第一章 問いかけ
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ぼくはちょっとおかしくなって、くすくす笑いながら言った。
「君がここに来た意味って…もしかしたら、時間旅行とかそういうのとは、関係ないのかもしれないね」
「へ…?」
そういう、ちょっと間の抜けた声を平気で出しちゃうあたりが、無防備っぽくてそそるんだなんてことも、自覚してないよね、君は。
「ちょっと空想じみた考えなんだけれど…君がここへ飛んで来てしまったのは、君みたいな女の子を本当に必要としているやつが、たまたまこの時代にいたからなのかもしれない。
君に会いたい、そばにいて欲しいって気持ちが、あまりにも強くて…あまりにも切実だったもので…その想いの力が何かのきっかけで暴走して、君をここに引っぱって来ちゃったのかもね」
ゆうさんは、ぽかんと口を半分開いて、一生懸命に考えてもわからないって顔をしている。
こういう荒唐無稽な話をしても真面目に考え込んでしまい、いかにも社交辞令で話を合わせてますって感じの、賢しげな相槌を打ったりするようなことがないのは、いかにもゆうさんらしい。
「何かのきっかけって暴走したって…そのしめ縄をいじったらってこと?」
「ああ、そう言えば、そういう話だったね。
しめ縄って、要するに結界だよね…。
何かの力の場を封じ込めておく境界線って意味だけど…そこまで考えるのは、ぼくには難しすぎるや…」
そう言って、ぼくはそのしめ縄を見上げてみた。
別に何ということもない、ふつうの縄だった。
そして…本当に、それは、何の気なしにしたことだったんだけど…。
例えば、近所の子どものために木の枝に引っかかった手まりを取ってやる時と同じぐらい、気軽な気分だったんだけど…。
ぼくはたいして何も考えず、鞘ごと脇差を抜くと、そのしめ縄をつついてみた。
その途端、
「…あっ!…」
ゆうさんが、小さく、悲鳴のようなものを上げた。
と、同時に、彼女の体が白いまぶしい光に包まれた。
そのまま、彼女を中心に、周囲の光景がゆがんだ。
「…え…?」
と、ぼくも声を上げてしまう。
何だ?
あれは…?
ゆうさんの後ろには、まったく別の、奇妙な風景が口を開けていた。
彼女はそこに吸い込まれそうになる。
ぼくは思わず、左手で彼女の手をつかんだ。
「やだっ…助けてっ…!」
彼女は、そう叫ぶと、ぼくの手にすがりついて来た。
ぐいっと彼女の手を引っ張ると同時に、その変な風景はぼくの体も飲み込んだ。
何だ、これ…?
まるで空から見下ろしたかのように、眼下に、大きく町の風景が広がっていた。
でもそれが未来の風景だとしたら…何かの冗談としか、思えない。
まるで巨大な白蟻の群れにでも蝕まれたかのように、のっぺりとした蟻塚のような建物が乱立する京都の町。
京都というより…江戸の両国の見世物小屋街みたいに、派手な色合いの文字や絵や、騒音があふれかえる猥雑な風景。
この、人間の欲望にまみれたような街が、未来の風景なわけ?
言っちゃ悪いけど…醜い。
けど…。
「面白いや、これ…」
この醜い街、今の上品ぶって衰えきった京都より、活気と刺激があって、ぼくは嫌いじゃない。
「君がここに来た意味って…もしかしたら、時間旅行とかそういうのとは、関係ないのかもしれないね」
「へ…?」
そういう、ちょっと間の抜けた声を平気で出しちゃうあたりが、無防備っぽくてそそるんだなんてことも、自覚してないよね、君は。
「ちょっと空想じみた考えなんだけれど…君がここへ飛んで来てしまったのは、君みたいな女の子を本当に必要としているやつが、たまたまこの時代にいたからなのかもしれない。
君に会いたい、そばにいて欲しいって気持ちが、あまりにも強くて…あまりにも切実だったもので…その想いの力が何かのきっかけで暴走して、君をここに引っぱって来ちゃったのかもね」
ゆうさんは、ぽかんと口を半分開いて、一生懸命に考えてもわからないって顔をしている。
こういう荒唐無稽な話をしても真面目に考え込んでしまい、いかにも社交辞令で話を合わせてますって感じの、賢しげな相槌を打ったりするようなことがないのは、いかにもゆうさんらしい。
「何かのきっかけって暴走したって…そのしめ縄をいじったらってこと?」
「ああ、そう言えば、そういう話だったね。
しめ縄って、要するに結界だよね…。
何かの力の場を封じ込めておく境界線って意味だけど…そこまで考えるのは、ぼくには難しすぎるや…」
そう言って、ぼくはそのしめ縄を見上げてみた。
別に何ということもない、ふつうの縄だった。
そして…本当に、それは、何の気なしにしたことだったんだけど…。
例えば、近所の子どものために木の枝に引っかかった手まりを取ってやる時と同じぐらい、気軽な気分だったんだけど…。
ぼくはたいして何も考えず、鞘ごと脇差を抜くと、そのしめ縄をつついてみた。
その途端、
「…あっ!…」
ゆうさんが、小さく、悲鳴のようなものを上げた。
と、同時に、彼女の体が白いまぶしい光に包まれた。
そのまま、彼女を中心に、周囲の光景がゆがんだ。
「…え…?」
と、ぼくも声を上げてしまう。
何だ?
あれは…?
ゆうさんの後ろには、まったく別の、奇妙な風景が口を開けていた。
彼女はそこに吸い込まれそうになる。
ぼくは思わず、左手で彼女の手をつかんだ。
「やだっ…助けてっ…!」
彼女は、そう叫ぶと、ぼくの手にすがりついて来た。
ぐいっと彼女の手を引っ張ると同時に、その変な風景はぼくの体も飲み込んだ。
何だ、これ…?
まるで空から見下ろしたかのように、眼下に、大きく町の風景が広がっていた。
でもそれが未来の風景だとしたら…何かの冗談としか、思えない。
まるで巨大な白蟻の群れにでも蝕まれたかのように、のっぺりとした蟻塚のような建物が乱立する京都の町。
京都というより…江戸の両国の見世物小屋街みたいに、派手な色合いの文字や絵や、騒音があふれかえる猥雑な風景。
この、人間の欲望にまみれたような街が、未来の風景なわけ?
言っちゃ悪いけど…醜い。
けど…。
「面白いや、これ…」
この醜い街、今の上品ぶって衰えきった京都より、活気と刺激があって、ぼくは嫌いじゃない。