その一 幕末初日
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なんか、大久保さんって…読めないなあ…。
行動だけ見てると、ふつうの人じゃここまで気を使ってくれないよってくらい…私のこと考えてくれてるようにも見えるんだけど。
言葉だけ聞いてると、この人くらい嫌味な人はいないよって感じだし。
どっちにしても、極端。
「あれ…」
「今度は何だっ」
いや、そんなに不機嫌な声で返事しなくても。
「あの…さっきから、後ろを、変な人たちがついてきてませんか?」
大久保さんは、なんか、むちゃくちゃ嫌そうな顔をして、ちっ、と舌打ちした。
「のほほんとした間抜け面をしているくせに…そんなことに気づくんじゃない」
「へ?」
気づくなって言われても…気づいちゃったもん。
絵にかいたような浪人者5人が、私たちの後をつけていた。
なんか、黒っぽい着物で、ぼさぼさの髪を結ってるから、服装とかは龍馬さんに似てんだけどさ。
雰囲気はぜんぜん違ってて、ものすごーく狂暴そう。
なんつーか、野犬の群れみたいな雰囲気。
「窓から顔を出すんじゃない。いかにも気づきましたというそぶりをしてどうする」
と、大久保さんが言った。
「す…すみません。でも…あの…」
「何だ?」
「刀持った人、5人ですよね。こっちは4人だけど…刀持ってるの大久保さんしかいないし…。
大丈夫なんですか?」
ふふん、と大久保さんが笑った。
なんだろ。すっごい余裕。
もしかして…この人、むちゃくちゃ強かったりすんのかな?
いや…そうは見えないけど…。
「小娘。異国の格好をしていると危ないと、坂本君に言われたろう」
「言われましたけど…」
いきなり、何でその話を蒸し返すのかな。
「あいつらは、攘夷を口実に因縁をつけ、人を襲っては金を奪う連中だ。
お前の格好を見た時から、どうせ、ああいう類の連中に目をつけられかねんと思っていた。
手の者に探らせたら、長州藩邸正門近くを食い詰め者の浪士たちがうろついとるのを見たと言っていたしな」
「え…」
「言ったろう。
お前のその異国の格好のまま、薩摩藩邸に入るのを見られたくはなかった。
お前に、ちんたら長い道のりを歩かせていれば、町をたむろしている攘夷派の不逞浪士どもの興味を引いたに決まっとる。
まるで金魚の糞のように、浪士どもが幾人も、藩邸までお前を尾行してくることになっていたろうな。
だから、駕籠で姿を隠すことにした。
だだ…問題は、長州藩邸に入るまでに、すでにお前に目をつけてしまった浪人どもをどうするかだ。
人気の少ない場所まで来れば、どうせ襲ってくるだろうとは、予想していた」
大久保さんは、いかにも面倒くさそうに、そう説明した。
「あの…。大久保さん…」
「何だ」
「説明はわかりましたけど…話してるうちに、なんかあの浪人たち、どんどん近づいて来てんですけど」
浪人たち、近づいてきたら、皆けっこう大男です。
大久保さんも背は高いけどやせてるから…、勝てるって思われたっぽくて、浪人たち、にやにやしながら間合いを詰めて来てんですけど。
いちばん大きい浪人が、こちらを威嚇するように、首と肩を振った。
なんかやっぱ、強そうです。
なんで、大久保さん、平気そうな顔、してんだろ。
そう思ってたら、大久保さんは、右手を軽く上げて、ぱちんと指を鳴らした。
「え?」
その途端、5人の浪人たちの後ろに、一斉に人影が立つ。
「ぎゃっ!」
それはほんとに一瞬だった。
小さなのぞき窓からだと、何が起こったのかよくわかんなかったけど…。
えっ、と思った次の瞬間には、浪人5人の姿は、道端の物陰へ消えていた。
「な…何だったんですか?今の?」
「気にせんでいい」
「気にしますっ」
大久保さんは、じろりと横目で私を見た。どうしていちいち不機嫌なんでしょう、この人。
「だから、手の者を放っておいたと言ったろう。
あいつらが襲ってくるのはわかっていた。だからこちらも、迎え討つ準備ぐらいはしていた。
当然だろうが。
まったく…救いがたいほど理解が遅いな。なめくじの方が、よっぽど速いぞ」
なっ…なめくじ…。
ちらっとでも…もしかして、この人、かっこいいかもって思った私が馬鹿でした。
「あ…あの人たち…どうなっちゃったんですか?」
大久保さんはこっちを見て、なんだかもう、ものすごーく意地悪な顔をした。
「聞かん方がいい。今晩、うなされずに眠りたいならな」
ええーっ。
こ…この人、やっぱ怖いかもしんない。
行動だけ見てると、ふつうの人じゃここまで気を使ってくれないよってくらい…私のこと考えてくれてるようにも見えるんだけど。
言葉だけ聞いてると、この人くらい嫌味な人はいないよって感じだし。
どっちにしても、極端。
「あれ…」
「今度は何だっ」
いや、そんなに不機嫌な声で返事しなくても。
「あの…さっきから、後ろを、変な人たちがついてきてませんか?」
大久保さんは、なんか、むちゃくちゃ嫌そうな顔をして、ちっ、と舌打ちした。
「のほほんとした間抜け面をしているくせに…そんなことに気づくんじゃない」
「へ?」
気づくなって言われても…気づいちゃったもん。
絵にかいたような浪人者5人が、私たちの後をつけていた。
なんか、黒っぽい着物で、ぼさぼさの髪を結ってるから、服装とかは龍馬さんに似てんだけどさ。
雰囲気はぜんぜん違ってて、ものすごーく狂暴そう。
なんつーか、野犬の群れみたいな雰囲気。
「窓から顔を出すんじゃない。いかにも気づきましたというそぶりをしてどうする」
と、大久保さんが言った。
「す…すみません。でも…あの…」
「何だ?」
「刀持った人、5人ですよね。こっちは4人だけど…刀持ってるの大久保さんしかいないし…。
大丈夫なんですか?」
ふふん、と大久保さんが笑った。
なんだろ。すっごい余裕。
もしかして…この人、むちゃくちゃ強かったりすんのかな?
いや…そうは見えないけど…。
「小娘。異国の格好をしていると危ないと、坂本君に言われたろう」
「言われましたけど…」
いきなり、何でその話を蒸し返すのかな。
「あいつらは、攘夷を口実に因縁をつけ、人を襲っては金を奪う連中だ。
お前の格好を見た時から、どうせ、ああいう類の連中に目をつけられかねんと思っていた。
手の者に探らせたら、長州藩邸正門近くを食い詰め者の浪士たちがうろついとるのを見たと言っていたしな」
「え…」
「言ったろう。
お前のその異国の格好のまま、薩摩藩邸に入るのを見られたくはなかった。
お前に、ちんたら長い道のりを歩かせていれば、町をたむろしている攘夷派の不逞浪士どもの興味を引いたに決まっとる。
まるで金魚の糞のように、浪士どもが幾人も、藩邸までお前を尾行してくることになっていたろうな。
だから、駕籠で姿を隠すことにした。
だだ…問題は、長州藩邸に入るまでに、すでにお前に目をつけてしまった浪人どもをどうするかだ。
人気の少ない場所まで来れば、どうせ襲ってくるだろうとは、予想していた」
大久保さんは、いかにも面倒くさそうに、そう説明した。
「あの…。大久保さん…」
「何だ」
「説明はわかりましたけど…話してるうちに、なんかあの浪人たち、どんどん近づいて来てんですけど」
浪人たち、近づいてきたら、皆けっこう大男です。
大久保さんも背は高いけどやせてるから…、勝てるって思われたっぽくて、浪人たち、にやにやしながら間合いを詰めて来てんですけど。
いちばん大きい浪人が、こちらを威嚇するように、首と肩を振った。
なんかやっぱ、強そうです。
なんで、大久保さん、平気そうな顔、してんだろ。
そう思ってたら、大久保さんは、右手を軽く上げて、ぱちんと指を鳴らした。
「え?」
その途端、5人の浪人たちの後ろに、一斉に人影が立つ。
「ぎゃっ!」
それはほんとに一瞬だった。
小さなのぞき窓からだと、何が起こったのかよくわかんなかったけど…。
えっ、と思った次の瞬間には、浪人5人の姿は、道端の物陰へ消えていた。
「な…何だったんですか?今の?」
「気にせんでいい」
「気にしますっ」
大久保さんは、じろりと横目で私を見た。どうしていちいち不機嫌なんでしょう、この人。
「だから、手の者を放っておいたと言ったろう。
あいつらが襲ってくるのはわかっていた。だからこちらも、迎え討つ準備ぐらいはしていた。
当然だろうが。
まったく…救いがたいほど理解が遅いな。なめくじの方が、よっぽど速いぞ」
なっ…なめくじ…。
ちらっとでも…もしかして、この人、かっこいいかもって思った私が馬鹿でした。
「あ…あの人たち…どうなっちゃったんですか?」
大久保さんはこっちを見て、なんだかもう、ものすごーく意地悪な顔をした。
「聞かん方がいい。今晩、うなされずに眠りたいならな」
ええーっ。
こ…この人、やっぱ怖いかもしんない。