第四章 石段
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どうにか、石段を登りきると、正助君は鳥居のところで立ち止まった。
片手で、鳥居にすがるような感じで立ったまま、しばらく動かなかった。
「どうしたの?」
「いや、やっぱり別当の姿が見えないな…と思って。
ほっとしたら、腹が減っているのを思い出して、少しめまいがしてきた」
私は笑った。
なんか言うことが、育ち盛りの男の子だなあ…。
「もしかして、昨日、あの騒ぎで夕ご飯、食べそびれた?」
ちょっと、からかうように言ってみる。
「食べそびれたというか…ここ二日ばかり食べてない」
そう言って、額を鳥居にぶつけるようにして、寄りかかった。
「二日?何も?」
朝日が昇って来て、明るくなり、私は気づいた。
この子…痩せているとは思ってたけど…。
痩せ方が、普通じゃない。
二十一世紀に、私が見てきたような、同じくらいの年の男の子たちの…たぶん半分くらいしか、体重がないんじゃないか。
正助君の着物は、袖丈がずいぶんと足りなくて、そこから覗く腕は、皮膚の下の骨が二本だってことが、見てすぐわかるくらい、痩せている。
「昨日は、妹たちの食べる分を手に入れるのがやっとだったから…。
でも、一昨日は朝飯を食べたから、問題ない」
「問題…あるよ…」
「大丈夫。今までそれで何とかなってたし…」
と言いながら、鳥居に額をつけたまま、動かない。
…というか、たぶん、動けない。
「ねえ。いつもそんな風に、食べ物がないと、自分の分を妹さんたちに全部あげちゃうの?」
「しかたないだろう…他に…どうすれば…」
「でも…」
「ごめん…少し…黙ってて…」
と、正助君は言った。
「話すのにも…体力は要るから…」
そこまで言いかけたんだけど、続かず、途中で言葉が止まる。
喋りかけた口が、そのままビデオの再生を止めた時のような形で、しばらく動かなかった。
そして、そのまま、突然、ふわっと体全体から力が抜けた。
まるで棒が倒れるように、正助君の体は、まっすぐ後ろへ…今登って来た石段の方向へ、倒れて行った。
私は、思わず支えようと両腕を伸ばしたけれど、正助君の体は私を通り抜けた。
あわてて振り返ると、正助君が、そのまま石段を下に向かって転がり落ちて行くのが見えた。
私は悲鳴を上げた。
片手で、鳥居にすがるような感じで立ったまま、しばらく動かなかった。
「どうしたの?」
「いや、やっぱり別当の姿が見えないな…と思って。
ほっとしたら、腹が減っているのを思い出して、少しめまいがしてきた」
私は笑った。
なんか言うことが、育ち盛りの男の子だなあ…。
「もしかして、昨日、あの騒ぎで夕ご飯、食べそびれた?」
ちょっと、からかうように言ってみる。
「食べそびれたというか…ここ二日ばかり食べてない」
そう言って、額を鳥居にぶつけるようにして、寄りかかった。
「二日?何も?」
朝日が昇って来て、明るくなり、私は気づいた。
この子…痩せているとは思ってたけど…。
痩せ方が、普通じゃない。
二十一世紀に、私が見てきたような、同じくらいの年の男の子たちの…たぶん半分くらいしか、体重がないんじゃないか。
正助君の着物は、袖丈がずいぶんと足りなくて、そこから覗く腕は、皮膚の下の骨が二本だってことが、見てすぐわかるくらい、痩せている。
「昨日は、妹たちの食べる分を手に入れるのがやっとだったから…。
でも、一昨日は朝飯を食べたから、問題ない」
「問題…あるよ…」
「大丈夫。今までそれで何とかなってたし…」
と言いながら、鳥居に額をつけたまま、動かない。
…というか、たぶん、動けない。
「ねえ。いつもそんな風に、食べ物がないと、自分の分を妹さんたちに全部あげちゃうの?」
「しかたないだろう…他に…どうすれば…」
「でも…」
「ごめん…少し…黙ってて…」
と、正助君は言った。
「話すのにも…体力は要るから…」
そこまで言いかけたんだけど、続かず、途中で言葉が止まる。
喋りかけた口が、そのままビデオの再生を止めた時のような形で、しばらく動かなかった。
そして、そのまま、突然、ふわっと体全体から力が抜けた。
まるで棒が倒れるように、正助君の体は、まっすぐ後ろへ…今登って来た石段の方向へ、倒れて行った。
私は、思わず支えようと両腕を伸ばしたけれど、正助君の体は私を通り抜けた。
あわてて振り返ると、正助君が、そのまま石段を下に向かって転がり落ちて行くのが見えた。
私は悲鳴を上げた。