作者のぼやき
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一時期は、ためしに、正助目線の三人称で書いてみたこともあります。その冒頭は、下記のような感じでした。
小説としては、こっちの方が王道で、質も上ですが、二次として見た場合はまったくキャラが立ってないし、完全に他人事…。
とにかく、正助目線にすると、この子は絶対につらいとか苦しいとか言わない。まったく感情を表に出さないので、話が盛り上がらない。
ある意味異常なくらい、自分の不幸に対して冷めてます。
まあ、お暇なら読み比べてみてください。
***********
≪第一章 正助の事情≫
幼いころから、女のような顔をしている、と言われるのが、正助には心底嫌だった。
なにしろ、男女七歳にして席を同じうせず、どころか、女とは接するな、女のことは一切話すなと大真面目に男児に教えるような土地柄である。
男は男らしいのが当然。
江戸あたりなら線が細く、少女と見まがう顔をしていれば、さぞかしちやほやもされるだろうが、この加治屋町では軽蔑の対象にしかならない。
それに、女と接するなと言われても、そんなことは正助には不可能である。
姉は嫁には行ったものの、女やもめの伯母の家に母と妹3人とで居候して、男は自分ひとり。
これで女と話さずに一日が送れるわけがない。
当然、女の仲間だの、女の腐ったようだのと言われ、イジメの対象になるわけだが…これがまたひどかった。
さすがに江戸時代も末となると、たいがいの藩の剣道場では竹刀を使い、まず礼儀を基本に教えるものだが、この藩ではいまだに木刀や棒切れを使い、一旦それを握ったら敵なのだから礼などするなと教える。防具も使わない。
そんな荒っぽい場所で、こいつは女々しそうだと目を付けられれば、そりゃあもうさんざんに絞られる。
あげくに、稽古の帰りにも、調子にのった朋輩連中に、因縁を付けられて殴られたりする。
複数に囲まれて腹を叩かれ、家に帰って吐くような日が何回か続き、さすがにこれは変だと近所の大人どもが気づいたけれど、結局は、正助は胃腸が弱いから剣術には向かないのだろうという話で片がついてしまった。
稽古に行かなければ殴られないのだから、それはそれで助かったが、武士の子としてそれでいいのかという劣等感だけは、深く刻みつけられることになった。
ただ幸い、正助はかなり頭のいい方ではあった。
従って、剣術で芽が出そうにないのなら、学問で頑張ろうと思ったわけだが…。
この加治屋町では、男児は腕力があってケンカに強いのが一番という価値観なので、学問所でいくら頑張って主席を取ったところで、誰も評価してくれない。
大人や年上相手に、下手に読んだ書物の内容などをぽろっと口に出してしまうと、「議をゆな(理屈を言うな)」とどやしつけられて、あの正助というやつは生意気だから、性根をたたき直してやらなければならないと、近所中に言いふらされる。
それを聞いた学問所の年長組のやつらに、帰り道に…また剣術のときと同じことになる。
そもそも、正助には女のような顔以外にも、目をつけられやすい要素がそろっていた。
よその藩でもあることだが、ここの武士にも、城下士と郷士という身分の差があり、城下士は郷士を卑しんで口も利かない。
城下士とは、文字どおり城下に住んでいる武士のことだ。
ここの藩の城は二つの川に囲まれ、その内側が城下にあたるわけなのだが…正助の生家は城下士の家柄にもかかわらず、川の外側、つまり城外の高麗町にあった。
高麗、つまり大陸から渡って来た人間たちが、本来住んでいた場所だ。
そんな城外の、大陸人の子孫も住む町に生まれた正助は、本当の城下士とは言えないから口を利くなと、他の城下士の子の中には、親に言い含められている奴らもいる。
正助が加治屋町に来たのは、七歳の時だ。
高麗町には貧乏な武士が多く、学問所の師範にもろくな人間がいないからと、教育熱心な父親は、正助を城下の加治屋町に住む女やもめの妹の所にひとり送り込んで、自分は家族を置いて離島に赴任してしまった。
おかげで正助は、大人の男の後ろ盾が一人もいないという悲惨な状況下で、ひとり孤独な戦いをする羽目になってしまったわけだ。
それが耐えきれない状況にまで悪化したのは、九歳の時だ。
どの町でも、近所の悪童連中を取りまとめているガキ大将というものが、必ず存在する。
この加治屋町の吉之助というガキ大将は、妙に人望のあるやつで、十二歳ながら奴のためには死んでもいいなどとほざくような子分を多く従えていた。
こいつが、ちょいと出先でよその町の悪ガキ連中とのケンカに巻き込まれて、大ケガをした。
正助は、そんなガキ大将や仲間とはほとんど付き合いがなかったし、ケンカとも一切無関係だったので、その話を聞いた時は別に何とも思わなかったのだが…。
たまたま、正助もよそ者だという点がまずかった。
ガキ大将がよそ者に斬られてうっぷんがたまっている子分たちの、近所に住んでいるよそ者が、正助しかいなかったために、なぜか八つ当たりの対象に祭り上げられることになってしまった。
恐ろしいことに、吉之助の人望は大人連中にまで及んでいたために、町の全員からあからさまな敵意を浴びる日々が続いた。
さすがにこれでは身がいくつあっても足りないと、真剣に家出を考え始めたとき、父が赴任から帰って来た。
そして家族そろって城下の他の町にある役宅で暮らすことになり、ひとまず平和が訪れたと思ったのだが…。
ここで、とんでもないことが起こった。
藩内でお家騒動が起こり、たまたまその役所が巻き込まれたというだけの理由で、父が島流しにあってしまった。
当然、正助と残された家族は役宅を追い出され、また加治屋町の伯母の家に居候をすることになってしまった。
女みたいな顔、痩せっぽっち、剣術が弱い、学問ができて生意気、大人の男の後ろ盾がいない、よそ者…とずらりと並んだ正助のイジメられる理由の最後に、華々しく、罪人の子どもという最強の理由が添えられることになったわけである。
≪第二章 流人船≫
その日の朝、正助は、港の端にある埠頭に向かって、ふらふらと歩いていた。
ふらふらとではなく、もう少ししっかり歩きたかったが、最近まともに食っていない。しゃんと背筋を伸ばして歩くのには、少しばかり体力不足だった。
後になってから考えると、その日は、そんな転落続きの正助の少年時代の中でも、いちばんどん底だったろう。
たまたま港に着いたばかりの船の上から、岸に集まった野良猫に、漁師が商品にならない小魚を投げてやっているのが見えた。
情けない話だが、ついそちらを見てしまう。
その途端、あっちへ行けと怒鳴られ、石を投げられた。
まあ仕方ない。流人関係にかかわると、魚群が沖に流れてしまうから縁起が悪いと、漁師たちの間では禁忌になっている身の上だ。
それにしても、自分が野良猫以下の扱いだという事実は、つくづく情けない。
埠頭に着くと、そこには昨日島から来た流人船のそばに、もう人だかりができていた。
まもなく船から出て来た島役人が、大声で名前を呼び始める。
流人からの手紙がある場合に家族に渡したり、消息を伝えたりするためだ。
正助は他の家族に交じって、ひとりひとり呼ばれる名前に聞き入った。名が呼ばれるたびに、人ごみのどこかから感情の高ぶった声が上がる。
やる気のなさそうな島役人のたらたらしたやり方のせいで、すべての名が呼ばれ切るには、かなり長い時間がかかった。が、今月も父の名前は出なかった。
人ごみをかき分けて前に出ると、同じように流人の消息が分からなかった家族が、島役人の前に並んでいる。
その行列に並んでまた辛抱強く待ち、ようやく順番が回ってきたところで父の名前を出すと、島役人は人目をはばかるように片手を出した。これもいつものことだ。
目立たないように、飯もろくに食わずにかき集めてきたなけなしの三両を渡す。渡す決まりなどないが、渡さねば父がどうなるかも、自明の話だからだ。
島役人は帳面を繰り、「特に何もないな」と言った。
これもいつものことだ。消息が何も分からないまま、何か月も過ぎている。正助が島役人に食い下がると、また、手を出された。しかし、もう渡す金など一銭もない。
それがわかると島役人は、正助を押しのけて「次」と言った。
毎月のことだが、大人の男の一か月の給金並みの金をただ取られて、何も返って来ない…というのには、かなりの徒労感を覚える。
もう日が高く上り、昼を過ぎている。これから口入屋にいっても仕事の口も無いだろうが、家に帰って伯母の嫌味や母の愚痴を聞く気にもなれない。
なんとなく、港を見下ろす高台の上の神社に足が向いて、賽銭すら無いが参拝して父の無事などを祈ってみた。
港の神社によくある話だが、ここも別れた人にまた会えるなどというご利益を掲げているせいか、絵馬には失せ人探しの願いなどが切々と書いてあるものも目に付く。
なんとなくそういう絵馬をぼんやり眺めていると、なんとなく七歳ぐらいの男の子が神隠しにあって親が探しているというものが、いくつか目に付いた。
偶然とは思うが、妙に男の子の特徴や、消えた状況が似ている。消えた日がだいたい等間隔に並んでいるのも、まあ、気になると言えば、気になる。
最近のものは…小間物屋の小僧だ。こいつの顔と名前は知っている…知っていた、と言うべきか。
しかし、そんなことはどうでもいい。
もう何か月もの間、毎月の三両を集めるためにろくに寝ず、飯も食わずに働いたり、親戚連中に頭を下げて歩いたりして、疲れがたまっていた。
境内の片隅の、景色のいい草地に、腰を下ろして休むことにした。
ここからは、眼下に広がる湾全体と、その真ん中で海中からそびえ立ち、わずかに白い煙を噴いている緑の山が一望できる。
正助は、この城下にあるたいがいの物を嫌っていたが、この景色だけは好きだった。
風が潮の香りを運んでくる。
何となくぼーっと海を眺めているうちに、いつの間にか、少し眠ってしまった。
小説としては、こっちの方が王道で、質も上ですが、二次として見た場合はまったくキャラが立ってないし、完全に他人事…。
とにかく、正助目線にすると、この子は絶対につらいとか苦しいとか言わない。まったく感情を表に出さないので、話が盛り上がらない。
ある意味異常なくらい、自分の不幸に対して冷めてます。
まあ、お暇なら読み比べてみてください。
***********
≪第一章 正助の事情≫
幼いころから、女のような顔をしている、と言われるのが、正助には心底嫌だった。
なにしろ、男女七歳にして席を同じうせず、どころか、女とは接するな、女のことは一切話すなと大真面目に男児に教えるような土地柄である。
男は男らしいのが当然。
江戸あたりなら線が細く、少女と見まがう顔をしていれば、さぞかしちやほやもされるだろうが、この加治屋町では軽蔑の対象にしかならない。
それに、女と接するなと言われても、そんなことは正助には不可能である。
姉は嫁には行ったものの、女やもめの伯母の家に母と妹3人とで居候して、男は自分ひとり。
これで女と話さずに一日が送れるわけがない。
当然、女の仲間だの、女の腐ったようだのと言われ、イジメの対象になるわけだが…これがまたひどかった。
さすがに江戸時代も末となると、たいがいの藩の剣道場では竹刀を使い、まず礼儀を基本に教えるものだが、この藩ではいまだに木刀や棒切れを使い、一旦それを握ったら敵なのだから礼などするなと教える。防具も使わない。
そんな荒っぽい場所で、こいつは女々しそうだと目を付けられれば、そりゃあもうさんざんに絞られる。
あげくに、稽古の帰りにも、調子にのった朋輩連中に、因縁を付けられて殴られたりする。
複数に囲まれて腹を叩かれ、家に帰って吐くような日が何回か続き、さすがにこれは変だと近所の大人どもが気づいたけれど、結局は、正助は胃腸が弱いから剣術には向かないのだろうという話で片がついてしまった。
稽古に行かなければ殴られないのだから、それはそれで助かったが、武士の子としてそれでいいのかという劣等感だけは、深く刻みつけられることになった。
ただ幸い、正助はかなり頭のいい方ではあった。
従って、剣術で芽が出そうにないのなら、学問で頑張ろうと思ったわけだが…。
この加治屋町では、男児は腕力があってケンカに強いのが一番という価値観なので、学問所でいくら頑張って主席を取ったところで、誰も評価してくれない。
大人や年上相手に、下手に読んだ書物の内容などをぽろっと口に出してしまうと、「議をゆな(理屈を言うな)」とどやしつけられて、あの正助というやつは生意気だから、性根をたたき直してやらなければならないと、近所中に言いふらされる。
それを聞いた学問所の年長組のやつらに、帰り道に…また剣術のときと同じことになる。
そもそも、正助には女のような顔以外にも、目をつけられやすい要素がそろっていた。
よその藩でもあることだが、ここの武士にも、城下士と郷士という身分の差があり、城下士は郷士を卑しんで口も利かない。
城下士とは、文字どおり城下に住んでいる武士のことだ。
ここの藩の城は二つの川に囲まれ、その内側が城下にあたるわけなのだが…正助の生家は城下士の家柄にもかかわらず、川の外側、つまり城外の高麗町にあった。
高麗、つまり大陸から渡って来た人間たちが、本来住んでいた場所だ。
そんな城外の、大陸人の子孫も住む町に生まれた正助は、本当の城下士とは言えないから口を利くなと、他の城下士の子の中には、親に言い含められている奴らもいる。
正助が加治屋町に来たのは、七歳の時だ。
高麗町には貧乏な武士が多く、学問所の師範にもろくな人間がいないからと、教育熱心な父親は、正助を城下の加治屋町に住む女やもめの妹の所にひとり送り込んで、自分は家族を置いて離島に赴任してしまった。
おかげで正助は、大人の男の後ろ盾が一人もいないという悲惨な状況下で、ひとり孤独な戦いをする羽目になってしまったわけだ。
それが耐えきれない状況にまで悪化したのは、九歳の時だ。
どの町でも、近所の悪童連中を取りまとめているガキ大将というものが、必ず存在する。
この加治屋町の吉之助というガキ大将は、妙に人望のあるやつで、十二歳ながら奴のためには死んでもいいなどとほざくような子分を多く従えていた。
こいつが、ちょいと出先でよその町の悪ガキ連中とのケンカに巻き込まれて、大ケガをした。
正助は、そんなガキ大将や仲間とはほとんど付き合いがなかったし、ケンカとも一切無関係だったので、その話を聞いた時は別に何とも思わなかったのだが…。
たまたま、正助もよそ者だという点がまずかった。
ガキ大将がよそ者に斬られてうっぷんがたまっている子分たちの、近所に住んでいるよそ者が、正助しかいなかったために、なぜか八つ当たりの対象に祭り上げられることになってしまった。
恐ろしいことに、吉之助の人望は大人連中にまで及んでいたために、町の全員からあからさまな敵意を浴びる日々が続いた。
さすがにこれでは身がいくつあっても足りないと、真剣に家出を考え始めたとき、父が赴任から帰って来た。
そして家族そろって城下の他の町にある役宅で暮らすことになり、ひとまず平和が訪れたと思ったのだが…。
ここで、とんでもないことが起こった。
藩内でお家騒動が起こり、たまたまその役所が巻き込まれたというだけの理由で、父が島流しにあってしまった。
当然、正助と残された家族は役宅を追い出され、また加治屋町の伯母の家に居候をすることになってしまった。
女みたいな顔、痩せっぽっち、剣術が弱い、学問ができて生意気、大人の男の後ろ盾がいない、よそ者…とずらりと並んだ正助のイジメられる理由の最後に、華々しく、罪人の子どもという最強の理由が添えられることになったわけである。
≪第二章 流人船≫
その日の朝、正助は、港の端にある埠頭に向かって、ふらふらと歩いていた。
ふらふらとではなく、もう少ししっかり歩きたかったが、最近まともに食っていない。しゃんと背筋を伸ばして歩くのには、少しばかり体力不足だった。
後になってから考えると、その日は、そんな転落続きの正助の少年時代の中でも、いちばんどん底だったろう。
たまたま港に着いたばかりの船の上から、岸に集まった野良猫に、漁師が商品にならない小魚を投げてやっているのが見えた。
情けない話だが、ついそちらを見てしまう。
その途端、あっちへ行けと怒鳴られ、石を投げられた。
まあ仕方ない。流人関係にかかわると、魚群が沖に流れてしまうから縁起が悪いと、漁師たちの間では禁忌になっている身の上だ。
それにしても、自分が野良猫以下の扱いだという事実は、つくづく情けない。
埠頭に着くと、そこには昨日島から来た流人船のそばに、もう人だかりができていた。
まもなく船から出て来た島役人が、大声で名前を呼び始める。
流人からの手紙がある場合に家族に渡したり、消息を伝えたりするためだ。
正助は他の家族に交じって、ひとりひとり呼ばれる名前に聞き入った。名が呼ばれるたびに、人ごみのどこかから感情の高ぶった声が上がる。
やる気のなさそうな島役人のたらたらしたやり方のせいで、すべての名が呼ばれ切るには、かなり長い時間がかかった。が、今月も父の名前は出なかった。
人ごみをかき分けて前に出ると、同じように流人の消息が分からなかった家族が、島役人の前に並んでいる。
その行列に並んでまた辛抱強く待ち、ようやく順番が回ってきたところで父の名前を出すと、島役人は人目をはばかるように片手を出した。これもいつものことだ。
目立たないように、飯もろくに食わずにかき集めてきたなけなしの三両を渡す。渡す決まりなどないが、渡さねば父がどうなるかも、自明の話だからだ。
島役人は帳面を繰り、「特に何もないな」と言った。
これもいつものことだ。消息が何も分からないまま、何か月も過ぎている。正助が島役人に食い下がると、また、手を出された。しかし、もう渡す金など一銭もない。
それがわかると島役人は、正助を押しのけて「次」と言った。
毎月のことだが、大人の男の一か月の給金並みの金をただ取られて、何も返って来ない…というのには、かなりの徒労感を覚える。
もう日が高く上り、昼を過ぎている。これから口入屋にいっても仕事の口も無いだろうが、家に帰って伯母の嫌味や母の愚痴を聞く気にもなれない。
なんとなく、港を見下ろす高台の上の神社に足が向いて、賽銭すら無いが参拝して父の無事などを祈ってみた。
港の神社によくある話だが、ここも別れた人にまた会えるなどというご利益を掲げているせいか、絵馬には失せ人探しの願いなどが切々と書いてあるものも目に付く。
なんとなくそういう絵馬をぼんやり眺めていると、なんとなく七歳ぐらいの男の子が神隠しにあって親が探しているというものが、いくつか目に付いた。
偶然とは思うが、妙に男の子の特徴や、消えた状況が似ている。消えた日がだいたい等間隔に並んでいるのも、まあ、気になると言えば、気になる。
最近のものは…小間物屋の小僧だ。こいつの顔と名前は知っている…知っていた、と言うべきか。
しかし、そんなことはどうでもいい。
もう何か月もの間、毎月の三両を集めるためにろくに寝ず、飯も食わずに働いたり、親戚連中に頭を下げて歩いたりして、疲れがたまっていた。
境内の片隅の、景色のいい草地に、腰を下ろして休むことにした。
ここからは、眼下に広がる湾全体と、その真ん中で海中からそびえ立ち、わずかに白い煙を噴いている緑の山が一望できる。
正助は、この城下にあるたいがいの物を嫌っていたが、この景色だけは好きだった。
風が潮の香りを運んでくる。
何となくぼーっと海を眺めているうちに、いつの間にか、少し眠ってしまった。
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