第二章 正助
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正助君は、竜助君をおぶって、すたすたと歩き出した。
弥助君と私はあわてて後を追った。
「正助のおんぶは兄貴と違って痛いな」と竜助君が文句を言った。「あちこち骨が当たってゴツゴツする」
「…竜助がおんぶされて家帰ったら、バレちゃうよ。どうしよう」と弥助君は言った。
…あの、すでにそういう問題ではない気がするんですけど…。
「よ…よくわかんないけど…あの別当?人さらいだったって…ことだよね?」
「そうなのか?」と弥助君。
「正助さらって売り飛ばす気だったのか?」と竜助君。
「いや…狙われてたのはお前らだ。もう、この神社に近づくなよ」
と、正助君が言うと、ちょっと離れて歩いていた弥助君は、ととっ、と正助君に近づいて、その着物の端っこをぎゅっとつかんだ。
そのまま、ひっつくようにして歩き出す。
「それってさ、このまま放っといてもいいの?
ケーサツ…じゃない、えと、岡っ引きの人にとか知らせなくていいの?」
「こいつやっぱ馬鹿じゃね?」
「神社に岡っ引きが手を出せるわけないじゃん」
あいかわらず、チビちゃんたちは手厳しい。
「…てことは、このまま泣き寝入り?」
連続誘拐犯がおとがめなし?
単に、別当だってだけで?
毎度毎度思うけど…どういう時代なのよっ。
「だいたいショースケが奉行所に訴えたって、信用されるわけないじゃん」
「そーそー。罪人の子だもん」
ざ…罪人って…?
「ショースケの親父、今、島流しにあってんだ」と竜助君。
「だから、関わり合いになるなって、家で言われてんだ」と弥助君。
「もともと、川向うの城外から来たよそ者で、家の格が低いから、あんま話すなって言われてたしさ」
「ショースケ、頭よすぎて大人言い負かしちゃうから、町のジイ様連中にえらい嫌われてるし」
「なんか、借金すごいらしくて、時々掛取りに締め上げられてるし」
「剣術弱いくせにケンカっ早いから、仕事の手間賃が話と違うっとか言っちゃ、揉めごと起こして袋叩きにされてるし」
正助君がため息をついた。
「お前ら、何をぺらぺらとひとの事情をくっちゃべってるんだ。いい加減にしろっ!」
そしてまた、あの眼になる。
何かどこかが、ぽっかり穴が開いているような、そんな瞳の表情。
「正助君…」
私は、どうフォローしていいか、全然わかんなくて、それ以上何も言えなかった。
よくわかんないけど…。
なんか正助君の抱えてる事情って、ものすごくとんでもないものらしい。
それは、わかってきた。
なのに、町の大人たちには、助けようとする人もいないみたいだってことも。
なんか…自分が情けない。
ほんと、私って、こういう苦労わかんないから、こういう時に何を言ったらいいか、まるで思いつかなくて。
そのあとは、押し黙ったまま、真夜中の真っ暗な町を歩いた。
しばらくして、ちょっと民家の建て込んでいるあたりに出ると、正助君は言った。
「竜助、勝手口で下したら、あとは弥助に手伝ってもらったら歩けるか?」
「…うん…たぶん…」
「そうか。今日は夜に出歩かせて悪かったな」
二人が小さい子だからだと思うけど、あんなひどいこと言われたのに、正助君は何もなかったみたいな調子で、そんなことを言った。
だけど。
その時、私たちの向かう方向から、提灯の灯りが近づいて来るのが見えた。
灯りに照らされて、真っ黒くて大きな人影が見えた。そして、その横には大きな犬。
「まずい、兄貴だ」と、竜助君が言った。
「吉之助が来ちゃったよ」と弥助君が泣きそうな声を出した。
弥助君と私はあわてて後を追った。
「正助のおんぶは兄貴と違って痛いな」と竜助君が文句を言った。「あちこち骨が当たってゴツゴツする」
「…竜助がおんぶされて家帰ったら、バレちゃうよ。どうしよう」と弥助君は言った。
…あの、すでにそういう問題ではない気がするんですけど…。
「よ…よくわかんないけど…あの別当?人さらいだったって…ことだよね?」
「そうなのか?」と弥助君。
「正助さらって売り飛ばす気だったのか?」と竜助君。
「いや…狙われてたのはお前らだ。もう、この神社に近づくなよ」
と、正助君が言うと、ちょっと離れて歩いていた弥助君は、ととっ、と正助君に近づいて、その着物の端っこをぎゅっとつかんだ。
そのまま、ひっつくようにして歩き出す。
「それってさ、このまま放っといてもいいの?
ケーサツ…じゃない、えと、岡っ引きの人にとか知らせなくていいの?」
「こいつやっぱ馬鹿じゃね?」
「神社に岡っ引きが手を出せるわけないじゃん」
あいかわらず、チビちゃんたちは手厳しい。
「…てことは、このまま泣き寝入り?」
連続誘拐犯がおとがめなし?
単に、別当だってだけで?
毎度毎度思うけど…どういう時代なのよっ。
「だいたいショースケが奉行所に訴えたって、信用されるわけないじゃん」
「そーそー。罪人の子だもん」
ざ…罪人って…?
「ショースケの親父、今、島流しにあってんだ」と竜助君。
「だから、関わり合いになるなって、家で言われてんだ」と弥助君。
「もともと、川向うの城外から来たよそ者で、家の格が低いから、あんま話すなって言われてたしさ」
「ショースケ、頭よすぎて大人言い負かしちゃうから、町のジイ様連中にえらい嫌われてるし」
「なんか、借金すごいらしくて、時々掛取りに締め上げられてるし」
「剣術弱いくせにケンカっ早いから、仕事の手間賃が話と違うっとか言っちゃ、揉めごと起こして袋叩きにされてるし」
正助君がため息をついた。
「お前ら、何をぺらぺらとひとの事情をくっちゃべってるんだ。いい加減にしろっ!」
そしてまた、あの眼になる。
何かどこかが、ぽっかり穴が開いているような、そんな瞳の表情。
「正助君…」
私は、どうフォローしていいか、全然わかんなくて、それ以上何も言えなかった。
よくわかんないけど…。
なんか正助君の抱えてる事情って、ものすごくとんでもないものらしい。
それは、わかってきた。
なのに、町の大人たちには、助けようとする人もいないみたいだってことも。
なんか…自分が情けない。
ほんと、私って、こういう苦労わかんないから、こういう時に何を言ったらいいか、まるで思いつかなくて。
そのあとは、押し黙ったまま、真夜中の真っ暗な町を歩いた。
しばらくして、ちょっと民家の建て込んでいるあたりに出ると、正助君は言った。
「竜助、勝手口で下したら、あとは弥助に手伝ってもらったら歩けるか?」
「…うん…たぶん…」
「そうか。今日は夜に出歩かせて悪かったな」
二人が小さい子だからだと思うけど、あんなひどいこと言われたのに、正助君は何もなかったみたいな調子で、そんなことを言った。
だけど。
その時、私たちの向かう方向から、提灯の灯りが近づいて来るのが見えた。
灯りに照らされて、真っ黒くて大きな人影が見えた。そして、その横には大きな犬。
「まずい、兄貴だ」と、竜助君が言った。
「吉之助が来ちゃったよ」と弥助君が泣きそうな声を出した。