「あの…実は今朝ですね…」
と、私は、今朝大久保さんの部屋であったことを、二人に説明した。

棚の上にあった地球儀が、大久保さんの頭を直撃したところまで話すと…。

「武士なら眠ってても避けろ。修行が足りないぞ」
と以蔵が冷たくツッコミを入れた。

「無茶を言うな。お前のような剣術バカと一緒にするな」
「…何だと!」

よくわかんないけど…どうやら大久保さんは、剣術が苦手なのを少しだけ気にしているらしい。
龍馬さんは、二人の会話を無視して、マイペースに話を元に戻す。

「…ちゅうか、さっきの話とどう繋がるんじゃ?」

ふん、と大久保さんが私を馬鹿にしたように見た。

「小娘には、余計な無駄話をせずに、要点を話す特訓もさせねばならんようだな…」

う…なんか墓穴掘った気がする。

「たかだか転んだ程度で、胸やら太ももやらを気前よくぽろぽろと着物から出して見せられては、見っともなくて外を歩かせられるか。
それ突けやれ突けの大道芸や裸弁財天の御開帳でもあるまいし、道を歩きながらおひねりでも投げられるような真似をされては、外聞が悪すぎる」

えーと…大久保さんの話だって、なんかよくわかんない上に回りくどいじゃないですか。

ま、要するに…。
大久保さんとしては、私が外を歩いているときに、今朝みたいなことになったら、薩摩藩では若い女性に身だしなみをちゃんと教えているのかって、ご近所の評判が落ちるから迷惑だってことらしいです。

なんで、着崩れしない歩き方を身に着けないうちは、外出禁止だってことになっちゃって、特訓してたわけですが。
それって、女の子の場合、常に両膝をこすり合わせるように離さないのがコツなんだそうで…。

膝が離れないように、ひもで縛って畳のへりに沿ってまっすぐ歩く訓練ってのを、ここ20分ばかし、やらされてたわけです、はい。