紙風船
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これは、私が薩摩藩邸に住むようになってすぐの話。
幕末に飛ばされて来て、お金も何も持っていなかった私は、何から何まで大久保さんの世話になってしまった。
とってもありがたいけど、なんか申し訳ないなあ…とも思って、なんで私にこんなに親切にしてくれるのか、聞いたことがある。
そうしたら、大久保さんは不思議そうな顔をして、
「なんだ、小娘。お前は自分ひとりが特別に世話になっていると思っていたのか?」
と聞いた。
へ…?
その時、ちょうど女中頭さんも、蚊やりを取り替えに来ていた。
で、それを聞きながら、にこにこと、
「そう言えば、私もうちの宿六が借金こさえて亡くなって、途方に暮れていたところを、大久保さんにこの仕事を世話していただいて…」
と、言った。
「…そんなことまで、こいつに言わんでもいい」
大久保さんが、眉をつり上げる。
でも女中頭さんはそれをスルーして、
「私以外にも、大久保さんに身一つで藩邸に迎えていただいた人はおりますよ。女中のおそのさんや、中間の巳之吉さんや、例繰方の右三郎さんや…」
と、私の知っている人を五、六人ずらずらっと挙げた。
「それから、もっと多いのは、藩邸の外に奉公口を世話していただいた人ですね。今も、毎月ひとりぐらいは、大久保さんを頼って誰かしら上京して来ますし…」
そ…そうだったんだ…。
「あの…でも、みんな何か仕事してますよね」
「お前と違って、何かひとつぐらいは、一人前にできる仕事があるからな」
むっ…。何か腹立つけど、その通りだから反論できない…。
「しかし、まあ、毎月毎月、いきなり藩邸の門口に立って、私を頼って京に来ましたと呼ばわるやつが現れるが、知った顔はほとんどおらん。
私が一歳のころ、三軒隣に住んでいた娘の嫁に行った先の、下男の弟の幼馴染なんてやつが来る」
「それって、単なる他人じゃないですか」
そういうのって、この時代ではふつうなんだろうか…?
それとも、大久保さんが偉くなったから、何かしら頼ろうとしてくる人がいっぱい現れるってことなのかなあ…。
「なんか…大久保さんって、たいへんなんですね…」
「半次郎のところには、私の四倍くらいの人数が来るぞ。あいつは他藩でも顔が売れているからな」
…うーむ…。よくわかんないけど…意外に私って、珍しくない身の上なのかもしんない。
考えてみれば、京都で働きたいなって思って、薩摩から延々と歩いて来たら、たいがい着くころには旅費使い果たしちゃうだろうし、こんなに遠い所じゃ知り合いもいないよね。
お金がなくて知り合いもいなくて、住むところも食べるものもないって身の上で、大久保さんに引き取ってもらう人って、そんなに毎月毎月いるんだ…。
「まあ、坂本君なども初めて薩摩に来たとき、いきなり西郷の家に来て、家人に褌をくれと言って怪しまれたそうだ。
ついでに私の実家にも寄って、着物と刀をかすめ取って行ったぞ。」
「りょ…龍馬さんがですか?」
私は、初日に龍馬さんになんだかとっても親切にしてもらったことを思い出した。
そうか。あれって人に親切にするだけじゃなくて、自分もちゃんと同じくらい返してもらってるんだ。
龍馬さんの周囲って、つきあい濃そうだなあ…。
寺田屋の人たち見てても、そう思うけど。
幕末って、何かいろいろ不便なことも多いけど…助け合いの精神はむちゃくちゃ発達してるってことなのかなあ…。
「まあ、坂本君ぐらい図々しい方が、のちのち大物になるということだ。
小娘もごちゃごちゃ悩む暇があるなら、さっさと身を立てて、他人の世話のできる人間になることを考えろ」
なんか結局、いつものように大久保さんに説教されてしまいました…。
うーむ。
大久保さんにしろ、半次郎さんにしろ、…それから龍馬さんも、もう、むちゃくちゃ大勢の人に頼られているんだなあ。
私も、今はいろいろ世話になるばかりだけど、ちゃんとギブアンドテイクできるように頑張らねば…。それって、すごい先のような気はしないでもないけど。
幕末に飛ばされて来て、お金も何も持っていなかった私は、何から何まで大久保さんの世話になってしまった。
とってもありがたいけど、なんか申し訳ないなあ…とも思って、なんで私にこんなに親切にしてくれるのか、聞いたことがある。
そうしたら、大久保さんは不思議そうな顔をして、
「なんだ、小娘。お前は自分ひとりが特別に世話になっていると思っていたのか?」
と聞いた。
へ…?
その時、ちょうど女中頭さんも、蚊やりを取り替えに来ていた。
で、それを聞きながら、にこにこと、
「そう言えば、私もうちの宿六が借金こさえて亡くなって、途方に暮れていたところを、大久保さんにこの仕事を世話していただいて…」
と、言った。
「…そんなことまで、こいつに言わんでもいい」
大久保さんが、眉をつり上げる。
でも女中頭さんはそれをスルーして、
「私以外にも、大久保さんに身一つで藩邸に迎えていただいた人はおりますよ。女中のおそのさんや、中間の巳之吉さんや、例繰方の右三郎さんや…」
と、私の知っている人を五、六人ずらずらっと挙げた。
「それから、もっと多いのは、藩邸の外に奉公口を世話していただいた人ですね。今も、毎月ひとりぐらいは、大久保さんを頼って誰かしら上京して来ますし…」
そ…そうだったんだ…。
「あの…でも、みんな何か仕事してますよね」
「お前と違って、何かひとつぐらいは、一人前にできる仕事があるからな」
むっ…。何か腹立つけど、その通りだから反論できない…。
「しかし、まあ、毎月毎月、いきなり藩邸の門口に立って、私を頼って京に来ましたと呼ばわるやつが現れるが、知った顔はほとんどおらん。
私が一歳のころ、三軒隣に住んでいた娘の嫁に行った先の、下男の弟の幼馴染なんてやつが来る」
「それって、単なる他人じゃないですか」
そういうのって、この時代ではふつうなんだろうか…?
それとも、大久保さんが偉くなったから、何かしら頼ろうとしてくる人がいっぱい現れるってことなのかなあ…。
「なんか…大久保さんって、たいへんなんですね…」
「半次郎のところには、私の四倍くらいの人数が来るぞ。あいつは他藩でも顔が売れているからな」
…うーむ…。よくわかんないけど…意外に私って、珍しくない身の上なのかもしんない。
考えてみれば、京都で働きたいなって思って、薩摩から延々と歩いて来たら、たいがい着くころには旅費使い果たしちゃうだろうし、こんなに遠い所じゃ知り合いもいないよね。
お金がなくて知り合いもいなくて、住むところも食べるものもないって身の上で、大久保さんに引き取ってもらう人って、そんなに毎月毎月いるんだ…。
「まあ、坂本君なども初めて薩摩に来たとき、いきなり西郷の家に来て、家人に褌をくれと言って怪しまれたそうだ。
ついでに私の実家にも寄って、着物と刀をかすめ取って行ったぞ。」
「りょ…龍馬さんがですか?」
私は、初日に龍馬さんになんだかとっても親切にしてもらったことを思い出した。
そうか。あれって人に親切にするだけじゃなくて、自分もちゃんと同じくらい返してもらってるんだ。
龍馬さんの周囲って、つきあい濃そうだなあ…。
寺田屋の人たち見てても、そう思うけど。
幕末って、何かいろいろ不便なことも多いけど…助け合いの精神はむちゃくちゃ発達してるってことなのかなあ…。
「まあ、坂本君ぐらい図々しい方が、のちのち大物になるということだ。
小娘もごちゃごちゃ悩む暇があるなら、さっさと身を立てて、他人の世話のできる人間になることを考えろ」
なんか結局、いつものように大久保さんに説教されてしまいました…。
うーむ。
大久保さんにしろ、半次郎さんにしろ、…それから龍馬さんも、もう、むちゃくちゃ大勢の人に頼られているんだなあ。
私も、今はいろいろ世話になるばかりだけど、ちゃんとギブアンドテイクできるように頑張らねば…。それって、すごい先のような気はしないでもないけど。
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