その四 薩摩藩邸四日目
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
一刻後。
【新選組】土方歳三
総司のやつ、また薬も飲まねえでどこぞをほっつき歩いていると思って探してみれば…。
いた。
鴨川にかかる橋の上で、欄干にもたれて、のんびり川面なんか眺めていやがる。
川っ風に吹かれたら、胸に悪いとあれだけ釘を刺しておいたのに、まったく聞きゃしねえ。
また今晩あたり、きうりの幽的(幽霊)もどきの青い顔で屯所をうろついて、新米隊士をおびえさせでもしてみやがれ。今度こそふん縛って外出禁止にしてやる。
「総司」
「ああ、土方さん…じゃなかったですね。副長」
と、欄干にもたれたまま、こっちを見て、にっこり笑う。
まったく。
俺がこれだけ不機嫌なら、たいがいのやつは縮み上がるもんだが。
総司はさっきから、右手で何やら派手派手しく光る根付のようなものをいじくって、妙に楽しげな様子でいる。
俺から見れば、また随分と安っぽい意匠の、猫だか鬼だかわからんような細工だが、総司はそれをえらく気に入っていた。
「なんだ、まだその根付の落とし主は見つからねえのか。大事なものかもしれねえって、随分と熱心に探していたようだが」
「見つかりましたよ。やはり大事なものでした。これがないと故郷(くに)に帰れないんだそうです」
そう言いながら、何がうれしいのか知らないが、総司はガキのような無邪気な顔で笑って見せた。
「だからね。返すの止めちゃいました」
「おい」
「だって、その方が面白いじゃないですか。あの子が京からいなくなったら、つまらないもの」
<2011/7/24>
【新選組】土方歳三
総司のやつ、また薬も飲まねえでどこぞをほっつき歩いていると思って探してみれば…。
いた。
鴨川にかかる橋の上で、欄干にもたれて、のんびり川面なんか眺めていやがる。
川っ風に吹かれたら、胸に悪いとあれだけ釘を刺しておいたのに、まったく聞きゃしねえ。
また今晩あたり、きうりの幽的(幽霊)もどきの青い顔で屯所をうろついて、新米隊士をおびえさせでもしてみやがれ。今度こそふん縛って外出禁止にしてやる。
「総司」
「ああ、土方さん…じゃなかったですね。副長」
と、欄干にもたれたまま、こっちを見て、にっこり笑う。
まったく。
俺がこれだけ不機嫌なら、たいがいのやつは縮み上がるもんだが。
総司はさっきから、右手で何やら派手派手しく光る根付のようなものをいじくって、妙に楽しげな様子でいる。
俺から見れば、また随分と安っぽい意匠の、猫だか鬼だかわからんような細工だが、総司はそれをえらく気に入っていた。
「なんだ、まだその根付の落とし主は見つからねえのか。大事なものかもしれねえって、随分と熱心に探していたようだが」
「見つかりましたよ。やはり大事なものでした。これがないと故郷(くに)に帰れないんだそうです」
そう言いながら、何がうれしいのか知らないが、総司はガキのような無邪気な顔で笑って見せた。
「だからね。返すの止めちゃいました」
「おい」
「だって、その方が面白いじゃないですか。あの子が京からいなくなったら、つまらないもの」
<2011/7/24>