その一 幕末初日
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私がそんなことを考えていたら。
「今日は世話になった。…行くぞ」
と、大久保さんは一方的に言って、くるっと後ろを向くと、私の方を見もせずに正門から出て行ってしまった。
私はあせった。
ま…まずい。
大久保さん、先に歩き出しちゃった。
私は急いで駕籠に乗り込んだ。
すると、ぐいっと駕籠が持ち上げられて、動き出した。
「きゃっ」
思った以上に揺れて、私は、真ん中から下がっている紐にしがみついた。
覗き窓があるから、上げてみると、大久保さんが、何も言わずにずんずん前に歩いていく姿が見える。
って…あれ…そう言えば…大久保さんは駕籠じゃなくて歩きなんだ。
なんでだろ。
駕籠は大きな通りに出て、少し道がよくなったのか、揺れが少し弱くなった。
駕籠かきの人は、大久保さんの左側にぴったり付くように、駕籠を進める。
時代劇とかだと駕籠って走って運ぶけど、違うんだな。
なんか、ゆっくり歩いてくれるから、外がよく見える。
やっぱ…時代劇のセットじゃないよね…。
だって、こんなにたくさん、いかにも本物みたいな建物作ったら、何億円とか、かかるよね…。
私が夢中になって外を見ていたら、駕籠を運んでいる人…えと、駕籠かきさんだっけ…が言った。
「すいまへん。覗き窓の方に体を寄せられると、かしいで揺れるんで、まっすぐ乗っていただけると助かりやす」
「あっ、ごめんなさい…」
すると、大久保さんの唇が、なんだか小馬鹿にしたようにゆがんだ。
なんか…かちんとくる表情だなあ。
「大久保さん、今、こいつ馬鹿だなとか思いませんでしたか?」
「そういうことだけは勘がいいな」
むっ…。
ふつう、聞かれたら、馬鹿と思ってても違うとか言いませんか?
でも、駕籠を呼んでくれたことは、ちゃんと感謝しないといけないよね。
「えと、あの…ありがとうございました。
足、疲れていたんで、駕籠を呼んでいただいて助かりました」
「ふん。お前のような奇天烈な格好の小娘が、薩摩藩邸に出入りしているのを見られたくなかっただけだ。
駕籠なら目隠しになって、気づかれないからな」
奇天烈って…珍妙よりさらに一段階、下に落ちた気がする。
なんでこの人って、いちいち嫌味なんだろな。
「大久保さん、自分の駕籠は呼ばなかったんですか?」
「お前と違って足弱ではないからな。必要ない」
うっく…確かに、みんな、歩くの速いし、元気なんだよなあ…。
「どうせ、駕籠を見るのも乗るのも初めてなんだろう」
「そうですけど…」
「中間どもは駕籠を担ぐと走りたがるからな。
さっきのように片方に寄って乗っていると転げ落ちるぞ。その前に、お前のようなおしゃべりは、舌を噛むかもしれん」
「えっ、駕籠って、そんな怖い乗り物だったんだ…」
あれ…それって、私を心配して、駕籠が速度を出し過ぎないように、そばを歩いてくれてるってこと?
「今日は世話になった。…行くぞ」
と、大久保さんは一方的に言って、くるっと後ろを向くと、私の方を見もせずに正門から出て行ってしまった。
私はあせった。
ま…まずい。
大久保さん、先に歩き出しちゃった。
私は急いで駕籠に乗り込んだ。
すると、ぐいっと駕籠が持ち上げられて、動き出した。
「きゃっ」
思った以上に揺れて、私は、真ん中から下がっている紐にしがみついた。
覗き窓があるから、上げてみると、大久保さんが、何も言わずにずんずん前に歩いていく姿が見える。
って…あれ…そう言えば…大久保さんは駕籠じゃなくて歩きなんだ。
なんでだろ。
駕籠は大きな通りに出て、少し道がよくなったのか、揺れが少し弱くなった。
駕籠かきの人は、大久保さんの左側にぴったり付くように、駕籠を進める。
時代劇とかだと駕籠って走って運ぶけど、違うんだな。
なんか、ゆっくり歩いてくれるから、外がよく見える。
やっぱ…時代劇のセットじゃないよね…。
だって、こんなにたくさん、いかにも本物みたいな建物作ったら、何億円とか、かかるよね…。
私が夢中になって外を見ていたら、駕籠を運んでいる人…えと、駕籠かきさんだっけ…が言った。
「すいまへん。覗き窓の方に体を寄せられると、かしいで揺れるんで、まっすぐ乗っていただけると助かりやす」
「あっ、ごめんなさい…」
すると、大久保さんの唇が、なんだか小馬鹿にしたようにゆがんだ。
なんか…かちんとくる表情だなあ。
「大久保さん、今、こいつ馬鹿だなとか思いませんでしたか?」
「そういうことだけは勘がいいな」
むっ…。
ふつう、聞かれたら、馬鹿と思ってても違うとか言いませんか?
でも、駕籠を呼んでくれたことは、ちゃんと感謝しないといけないよね。
「えと、あの…ありがとうございました。
足、疲れていたんで、駕籠を呼んでいただいて助かりました」
「ふん。お前のような奇天烈な格好の小娘が、薩摩藩邸に出入りしているのを見られたくなかっただけだ。
駕籠なら目隠しになって、気づかれないからな」
奇天烈って…珍妙よりさらに一段階、下に落ちた気がする。
なんでこの人って、いちいち嫌味なんだろな。
「大久保さん、自分の駕籠は呼ばなかったんですか?」
「お前と違って足弱ではないからな。必要ない」
うっく…確かに、みんな、歩くの速いし、元気なんだよなあ…。
「どうせ、駕籠を見るのも乗るのも初めてなんだろう」
「そうですけど…」
「中間どもは駕籠を担ぐと走りたがるからな。
さっきのように片方に寄って乗っていると転げ落ちるぞ。その前に、お前のようなおしゃべりは、舌を噛むかもしれん」
「えっ、駕籠って、そんな怖い乗り物だったんだ…」
あれ…それって、私を心配して、駕籠が速度を出し過ぎないように、そばを歩いてくれてるってこと?