紙風船
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浮浪児に育てられたというお芳ちゃんは、なかなかたいへんな女の子だった。
次の朝、いっしょにご飯を食べてみたら、もうそれはたいへんだった。
ちゃんとお箸を使ったことがないみたいだし、食事中ずっと、お膳の前に座っていることができない。
二本のお箸を逆手に持って、ぶんぶんと振り回すので危なくてしかたがない。
私は一生懸命注意したけど、お芳ちゃんは全然おとなしくならなくて…。
ところが、大久保さんが覗きに来て、
「なんだ、お芳はひとりで座って飯が食えないのか。子どもだな」
と言ったとたん、何だか優等生みたいにきちんと座って、行儀よく食べ始めた。
「お芳、子どもじゃないもん」
「そんなことはないだろう。飯の間に走り回るやつは、すこぶる恰好が悪い」
「かっこわるくないもん」
そう言いながら、お芳ちゃんはものすごく真剣に背筋を伸ばして座って、ごはんを食べる。
うーん…。
なんかすごい鶴の一声効果って感じ。
そう言えば大久保さんも、皆で和気藹々と朝ごはんが食べられない人ではありますね。
お互い、私のわかんないとこで分かり合っちゃってるのかな…。
これは朝ごはんに限らなくて、お習字の稽古でも、墨の付いた筆をぶんぶん振り回すし、読み方やつづり方を習うんでも、教本の師範のひとが説明しているページとは違うところをめくってしまう。すぐに飽きて走り回る。
そのくせ、悔しいことに…。
「ゆうちゃんって、あたしより字が下手だねえ」
などと言う。まあ…私から見てもそう思うんで…しかたないけど…。
習字の時間なのに、お芳ちゃんは絵を描き始めちゃったりする。ところが、それが小さな女の子が描いたとは思えないくらい上手なので、びっくりしてしまった。
その話をしたら…と言うより、お芳ちゃんが自慢げに、自分の書いた猫の絵を持って行ったら、大久保さんは名のある水墨画の師匠にもつけんといかんななどと言い出した。
なんかすでに親バカになってませんか、大久保さん?
それから、お芳ちゃんは、私が朝に素振りをしていたら、剣道にも興味を持ったみたい。
大久保さんはすっごい渋っていたけれど、お芳ちゃんはそれはそれはしつこくねだり続けて、子ども用の竹刀を一本、買ってもらった。
で、ためしに竹刀を振らせてみたら、ものすごく筋がいい。
それに、本当に剣道が気に入ったみたいで、もう放っておくと何時まででも素振りをしている。
付き合ってたらこっちがへとへとになってしまいそうになる。
「まあ、好きなようにやらせておけ」
と大久保さんは言った。
「ああいう子どもは、朝のうちにボロ雑巾になるくらい体力を絞っておいたほうが、日中に暴れんで済む」
そうですか。
そんなことを言いながら、私がへばるのが心配なのか、その後はちょくちょく朝稽古を覗きに来るようになった。
ま、忙しい人なんで、ちょっと覗いて、お芳ちゃんと十分くらいじゃれあったら、すぐ仕事に戻っちゃうんだけど。
でもそう言えば、仕事を終わらせる時間も少し早くなった気はする。
こないだは、あやとりで五重塔とか作ってやってました…。器用な人だ。
まあ、本人に言わせるとやっぱり算術でできるらしいですけど…算術でできるできない以前に、お芳ちゃんを喜ばせたくなけりゃ、そんな面倒な計算しないでしょうに。
なんで素直に、喜ばせたいから頑張ったって言わないんでしょうね、この人は。
あと、大久保さん、藩邸の外の仕事がある時に、お菓子やら女の子の好きそうな雑貨やら、お土産をよく買ってくるようにもなりました。
それにしても…大久保さんってここまで子どもにやさしいとは思いませんでした。
まあ、相変わらず、二人の会話を聞いてると、どっちも上から目線で威張りまくりなんだけどね。
最初からちょっと思ってたけど、この二人、日がたつごとにどんどん似てきます。
昨日は、大久保さんが仕事の合間にちょっと仮眠を取ってたら、いつの間にかお芳ちゃんが大久保さんにくっついてお昼寝してました。
なんか、同じ顔して同じポーズで眠っていたので、つい笑ってしまいました。
ここまで来ちゃうと、もう完全に親子だよねえ…と私は思うけど…。
大久保さんは相変わらず、お芳ちゃんが
「父ちゃんにしてやってもいいよ」
と言うと、
「誰が父ちゃんだ。ふざけるな」
と、拒否してました。
次の朝、いっしょにご飯を食べてみたら、もうそれはたいへんだった。
ちゃんとお箸を使ったことがないみたいだし、食事中ずっと、お膳の前に座っていることができない。
二本のお箸を逆手に持って、ぶんぶんと振り回すので危なくてしかたがない。
私は一生懸命注意したけど、お芳ちゃんは全然おとなしくならなくて…。
ところが、大久保さんが覗きに来て、
「なんだ、お芳はひとりで座って飯が食えないのか。子どもだな」
と言ったとたん、何だか優等生みたいにきちんと座って、行儀よく食べ始めた。
「お芳、子どもじゃないもん」
「そんなことはないだろう。飯の間に走り回るやつは、すこぶる恰好が悪い」
「かっこわるくないもん」
そう言いながら、お芳ちゃんはものすごく真剣に背筋を伸ばして座って、ごはんを食べる。
うーん…。
なんかすごい鶴の一声効果って感じ。
そう言えば大久保さんも、皆で和気藹々と朝ごはんが食べられない人ではありますね。
お互い、私のわかんないとこで分かり合っちゃってるのかな…。
これは朝ごはんに限らなくて、お習字の稽古でも、墨の付いた筆をぶんぶん振り回すし、読み方やつづり方を習うんでも、教本の師範のひとが説明しているページとは違うところをめくってしまう。すぐに飽きて走り回る。
そのくせ、悔しいことに…。
「ゆうちゃんって、あたしより字が下手だねえ」
などと言う。まあ…私から見てもそう思うんで…しかたないけど…。
習字の時間なのに、お芳ちゃんは絵を描き始めちゃったりする。ところが、それが小さな女の子が描いたとは思えないくらい上手なので、びっくりしてしまった。
その話をしたら…と言うより、お芳ちゃんが自慢げに、自分の書いた猫の絵を持って行ったら、大久保さんは名のある水墨画の師匠にもつけんといかんななどと言い出した。
なんかすでに親バカになってませんか、大久保さん?
それから、お芳ちゃんは、私が朝に素振りをしていたら、剣道にも興味を持ったみたい。
大久保さんはすっごい渋っていたけれど、お芳ちゃんはそれはそれはしつこくねだり続けて、子ども用の竹刀を一本、買ってもらった。
で、ためしに竹刀を振らせてみたら、ものすごく筋がいい。
それに、本当に剣道が気に入ったみたいで、もう放っておくと何時まででも素振りをしている。
付き合ってたらこっちがへとへとになってしまいそうになる。
「まあ、好きなようにやらせておけ」
と大久保さんは言った。
「ああいう子どもは、朝のうちにボロ雑巾になるくらい体力を絞っておいたほうが、日中に暴れんで済む」
そうですか。
そんなことを言いながら、私がへばるのが心配なのか、その後はちょくちょく朝稽古を覗きに来るようになった。
ま、忙しい人なんで、ちょっと覗いて、お芳ちゃんと十分くらいじゃれあったら、すぐ仕事に戻っちゃうんだけど。
でもそう言えば、仕事を終わらせる時間も少し早くなった気はする。
こないだは、あやとりで五重塔とか作ってやってました…。器用な人だ。
まあ、本人に言わせるとやっぱり算術でできるらしいですけど…算術でできるできない以前に、お芳ちゃんを喜ばせたくなけりゃ、そんな面倒な計算しないでしょうに。
なんで素直に、喜ばせたいから頑張ったって言わないんでしょうね、この人は。
あと、大久保さん、藩邸の外の仕事がある時に、お菓子やら女の子の好きそうな雑貨やら、お土産をよく買ってくるようにもなりました。
それにしても…大久保さんってここまで子どもにやさしいとは思いませんでした。
まあ、相変わらず、二人の会話を聞いてると、どっちも上から目線で威張りまくりなんだけどね。
最初からちょっと思ってたけど、この二人、日がたつごとにどんどん似てきます。
昨日は、大久保さんが仕事の合間にちょっと仮眠を取ってたら、いつの間にかお芳ちゃんが大久保さんにくっついてお昼寝してました。
なんか、同じ顔して同じポーズで眠っていたので、つい笑ってしまいました。
ここまで来ちゃうと、もう完全に親子だよねえ…と私は思うけど…。
大久保さんは相変わらず、お芳ちゃんが
「父ちゃんにしてやってもいいよ」
と言うと、
「誰が父ちゃんだ。ふざけるな」
と、拒否してました。