第五章 小娘、考える
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
おじいちゃんには、そういう子に、無理に気持ちを言わせようとしてはいけないって言われてたんだけど…。
理由までは聞いてなかった。
とにかく、絶対に無理強いしてはダメだ…って話だけを聞いていた。
でも、どうしても気になってしまった。
二日目、正助君が少し元気になって、上体を起こして、座っておしゃべりできるくらいになったので、つい、私は聞いてしまった。
「ねえ、ちょっと変なお願いなんだけど…『つらい、苦しい』って言ってみて」
「何でだよ。別にそんなこと思ってないぞ。ひとを悲劇の主人公気取りのバカにするつもりか」
「いいから。単に声を出してみるって感じで、言ってみてよ」
正助君は、何だこいつという顔をした。
それから、しぶしぶという感じで、
「つらい…」
と言いかけた。
その途端。
正助君の顔がゆがんだ。
目がいっぱいに見開かれて、悲しいとか、つらいとか、そんな感情が一気にあふれ出すような、表情になった。
でもそれは一瞬だった。
正助君は両手で自分の口を押えて、ぎゅっと目をつぶった。
そのまま、動かない。肩だけがガクガク震えている。
私はあわてた。
「ご…ごめんなさいっ!もう言わなくていいから」
でも、遅かったみたいだ。
せっかくすこし血の気のさしてきていた顔が、また、真っ白になっていた。
そのまま、のろのろと横になると、胎児のような格好に丸くなって、ぐったりとした様子で、また目を閉じた。
「ご…ごめんなさい…私が無理に」
「…あんたのせいじゃない…から。…何か、たまたま急に、また貧血がきた…。それだけ…」
やっぱり、正助君には、自分で自分の感情に気づいてないって、自覚はないんだ。
彼は、自分はつらいなんて感じてないと思っている。
ほんとは、つらくてつらくて、体中が悲鳴を上げてるのに。
本人だけがそれに気づいてない。
もし気づいてしまったら、心も体もつらさに押しつぶされて、二度と動けなくなってしまうから。
正助君の心のいちばん深いところで、何かが凍りついちゃってる。
こんな状態でも心や体がどうにか動けるように…、自分の感情に気づかせないようにしちゃってるんだ。
「大丈夫?」
言ってから、やばいと思った。こういう子は、大丈夫じゃないって、言えない。
「ごめん…。話す根性…今…ちょっとない…。一人にして…」
私は、そのまま彼を寝かせておくしかできなかった。
なんか…ものすごく、胸が痛んだ。
私は、安易に人の心の傷をつつく真似をしたことを、思い切り反省した。
そういえば、私、日ごろから、ものを軽く考えすぎるって怒られてたよね。
でも、一方で…何とかしてあげられないのかなって、すごく思った。
おじいちゃんが言ってたのは、とにかく、こういう子を治すには、愛情を注ぐしかないってこと。
あったかい言葉をかけて、明るく接して、無条件にすべてを受け入れてあげることが、いちばん効くって言ってた。
無理に感情を言葉にさせようとすると、心が壊れるけど、愛情をかけ続けていれば、そのうち自分から、ぽろっ、ぽろっと、少しずつ…ほんとに少しずつだけど、気持ちを言葉に出すことができるようになるからって…そう言ってた。
やさしくしてあげるだけで、すぐに普通の子みたいになる子もいれば、何年、何十年もそのまま治らない子もいる。
でも、愛情をかければ、少しずつでもよくなっていくのは、確実だって。
正助君も…やさしくされれば、ちょっとずつ、治っていくのかな?
理由までは聞いてなかった。
とにかく、絶対に無理強いしてはダメだ…って話だけを聞いていた。
でも、どうしても気になってしまった。
二日目、正助君が少し元気になって、上体を起こして、座っておしゃべりできるくらいになったので、つい、私は聞いてしまった。
「ねえ、ちょっと変なお願いなんだけど…『つらい、苦しい』って言ってみて」
「何でだよ。別にそんなこと思ってないぞ。ひとを悲劇の主人公気取りのバカにするつもりか」
「いいから。単に声を出してみるって感じで、言ってみてよ」
正助君は、何だこいつという顔をした。
それから、しぶしぶという感じで、
「つらい…」
と言いかけた。
その途端。
正助君の顔がゆがんだ。
目がいっぱいに見開かれて、悲しいとか、つらいとか、そんな感情が一気にあふれ出すような、表情になった。
でもそれは一瞬だった。
正助君は両手で自分の口を押えて、ぎゅっと目をつぶった。
そのまま、動かない。肩だけがガクガク震えている。
私はあわてた。
「ご…ごめんなさいっ!もう言わなくていいから」
でも、遅かったみたいだ。
せっかくすこし血の気のさしてきていた顔が、また、真っ白になっていた。
そのまま、のろのろと横になると、胎児のような格好に丸くなって、ぐったりとした様子で、また目を閉じた。
「ご…ごめんなさい…私が無理に」
「…あんたのせいじゃない…から。…何か、たまたま急に、また貧血がきた…。それだけ…」
やっぱり、正助君には、自分で自分の感情に気づいてないって、自覚はないんだ。
彼は、自分はつらいなんて感じてないと思っている。
ほんとは、つらくてつらくて、体中が悲鳴を上げてるのに。
本人だけがそれに気づいてない。
もし気づいてしまったら、心も体もつらさに押しつぶされて、二度と動けなくなってしまうから。
正助君の心のいちばん深いところで、何かが凍りついちゃってる。
こんな状態でも心や体がどうにか動けるように…、自分の感情に気づかせないようにしちゃってるんだ。
「大丈夫?」
言ってから、やばいと思った。こういう子は、大丈夫じゃないって、言えない。
「ごめん…。話す根性…今…ちょっとない…。一人にして…」
私は、そのまま彼を寝かせておくしかできなかった。
なんか…ものすごく、胸が痛んだ。
私は、安易に人の心の傷をつつく真似をしたことを、思い切り反省した。
そういえば、私、日ごろから、ものを軽く考えすぎるって怒られてたよね。
でも、一方で…何とかしてあげられないのかなって、すごく思った。
おじいちゃんが言ってたのは、とにかく、こういう子を治すには、愛情を注ぐしかないってこと。
あったかい言葉をかけて、明るく接して、無条件にすべてを受け入れてあげることが、いちばん効くって言ってた。
無理に感情を言葉にさせようとすると、心が壊れるけど、愛情をかけ続けていれば、そのうち自分から、ぽろっ、ぽろっと、少しずつ…ほんとに少しずつだけど、気持ちを言葉に出すことができるようになるからって…そう言ってた。
やさしくしてあげるだけで、すぐに普通の子みたいになる子もいれば、何年、何十年もそのまま治らない子もいる。
でも、愛情をかければ、少しずつでもよくなっていくのは、確実だって。
正助君も…やさしくされれば、ちょっとずつ、治っていくのかな?