紙風船
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半刻ぐらいして、女の子は女中さん達にきれいに身支度してもらって、もう一回大久保さんのところに連れてこられた。
赤い花模様の着物を着せてもらった女の子は、別人みたいに可愛かった。
さっきは泣き出したけど、女の子は大久保さんがとっても気に入ったみたいだった。
「兄んちゃんにはふけてるけど、父ちゃんになら、してやってもいいよ」
と、腰に手を当てて、大久保さんに宣言した。
「ふざけるな、馬鹿者。だいたいその口のきき方は何だ」
…いやその、子ども相手にそんなにムキにならなくても。
「で、チビ、名前は何と言う?」
「お芳はチビじゃないよーだ。教えてあげない」
いや、すでに言ってるし…。
なんか、見ててハラハラするなあ…。大丈夫かな。
大久保さんはああ言ったけど…私はあんまりそういう複雑な事情ってわかんないけど…やっぱ内心は面白くないだろうし…。
なんか見てると…子どもの扱い、あんまり上手そうに見えないし…。
お芳ちゃんはみなしごなんだよね…。きっと、表面は勝気にふるまっているけど…いろいろさびしいことはあるよね、やっぱり。
そんなふうに気をもんで見守っていたんだけど、
「ゆうさん、すみません。お芳ちゃんのお布団なんですけど、どれがいいか見てもらえませんか?」
と、女中頭さんに呼ばれて、私はしばらく部屋を離れた。
なんか、帰って来たら、ケンカしてたりして。
…なんて、思ってたけど…。
私は大久保さんって人をなめてましたね。
帰って来てみると、ふたりの会話は相変わらずどちらも上から目線できついんだけど…、お芳ちゃんはきゃっきゃっと笑ってた。
「お姉ちゃん、見て見て」
と、お芳ちゃんはご機嫌の理由を持ってきて見せてくれた。
吹き口のところに、小さなひまわりの花がついた、折り紙の風船。
部屋にあった半紙で、大久保さんが即興で折ったらしい。
「今度は猫の風船作って」
「なんだ、猫の風船と言うのは」
「だからね。猫がぷうっと、ふくれるの」
「その説明では、わけわからんぞ」
なんて言いながら、ちゃんと、胴体の丸々とふくれたブタ猫の風船を折り上げる。
「すごい…」
「ふん。こんなもの、それなりに算術の知識があれば、子どもでもできる」
いや、できませんって、ふつうは。
よく考えたら、この人、妹が3人もいたんだっけ。そりゃ、小さな女の子をあやすのは慣れてるよね…。
目をきらきらさせて、紙風船をぽんぽんと投げて遊んでいるお芳ちゃんに、私は言った。
「よかったね、お芳ちゃん。大事にしようね」
「いや、子どもは、興味を持ちすぎて壊すくらいでちょうどいい。いくらでも壊せ。また作ってやる」
と、大久保さんは上機嫌で言った。
…そうですか。
何のかんの言って、大久保さんもお芳ちゃんを気に入ったみたいです。
しばらくして、お芳ちゃんは、大久保さんの胡坐をかいた袴の中に潜り込むようにして、すうすうと寝てしまった。
眠りにつくまで、タバコくさいタバコくさいと百回くらい繰り返して、すごい大騒ぎでたいへんだったけど。
猫の紙風船は、もうすでに片耳がちぎれていたけど、それは大事そうに胸に抱えていた。
大久保さんはお芳ちゃんを抱えて布団に寝かせると、
「仕事に戻る。後は頼む」
と、出て行った。
私が初めて来た時と同じで、すごく付き合いのいい人だけど…。
また、今夜は徹夜になっちゃうかも…って、心配になってしまった。
赤い花模様の着物を着せてもらった女の子は、別人みたいに可愛かった。
さっきは泣き出したけど、女の子は大久保さんがとっても気に入ったみたいだった。
「兄んちゃんにはふけてるけど、父ちゃんになら、してやってもいいよ」
と、腰に手を当てて、大久保さんに宣言した。
「ふざけるな、馬鹿者。だいたいその口のきき方は何だ」
…いやその、子ども相手にそんなにムキにならなくても。
「で、チビ、名前は何と言う?」
「お芳はチビじゃないよーだ。教えてあげない」
いや、すでに言ってるし…。
なんか、見ててハラハラするなあ…。大丈夫かな。
大久保さんはああ言ったけど…私はあんまりそういう複雑な事情ってわかんないけど…やっぱ内心は面白くないだろうし…。
なんか見てると…子どもの扱い、あんまり上手そうに見えないし…。
お芳ちゃんはみなしごなんだよね…。きっと、表面は勝気にふるまっているけど…いろいろさびしいことはあるよね、やっぱり。
そんなふうに気をもんで見守っていたんだけど、
「ゆうさん、すみません。お芳ちゃんのお布団なんですけど、どれがいいか見てもらえませんか?」
と、女中頭さんに呼ばれて、私はしばらく部屋を離れた。
なんか、帰って来たら、ケンカしてたりして。
…なんて、思ってたけど…。
私は大久保さんって人をなめてましたね。
帰って来てみると、ふたりの会話は相変わらずどちらも上から目線できついんだけど…、お芳ちゃんはきゃっきゃっと笑ってた。
「お姉ちゃん、見て見て」
と、お芳ちゃんはご機嫌の理由を持ってきて見せてくれた。
吹き口のところに、小さなひまわりの花がついた、折り紙の風船。
部屋にあった半紙で、大久保さんが即興で折ったらしい。
「今度は猫の風船作って」
「なんだ、猫の風船と言うのは」
「だからね。猫がぷうっと、ふくれるの」
「その説明では、わけわからんぞ」
なんて言いながら、ちゃんと、胴体の丸々とふくれたブタ猫の風船を折り上げる。
「すごい…」
「ふん。こんなもの、それなりに算術の知識があれば、子どもでもできる」
いや、できませんって、ふつうは。
よく考えたら、この人、妹が3人もいたんだっけ。そりゃ、小さな女の子をあやすのは慣れてるよね…。
目をきらきらさせて、紙風船をぽんぽんと投げて遊んでいるお芳ちゃんに、私は言った。
「よかったね、お芳ちゃん。大事にしようね」
「いや、子どもは、興味を持ちすぎて壊すくらいでちょうどいい。いくらでも壊せ。また作ってやる」
と、大久保さんは上機嫌で言った。
…そうですか。
何のかんの言って、大久保さんもお芳ちゃんを気に入ったみたいです。
しばらくして、お芳ちゃんは、大久保さんの胡坐をかいた袴の中に潜り込むようにして、すうすうと寝てしまった。
眠りにつくまで、タバコくさいタバコくさいと百回くらい繰り返して、すごい大騒ぎでたいへんだったけど。
猫の紙風船は、もうすでに片耳がちぎれていたけど、それは大事そうに胸に抱えていた。
大久保さんはお芳ちゃんを抱えて布団に寝かせると、
「仕事に戻る。後は頼む」
と、出て行った。
私が初めて来た時と同じで、すごく付き合いのいい人だけど…。
また、今夜は徹夜になっちゃうかも…って、心配になってしまった。