う子だなあ。
あ…逆か。
このぐらいの年の男の子って、無意味に難しい言葉使ったり、大人の悪口言って、格好つけしたがるよね。
「で、壺、割ったんだ」
「割ったかと聞かれたから、あんな小汚い壺、割れたからと大騒ぎする方がおかしいと言ってやった」
ふん、と男の子は、また得意げに鼻先で笑った。
いや…そんな…開き直らなくても…。
「それってつまり…壺割ったから縛られてるというより、態度が悪いってか、反省してないから…だよね?
だとしても縛るのってやり過ぎだと思うけど」
「そうか?」
と、縛られてる本人が、まったく気にしてない様子で言う。
「別当のやつ、雪舟の話でも気取ってるのかと思ってた」
「雪舟?」
「本当に何も知らない奴だな。
雪舟って小僧がまあ、こんな感じで縛られて、夜中にぴいぴい泣いて、涙でネズミの絵を描くという話だ」
よくわかんないけど…この時代はふつうの罰…なんかな?
「…で、ここで縛られてること、親御さんは知ってるの?」
そう言ったとたん。
少し柔らかくなりかけていた男の子の表情が、最初の、凍てついたような瞳に戻った。
「…余計なお世話だ…」
私は、とんでもない地雷を踏んだみたい。
それが何かはわからないけど。
「そ…そんなことより…ほどくのが先だよねっ」
私はあわてて柱の裏に回ってみた。
こっち側は暗くてよくわからないのに…やっぱり、自分の手だけは、白くぼうっと光って見える。
とにかく、手探りで、縛られた男の子の手を何とかしようとしたけれど…。
「あれ?」
私は間の抜けた声を出してしまった。
「…あれれ?」
「何だよ」
「あの…私の手、君の体を通り抜けちゃって…紐、ほどこうにも、ほどけない…」
「何だそれは」
男の子は、あきれたようなため息をついた。
「じゃあお前、おいの刀、代わりに抜けないか?」
「たぶん、ダメだと思うけど…」
案の定、私の手は刀をすり抜けて、つかむことができなかった。
「役に立たない妖怪だなあ」
「だから。妖怪じゃないって!」
私はおそるおそる、聞いてみた。
「何で、縛り付けられてるの?」
もしかして…誘拐されてるとか?
それとも…児童虐待とか?
つか、子どもが縛られて夜中に神社に放置されてる時点で、虐待だと思うけど…。
江戸時代の世間の常識って時々なんかすごく違ってたりするから…。
でもやっぱ…この子の表情というか、雰囲気って…何か複雑な事情がありそうではあるよね。
夜中にこんなところにいて、親は心配してないのかな?
そう、私がいろいろ気を回しちゃってるのも知らず、ふん、と男の子はなぜか得意げに答えた。
「別当に、お気に入りの壺を割った罰に、一晩こうしてろと言われた」
「べっとう…って何?」
「は?妖怪のくせに別当も知らないのか?」
いや…だから妖怪じゃないってば。
「別当は、神社に住んでる坊主だろ」と、当り前のように言う。
「お坊さんがなんで寺じゃなくて神社に住んでるの?」
「何故かは誰も知らん。住んでるんだから、しかたないだろ?
神主より威張りくさって、汚い金で壺なんか集めちゃ、へらへらしてる下卑た坊主だ」
なんか、年の割に、小難しい言葉を使う子だなあ。
あ…逆か。
このぐらいの年の男の子って、無意味に難しい言葉使ったり、大人の悪口言って、格好つけしたがるよね。
「で、壺、割ったんだ」
「割ったかと聞かれたから、あんな小汚い壺、割れたからと大騒ぎする方がおかしいと言ってやった」
ふん、と男の子は、また得意げに鼻先で笑った。
いや…そんな…開き直らなくても…。
「それってつまり…壺割ったから縛られてるというより、態度が悪いってか、反省してないから…だよね?
だとしても縛るのってやり過ぎだと思うけど」
「そうか?」
と、縛られてる本人が、まったく気にしてない様子で言う。
「別当のやつ、雪舟の話でも気取ってるのかと思ってた」
「雪舟?」
「本当に何も知らない奴だな。
雪舟って小僧がまあ、こんな感じで縛られて、夜中にぴいぴい泣いて、涙でネズミの絵を描くという話だ」
よくわかんないけど…この時代はふつうの罰…なんかな?
「…で、ここで縛られてること、親御さんは知ってるの?」
そう言ったとたん。
少し柔らかくなりかけていた男の子の表情が、最初の、凍てついたような瞳に戻った。
「…余計なお世話だ…」
私は、とんでもない地雷を踏んだみたい。
それが何かはわからないけど。
「そ…そんなことより…ほどくのが先だよねっ」
私はあわてて柱の裏に回ってみた。
こっち側は暗くてよくわからないのに…やっぱり、自分の手だけは、白くぼうっと光って見える。
とにかく、手探りで、縛られた男の子の手を何とかしようとしたけれど…。
「あれ?」
私は間の抜けた声を出してしまった。
「…あれれ?」
「何だよ」
「あの…私の手、君の体を通り抜けちゃって…紐、ほどこうにも、ほどけない…」
「何だそれは」
男の子は、あきれたようなため息をついた。
「じゃあお前、おいの刀、代わりに抜けないか?」
「たぶん、ダメだと思うけど…」
案の定、私の手は刀をすり抜けて、つかむことができなかった。
「役に立たない妖怪だなあ」
「だから。妖怪じゃないって!」