それから一週間後。

あれ…朝かな、と目を覚ましたら、ずいぶん早い時間だった。

夜が明けたばかりっぽい?

なんか最近、やたら早い時間に目覚める。
二十一世紀と違って、日が暮れたらやることないし、部屋が明るくないからすぐ寝ちゃうもんね。
早く目が覚めて、当然か。

私は起き出して、枕元にある着物に着替えた。
毎日女中さんたちに特訓されたおかげで、ようやく、一人で着れるようになったんだよね。

ちょっと嬉しい。

私は、三十分くらい着物と格闘して着付けをした後、鏡を見ながら、ちょっと得意がってたんだけど…。
そのうち、ひとりで鏡を見てるだけでは、その努力がもったいないような気がしてきた。

女中さん達が来るのを待って、見てもらってもいいけど…。
正直、一時間か二時間後にも、ちゃんとビシッと決まっているかどうか、自信ない。
今、誰かに見てもらいたいんだけどな…。

そう、考えて、ふと思いついた。
大久保さんならきっと、もう起きてるよね。

ふつうなら、こんな朝早くに訪ねて行くのって、失礼かもしんないけど…。
何しろ夜明けから働いてるお方らしいし、大丈夫でしょ。

私は、着物がちゃんと着れて浮かれてたんで、勝手に、都合よく解釈してしまった。

大久保さんの部屋の場所はわかってた。
お茶を持ってけって言われて、ちょっとだけ行ったことがある。お茶置いてすぐ帰ったけど。
なんか、えらく殺風景な部屋だった印象がある。
日当たりも、それほどよくはなかった。

「小娘の部屋のように能天気に日が射しては、書類が焼けて困る」
と、大久保さんは言ってた。
部屋まで、能天気とか、何でもいちいち、バカみたいに言わないでほしいよね。

とにかく私は、大久保さんの部屋の前まで来て、声をかけてみた。

返事がない。
あれ?

私はそおっと、襖を開けて覗いてみた。

「わお…」

なんか、改めて見ると、すごい部屋。
朝の光のせいだったかもしれないけど。