第一章 問いかけ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
【新選組 沖田総司】
「沖田さんって、よくこの神社に来るんですね。願かけでもしてるんですか?」
と、あの子はぼくに聞いた。
少し言葉に詰まってしまう。
ふつうの女の子なら、いい加減、気づいてもよさそうなんだけどな。
別に神社に用があるわけじゃないんだ。君が時々来るから、用事を作っては覗きに来ているんだよ、ゆうさん。
「神社と言うより…この周辺って、おいしい菓子屋が多いでしょう?買ったお饅頭なんかを、こっそり食べるのにいいんですよ、ここ」
「お店で食べないんですか」
「それはまあ…男が一人で店で甘いもの食べてると、いろいろ世間体とかがあって、たいへんなんです」
本当は店で食べずに持ち帰るのは、ここで君に会えたら、二人で食べたいから…なんだけど。
でも、それはまだ内緒。
ゆうさんの鈍さ加減や、世間知らずっぷりには、いつも驚かされるけれど…。
だからこそ、ぼくみたいのと話すときも警戒せずに、にこにこしながら「沖田さんっていい人ですね」なんて言うんだろうな。
この京都でふつうに頭の回る娘さん達が仲良くしたがるのは、時々大坂から来る米相場関係の連中みたいに、堅実で金のある男だ。
ぼくらのように、明日は死んでるかもしれない男は、相手にされない。眉をひそめられ、怖がられるだけだ。
それに、ふつうに気の回る女の子なら、気づいてしまう。
…ぼくの体に染みついて、消そうにも消えない、血の匂い。
だいたい、ゆうさん以外の年ごろの娘さんは、京都なんて物騒な町の、しかも大きな木や建物で死角の多い、こんな神社にとことこ一人で出かけて来たりはしないだろう。
だから、ゆうさんじゃなかったら、そもそもぼくと知り合うことだって無かったはずだ。
そこまで考えて、ふとゆうさんの顔を見て気づいた。
今の質問は、単に会話のきっかけを作りたかっただけで、本当の悩みは別にある様子だ。
ちょっと促してみたら、
「私がこの時代に来たのって、何か意味があるんでしょうか」
と、ゆうさんは、真剣な顔でぼくに聞いた。
ゆうさんにしては、ずいぶん深い質問だな。
「なぜ、そんなことを聞くの?」
詳しく聞いてみて…、ああ、またかと苦笑したくなる。
どうやらいつものように彼女の保護者と口げんかしたみたいだ。
そのまま飛び出て来ちゃったんです、とゆうさんは悪びれずに言う。
彼女が未来から来たなんてことには、何の意味もないと言われたと、かわいい口をとがらせて訴える。
「それって…。
つまり、君が未来の人だろうとこの時代の人だろうと関係ない、自分が大事に思っているのは君の性格とか心とかで…他の細かいこと…たとえば君の立場や生まれは、気にしていないと言いたかったんでしょうね」
「えっ…」
毎回そうなんだけど…。
実は内心、なぜぼくが他の男の口説き文句を解説しなきゃならないんだろう…って、葛藤してるんだけどね。
でも、ゆうさんは、解説を聞いても、自分が口説かれたなんてまったく気づかないので、ちょっと拍子抜けしてしまう。
結局、その保護者というやつも、彼女には相当惹かれてるらしいけど、これでは進展しそうにないなと少し安心する。
きっとそいつも、安定した将来には縁がないか、一般人には理解できない夢を追ってる類の人間なんだろう。
だから、彼女の鈍感で妙に明るくて前向きなところとか、常識で人を縛らず直感で人を信じるところとかに、救われたり癒されたりしてるんだろうな。
何しろ今の京都だからなあ。そういう男は、きっと多い。
ぼくの聞いてないところにも、ゆうさんのことが気になってしかたない男は、掃いて捨てるほどいそうな気がする。
やれやれ。
なんて罪作りな娘さんだ。
ゆうさん本人はまったく気づいていないけれど。
「沖田さんって、よくこの神社に来るんですね。願かけでもしてるんですか?」
と、あの子はぼくに聞いた。
少し言葉に詰まってしまう。
ふつうの女の子なら、いい加減、気づいてもよさそうなんだけどな。
別に神社に用があるわけじゃないんだ。君が時々来るから、用事を作っては覗きに来ているんだよ、ゆうさん。
「神社と言うより…この周辺って、おいしい菓子屋が多いでしょう?買ったお饅頭なんかを、こっそり食べるのにいいんですよ、ここ」
「お店で食べないんですか」
「それはまあ…男が一人で店で甘いもの食べてると、いろいろ世間体とかがあって、たいへんなんです」
本当は店で食べずに持ち帰るのは、ここで君に会えたら、二人で食べたいから…なんだけど。
でも、それはまだ内緒。
ゆうさんの鈍さ加減や、世間知らずっぷりには、いつも驚かされるけれど…。
だからこそ、ぼくみたいのと話すときも警戒せずに、にこにこしながら「沖田さんっていい人ですね」なんて言うんだろうな。
この京都でふつうに頭の回る娘さん達が仲良くしたがるのは、時々大坂から来る米相場関係の連中みたいに、堅実で金のある男だ。
ぼくらのように、明日は死んでるかもしれない男は、相手にされない。眉をひそめられ、怖がられるだけだ。
それに、ふつうに気の回る女の子なら、気づいてしまう。
…ぼくの体に染みついて、消そうにも消えない、血の匂い。
だいたい、ゆうさん以外の年ごろの娘さんは、京都なんて物騒な町の、しかも大きな木や建物で死角の多い、こんな神社にとことこ一人で出かけて来たりはしないだろう。
だから、ゆうさんじゃなかったら、そもそもぼくと知り合うことだって無かったはずだ。
そこまで考えて、ふとゆうさんの顔を見て気づいた。
今の質問は、単に会話のきっかけを作りたかっただけで、本当の悩みは別にある様子だ。
ちょっと促してみたら、
「私がこの時代に来たのって、何か意味があるんでしょうか」
と、ゆうさんは、真剣な顔でぼくに聞いた。
ゆうさんにしては、ずいぶん深い質問だな。
「なぜ、そんなことを聞くの?」
詳しく聞いてみて…、ああ、またかと苦笑したくなる。
どうやらいつものように彼女の保護者と口げんかしたみたいだ。
そのまま飛び出て来ちゃったんです、とゆうさんは悪びれずに言う。
彼女が未来から来たなんてことには、何の意味もないと言われたと、かわいい口をとがらせて訴える。
「それって…。
つまり、君が未来の人だろうとこの時代の人だろうと関係ない、自分が大事に思っているのは君の性格とか心とかで…他の細かいこと…たとえば君の立場や生まれは、気にしていないと言いたかったんでしょうね」
「えっ…」
毎回そうなんだけど…。
実は内心、なぜぼくが他の男の口説き文句を解説しなきゃならないんだろう…って、葛藤してるんだけどね。
でも、ゆうさんは、解説を聞いても、自分が口説かれたなんてまったく気づかないので、ちょっと拍子抜けしてしまう。
結局、その保護者というやつも、彼女には相当惹かれてるらしいけど、これでは進展しそうにないなと少し安心する。
きっとそいつも、安定した将来には縁がないか、一般人には理解できない夢を追ってる類の人間なんだろう。
だから、彼女の鈍感で妙に明るくて前向きなところとか、常識で人を縛らず直感で人を信じるところとかに、救われたり癒されたりしてるんだろうな。
何しろ今の京都だからなあ。そういう男は、きっと多い。
ぼくの聞いてないところにも、ゆうさんのことが気になってしかたない男は、掃いて捨てるほどいそうな気がする。
やれやれ。
なんて罪作りな娘さんだ。
ゆうさん本人はまったく気づいていないけれど。