第七章 未来
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その二日後の夜のこと。
いわゆるあいまい茶屋などというものが立ち並ぶ、町の中でも特に雰囲気の悪い区画に、呼び出されてきた人影があった。
…なあんて。
ちょいハードボイルドに始めてみました。
だって、男の子たち皆がそんなノリを気取ってんだもん。
私は、物陰に隠れて、見てんですけどね。
呼び出されてきたのは、例の別当。
さすがに風俗業の多いような区画で、袈裟姿はまずいから、どこかの茶人みたいな着物で来ていた。
水路際の、ちょっと死角になった場所に、ちょっと大きな廃屋が一軒ある。
庭が大きくて、密談するにはうってつけの場所。
そこに別当が入っていくと、先に来ていた人間がいる。
正助君だ。
「やっぱり来たな」
月明かりに照らされてると、女の子みたいな顔立ちが、よけい線が細く見える。
「小僧、何の真似だ。客引きでもするつもりか」
「ひとを陰間呼ばわりするんじゃない」
理由はわからないけど、正助君は何やらムカッとした様子で、別当をにらみつけた。
「あんたに送った文だけどさ。面白いものが入ってたろう?坊主なら、一目見て、何だかわかるよな?」
「人の…指の骨だな。それも幼い子どもの。…どこで手に入れた?」
ふふん、と正助君は鼻で笑って、うそぶく。
「あの夜、あんたから逃げる途中で、おいの連れが地面を踏み抜いて、穴に落ちたろう?
あんなふうに、一見なんでもない地面の上を歩くと、突然穴に落ち込むのは…。
ふつうは土葬して半年ばかりたった墓穴だけだ。
そんなものが、なんであんなところにあったんだろうな。
半年ばかり前と言えば、番太郎の孫が消えたころだったが…」
なんか…ハードボイルドというより…サイコスリラーっぽい会話になってきました。
「その骨の残りを、あんたの所属する寺の本山に送ったら、どうなるかな。
寺社奉行に送ってもいいけどさ。さすがに証拠があると、処分は免れないんじゃないか?」
正助君がガマガエルに似ていると言った別当の両目が、ぎょろりと動く。
「…いくら欲しい」
「話が早いな」
「その骨の話は、他に誰にも言ってないんだろうな」
「安心しろ。知っているのは、おいだけだ」
その途端。
別当は正助君に襲い掛かった。
あっ、と言って正助君は逃げようとしたけれど、何しろ病み上がりだ。すぐにふらついて、地面に押し倒されてしまう。
「何するんだ!?殺す気かっ」
「そうだ」
別当は、正助君の首を両手で締め上げようとした。
「馬鹿が。お前しか知らないなら、口をふさぐまでだろうがっ」
と、同時に、あちこちから小石が飛んで来て、別当の顔や手に当たる。
別当は、ぎゃっと言って正助君から手を離した。
「そこまでだっ!」
と、大人の声がした。
黒のぶっさき羽織のお侍さんと、縞の着物をじんじん端折りにした町人。
絵に描いたような与力と岡っ引きコンビ。
別当はあっという間に引き倒されて、縄で縛りあげられてしまった。
「何をするっ。私は別当だ。寺社奉行に…」
「悪いがこの場所は町方の管轄でね。ここで子供を殺しかけたのなら、寺社奉行に口は出させない」
「うっ…」
別当が黙り込むと同時に、誰もいないように見えた夜の庭で、あちこちから一斉に笑い声が響いた。
「ばっかじゃね」
「月並みな脚本すぎてバレると思ったのにさ」
「これであの坊主も終わりだな」
「色ボケてんじゃねえよ」
正助君が立ち上がり、着物についた泥を払った。
「石…おいにも当たったぞ…。けっこう痛かった」
それから、睨みつけている別当に、極上の笑顔で言った。
「あんたに送ったの、あれ、豚の指の骨だ。
坊主は肉食わないから、人の骨しか見たことがないんだな。…似てるだろう?
でも、語るに落ちるってやつだな。
これで、さらわれた子どもが、あの神社の境内に眠っていることは、バレたわけだ」
いわゆるあいまい茶屋などというものが立ち並ぶ、町の中でも特に雰囲気の悪い区画に、呼び出されてきた人影があった。
…なあんて。
ちょいハードボイルドに始めてみました。
だって、男の子たち皆がそんなノリを気取ってんだもん。
私は、物陰に隠れて、見てんですけどね。
呼び出されてきたのは、例の別当。
さすがに風俗業の多いような区画で、袈裟姿はまずいから、どこかの茶人みたいな着物で来ていた。
水路際の、ちょっと死角になった場所に、ちょっと大きな廃屋が一軒ある。
庭が大きくて、密談するにはうってつけの場所。
そこに別当が入っていくと、先に来ていた人間がいる。
正助君だ。
「やっぱり来たな」
月明かりに照らされてると、女の子みたいな顔立ちが、よけい線が細く見える。
「小僧、何の真似だ。客引きでもするつもりか」
「ひとを陰間呼ばわりするんじゃない」
理由はわからないけど、正助君は何やらムカッとした様子で、別当をにらみつけた。
「あんたに送った文だけどさ。面白いものが入ってたろう?坊主なら、一目見て、何だかわかるよな?」
「人の…指の骨だな。それも幼い子どもの。…どこで手に入れた?」
ふふん、と正助君は鼻で笑って、うそぶく。
「あの夜、あんたから逃げる途中で、おいの連れが地面を踏み抜いて、穴に落ちたろう?
あんなふうに、一見なんでもない地面の上を歩くと、突然穴に落ち込むのは…。
ふつうは土葬して半年ばかりたった墓穴だけだ。
そんなものが、なんであんなところにあったんだろうな。
半年ばかり前と言えば、番太郎の孫が消えたころだったが…」
なんか…ハードボイルドというより…サイコスリラーっぽい会話になってきました。
「その骨の残りを、あんたの所属する寺の本山に送ったら、どうなるかな。
寺社奉行に送ってもいいけどさ。さすがに証拠があると、処分は免れないんじゃないか?」
正助君がガマガエルに似ていると言った別当の両目が、ぎょろりと動く。
「…いくら欲しい」
「話が早いな」
「その骨の話は、他に誰にも言ってないんだろうな」
「安心しろ。知っているのは、おいだけだ」
その途端。
別当は正助君に襲い掛かった。
あっ、と言って正助君は逃げようとしたけれど、何しろ病み上がりだ。すぐにふらついて、地面に押し倒されてしまう。
「何するんだ!?殺す気かっ」
「そうだ」
別当は、正助君の首を両手で締め上げようとした。
「馬鹿が。お前しか知らないなら、口をふさぐまでだろうがっ」
と、同時に、あちこちから小石が飛んで来て、別当の顔や手に当たる。
別当は、ぎゃっと言って正助君から手を離した。
「そこまでだっ!」
と、大人の声がした。
黒のぶっさき羽織のお侍さんと、縞の着物をじんじん端折りにした町人。
絵に描いたような与力と岡っ引きコンビ。
別当はあっという間に引き倒されて、縄で縛りあげられてしまった。
「何をするっ。私は別当だ。寺社奉行に…」
「悪いがこの場所は町方の管轄でね。ここで子供を殺しかけたのなら、寺社奉行に口は出させない」
「うっ…」
別当が黙り込むと同時に、誰もいないように見えた夜の庭で、あちこちから一斉に笑い声が響いた。
「ばっかじゃね」
「月並みな脚本すぎてバレると思ったのにさ」
「これであの坊主も終わりだな」
「色ボケてんじゃねえよ」
正助君が立ち上がり、着物についた泥を払った。
「石…おいにも当たったぞ…。けっこう痛かった」
それから、睨みつけている別当に、極上の笑顔で言った。
「あんたに送ったの、あれ、豚の指の骨だ。
坊主は肉食わないから、人の骨しか見たことがないんだな。…似てるだろう?
でも、語るに落ちるってやつだな。
これで、さらわれた子どもが、あの神社の境内に眠っていることは、バレたわけだ」