第八章 帰還
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「あの…大久保さん…」
なんか、こんなにお怒りモードなときに、こういう非現実的な質問するのは、気が引けちゃうんだけど…。
「何だ?」
「今年じゃなくて…もっとずっと前に…私と会ったこと、ありますか?」
うー…。何を馬鹿なとか言われたら、どうしよ。
でも。
そんなことには、ならなかった。
大久保さんは、長い大きなため息をついた。
まるで何年も背負い続けていた、大きな大きな重い荷物を下ろしたみたいに。
「ふん、ようやっと気が付いたか。お前の頭には血が巡っていないのかと思うほど、理解が遅いな」
そう言いながら、大久保さんは、晴れやかな笑顔を見せた。
その時、私はやっとわかった。
この人は、私のことを、もうずうっと長いこと、待ち続けていてくれたんだ。
私は、大久保さんがいつも私のことを見ていてくれるのが、とても嬉しかったけど…それは今始まったことじゃなかったんだ。
ずうっとずうっと長いこと、この人は私のことを考えていてくれてたんだ。
そして私に再び出会うために、ふつうの人なら到底できないような、信じられないような努力を重ねてきてくれたんだ。
そう思ったら…私は、大久保さんに抱きついてた。
それは…何というか、小さな男の子に「長いこと一人でよくがんばったね」ってハグしちゃうみたいな、なんかそんな感じの抱きつき方になっちゃって…。
「何だ?今日の小娘はえらく積極的だな」
と、大久保さんは笑って、私の顔を覗き込んだ。
この人、こんなにやさしい目をしてたっけ…。
私は、そう思って…。
そして、私はキスされてた。
やさしく、いとおしむような、長いキス。
「今度会ったときは、仕返ししてやると言ったろう?」
と、大久保さんは言った。
「十年以上待たされたんだ。ただ仕返しするだけでは気がすまん。百倍にして返してやる」
そうして、もう一度、キスされた。
百倍って…それって…。百回キスしたいって…こと?
「覚えてて、くれたんですね」
「当たり前だ。
私はお前のように、三歩進んだら忘れるような便利な脳みそは持ち合わせておらん。
それに、私がやると言ってやらなかったことがあるか?」
「ない…です。でも、そしたら…その後は…」
その続きを聞くのは、ちょっと怖かった。
仕返しの後に…正助君がするって言ったのは…。
「絶対待ってる、約束だと言ったのはどっちだ?
当然、私は言ったことは守る。
お前を、大久保ゆうにしてやる。
今さら、断ろうと言っても許さん」
「ほんとに?」
「疑うのか?…まったく、理解の遅い小娘だ」
と、大久保さんは馬鹿にしたように笑う。
「まだ、私、小娘…なんですか?」
「なんだ、化け女の方がいいか?」
「…もうっ…」
そう怒って見せたけど、私、なんかもう、信じられないくらい幸せだった。
私は大久保さんのことを、ぎゅっと抱きしめた。
ちょっと煙草臭いけど、でも、いい匂い。なんか安心する。
それは、もう二十一世紀には帰らない、そういうことになっちゃうけど。
でも、それでいいんだ。最初っから、運命でそう決まってたんだ。私の本来いるべき場所はここだったんだって、そう思った。
そして…。
私は、ここでこの人を守って生きてゆく。
大久保さんが、私を守ろう、前に導こう、としてくれてるみたいに。
それが、私にとっていちばん幸せなことだから。
そしてそれは、大久保さんにとってもいちばんの幸せだったらいいな。
そう、私は思った。
【Fin】
なんか、こんなにお怒りモードなときに、こういう非現実的な質問するのは、気が引けちゃうんだけど…。
「何だ?」
「今年じゃなくて…もっとずっと前に…私と会ったこと、ありますか?」
うー…。何を馬鹿なとか言われたら、どうしよ。
でも。
そんなことには、ならなかった。
大久保さんは、長い大きなため息をついた。
まるで何年も背負い続けていた、大きな大きな重い荷物を下ろしたみたいに。
「ふん、ようやっと気が付いたか。お前の頭には血が巡っていないのかと思うほど、理解が遅いな」
そう言いながら、大久保さんは、晴れやかな笑顔を見せた。
その時、私はやっとわかった。
この人は、私のことを、もうずうっと長いこと、待ち続けていてくれたんだ。
私は、大久保さんがいつも私のことを見ていてくれるのが、とても嬉しかったけど…それは今始まったことじゃなかったんだ。
ずうっとずうっと長いこと、この人は私のことを考えていてくれてたんだ。
そして私に再び出会うために、ふつうの人なら到底できないような、信じられないような努力を重ねてきてくれたんだ。
そう思ったら…私は、大久保さんに抱きついてた。
それは…何というか、小さな男の子に「長いこと一人でよくがんばったね」ってハグしちゃうみたいな、なんかそんな感じの抱きつき方になっちゃって…。
「何だ?今日の小娘はえらく積極的だな」
と、大久保さんは笑って、私の顔を覗き込んだ。
この人、こんなにやさしい目をしてたっけ…。
私は、そう思って…。
そして、私はキスされてた。
やさしく、いとおしむような、長いキス。
「今度会ったときは、仕返ししてやると言ったろう?」
と、大久保さんは言った。
「十年以上待たされたんだ。ただ仕返しするだけでは気がすまん。百倍にして返してやる」
そうして、もう一度、キスされた。
百倍って…それって…。百回キスしたいって…こと?
「覚えてて、くれたんですね」
「当たり前だ。
私はお前のように、三歩進んだら忘れるような便利な脳みそは持ち合わせておらん。
それに、私がやると言ってやらなかったことがあるか?」
「ない…です。でも、そしたら…その後は…」
その続きを聞くのは、ちょっと怖かった。
仕返しの後に…正助君がするって言ったのは…。
「絶対待ってる、約束だと言ったのはどっちだ?
当然、私は言ったことは守る。
お前を、大久保ゆうにしてやる。
今さら、断ろうと言っても許さん」
「ほんとに?」
「疑うのか?…まったく、理解の遅い小娘だ」
と、大久保さんは馬鹿にしたように笑う。
「まだ、私、小娘…なんですか?」
「なんだ、化け女の方がいいか?」
「…もうっ…」
そう怒って見せたけど、私、なんかもう、信じられないくらい幸せだった。
私は大久保さんのことを、ぎゅっと抱きしめた。
ちょっと煙草臭いけど、でも、いい匂い。なんか安心する。
それは、もう二十一世紀には帰らない、そういうことになっちゃうけど。
でも、それでいいんだ。最初っから、運命でそう決まってたんだ。私の本来いるべき場所はここだったんだって、そう思った。
そして…。
私は、ここでこの人を守って生きてゆく。
大久保さんが、私を守ろう、前に導こう、としてくれてるみたいに。
それが、私にとっていちばん幸せなことだから。
そしてそれは、大久保さんにとってもいちばんの幸せだったらいいな。
そう、私は思った。
【Fin】