その五 一週間後
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「まあ、そういうことだ」
と大久保さんは続けた。
「平藩士どもに、正しい英語を教えろなどと言っているわけではない。
だいたいだな、お前のような日本語のあやしい小娘は、英語が多少わかったとしても、それを正しい日本語に直せるとは思えん。
候文の読み書きもできんやつに教わった英語など、藩の仕事には使えん。
そういうことではない。
京都に来る藩士どもはな、貿易ではなく、政治をしたい連中だ。
特に年若の血気にはやった連中には、薩摩でも辺鄙な田舎から出てきたやつもいてな。いまだに藩が開国派に転じたいきさつやら、理屈やらを、全く理解しとらんやつもいる。
そういうやつらには、藩の方針をひっくり返して攘夷がやりたいなどと、いまだに考えているバカがいてな。
正直、手を焼いている」
はあ…。
いや、そういう政治の話を言われても、わかんないんですけど。
「お前の役割はだな。そういう浅薄で安易な教条担ぎどもに、異人も日本人と同じように生活やら家族やらがあって、日々楽しく暮らしたいと思っていることを、伝えてやることだ」
「え…?」
「ま、平たく言うと、さっきのように、心底うれしそうに、リンゴやら他の食べ物やら、異国の楽しい生活の話をすればいい」
まあ…そのくらいなら。
「こういう、のほほんとしたお気楽な話をさせるなら、お前ほど適任なやつはおらん。
よく知らん人間のことを『いい人達のことを悪く言うな』などと平気でほざけるような脳天気であればあるほど、向いてる仕事だからな」
ほめられているのだろうか…それ?
なんか自信なくなってきたぞ。
ふん、と大久保さんはまた、あきれたような顔で笑うと、ちょっと真剣な顔をした。
「…いいか、二度と、くだらん理由で薩摩と外国が斬り合ったり戦をしなくてすむように、きっちり平藩士どもに教え込め。
小娘にしか、できない仕事があると言ったろう?
これがそれだ。
これほど重要な仕事は、そうそう無いぞ。
文句あるか?」
「あ…な、ないです」
つまり…私の仕事って、ただの英語を教える仕事じゃないんだ。
平和を…外国との戦争はダメだってことを…教えろってこと?
と大久保さんは続けた。
「平藩士どもに、正しい英語を教えろなどと言っているわけではない。
だいたいだな、お前のような日本語のあやしい小娘は、英語が多少わかったとしても、それを正しい日本語に直せるとは思えん。
候文の読み書きもできんやつに教わった英語など、藩の仕事には使えん。
そういうことではない。
京都に来る藩士どもはな、貿易ではなく、政治をしたい連中だ。
特に年若の血気にはやった連中には、薩摩でも辺鄙な田舎から出てきたやつもいてな。いまだに藩が開国派に転じたいきさつやら、理屈やらを、全く理解しとらんやつもいる。
そういうやつらには、藩の方針をひっくり返して攘夷がやりたいなどと、いまだに考えているバカがいてな。
正直、手を焼いている」
はあ…。
いや、そういう政治の話を言われても、わかんないんですけど。
「お前の役割はだな。そういう浅薄で安易な教条担ぎどもに、異人も日本人と同じように生活やら家族やらがあって、日々楽しく暮らしたいと思っていることを、伝えてやることだ」
「え…?」
「ま、平たく言うと、さっきのように、心底うれしそうに、リンゴやら他の食べ物やら、異国の楽しい生活の話をすればいい」
まあ…そのくらいなら。
「こういう、のほほんとしたお気楽な話をさせるなら、お前ほど適任なやつはおらん。
よく知らん人間のことを『いい人達のことを悪く言うな』などと平気でほざけるような脳天気であればあるほど、向いてる仕事だからな」
ほめられているのだろうか…それ?
なんか自信なくなってきたぞ。
ふん、と大久保さんはまた、あきれたような顔で笑うと、ちょっと真剣な顔をした。
「…いいか、二度と、くだらん理由で薩摩と外国が斬り合ったり戦をしなくてすむように、きっちり平藩士どもに教え込め。
小娘にしか、できない仕事があると言ったろう?
これがそれだ。
これほど重要な仕事は、そうそう無いぞ。
文句あるか?」
「あ…な、ないです」
つまり…私の仕事って、ただの英語を教える仕事じゃないんだ。
平和を…外国との戦争はダメだってことを…教えろってこと?