その四 薩摩藩邸四日目
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四日目。
薩摩藩邸に来てから、いろいろあって、気が回らなかったけど…。
そういえば、初日に世話になった人たちに、お礼も言いに行ってない。
長州藩邸はずいぶん遠いみたいだけど…。
寺田屋はすぐ近所なんですよ、と女中さんに教えられて、行ってみたくなった。
そう言ったら、大久保さんにはものすごく嫌な顔をされた。
確かに、昨日、あんなこと言われたし…全然信用がないんだろうなあ…とは思った。
でも、私だって子供じゃないんだし、自由に外を歩かせてくれたっていいじゃん…と思うのは、やっぱり軽く考えすぎてるってことなのかな。
大久保さんはしぶしぶ…と言った感じで、私に紙入れ…とかいうお財布の大きいのみたいのをくれた。
「ここに、この辺の地図と私の名刺と、二十朱を入れておいたから、持っていろ。
この辺の商家なら、これを見せれば、道を教えてくれるはずだから」
大久保さんの名刺というと聞こえはいいけど…要は迷子札だよね…。
もう、完全に、私が迷子になる前提で話をされてしまった。
ちょっと情けない。
おまけに、道案内に奉公人の女の子をひとりつけてくれると言う。
「え…悪いですよ…みなさん忙しいのに…」
「つくづく物を知らんな、お前は」
と、また嫌味が始まる。
「奉公人は誰かのお供でもなければ、外出などままならん。あれらにとってみれば、唯一の楽しみだ。
見当違いの遠慮をして、それを台無しにするな。
お前が寺田屋を訪問している間は、伴の者には小遣いを与えて菓子でも買えとしばらく自由にしてやることだな。向こうもそれを期待している。
お前も、私の傍にいる以上は、上に立つ者のたしなみを覚えろ」
上に立つ者って…。
「あの…」
「何だ」
「私…お世話になっておいて…こんなこと聞くのってよくないかなって思うんですけど…。
なんで私、お嬢様扱いみたいになってるんですか?なんかちょっと…私なんかには待遇よすぎかなあ…なんて…」
「気に入らんのか?」
「いえ…あの…こんなによくしてもらって…気に入らないなんて思いません。
でも、お金もないのに、藩邸に置いてもらってるんだから…奉公人扱いで全然かまわないというか…。
三日前に初めて会ったばかりで…ここまでしてもらうのって…なんか悪いなっていうか…」
あれ…?
初めて会って、私が怒鳴った時みたいに、大久保さんの顔が一瞬、素になった。
私…そこまで、驚くこと言ったかな?
それから、大久保さんは、ものすごく苦々しげに、くくっと笑った。
「…ここ数日の様子を見ていて、そうではないかと思っていたが…本当にわかっとらんらしいな…」
え…?
「どうせお前を奉公人扱いしても、そう役に立たん。つべこべ文句言っとらんで、さっさと出かけろ」
ひっ…ひどい…いちばん気にしてることを…。
でも、それより、大久保さんの機嫌が目に見えて悪くなった方が、気になった。
私、やっぱり、悪いこと言ったんだろうか?
「あの…ごめんなさい…私…せっかくの好意にケチつけるようなこと言って…」
「その話はもういいから、行け」
と、そっぽ向いて手をひらひらされた。
う…。
なんかよくわかんないけど…怒らせちゃったみたいだ。
薩摩藩邸に来てから、いろいろあって、気が回らなかったけど…。
そういえば、初日に世話になった人たちに、お礼も言いに行ってない。
長州藩邸はずいぶん遠いみたいだけど…。
寺田屋はすぐ近所なんですよ、と女中さんに教えられて、行ってみたくなった。
そう言ったら、大久保さんにはものすごく嫌な顔をされた。
確かに、昨日、あんなこと言われたし…全然信用がないんだろうなあ…とは思った。
でも、私だって子供じゃないんだし、自由に外を歩かせてくれたっていいじゃん…と思うのは、やっぱり軽く考えすぎてるってことなのかな。
大久保さんはしぶしぶ…と言った感じで、私に紙入れ…とかいうお財布の大きいのみたいのをくれた。
「ここに、この辺の地図と私の名刺と、二十朱を入れておいたから、持っていろ。
この辺の商家なら、これを見せれば、道を教えてくれるはずだから」
大久保さんの名刺というと聞こえはいいけど…要は迷子札だよね…。
もう、完全に、私が迷子になる前提で話をされてしまった。
ちょっと情けない。
おまけに、道案内に奉公人の女の子をひとりつけてくれると言う。
「え…悪いですよ…みなさん忙しいのに…」
「つくづく物を知らんな、お前は」
と、また嫌味が始まる。
「奉公人は誰かのお供でもなければ、外出などままならん。あれらにとってみれば、唯一の楽しみだ。
見当違いの遠慮をして、それを台無しにするな。
お前が寺田屋を訪問している間は、伴の者には小遣いを与えて菓子でも買えとしばらく自由にしてやることだな。向こうもそれを期待している。
お前も、私の傍にいる以上は、上に立つ者のたしなみを覚えろ」
上に立つ者って…。
「あの…」
「何だ」
「私…お世話になっておいて…こんなこと聞くのってよくないかなって思うんですけど…。
なんで私、お嬢様扱いみたいになってるんですか?なんかちょっと…私なんかには待遇よすぎかなあ…なんて…」
「気に入らんのか?」
「いえ…あの…こんなによくしてもらって…気に入らないなんて思いません。
でも、お金もないのに、藩邸に置いてもらってるんだから…奉公人扱いで全然かまわないというか…。
三日前に初めて会ったばかりで…ここまでしてもらうのって…なんか悪いなっていうか…」
あれ…?
初めて会って、私が怒鳴った時みたいに、大久保さんの顔が一瞬、素になった。
私…そこまで、驚くこと言ったかな?
それから、大久保さんは、ものすごく苦々しげに、くくっと笑った。
「…ここ数日の様子を見ていて、そうではないかと思っていたが…本当にわかっとらんらしいな…」
え…?
「どうせお前を奉公人扱いしても、そう役に立たん。つべこべ文句言っとらんで、さっさと出かけろ」
ひっ…ひどい…いちばん気にしてることを…。
でも、それより、大久保さんの機嫌が目に見えて悪くなった方が、気になった。
私、やっぱり、悪いこと言ったんだろうか?
「あの…ごめんなさい…私…せっかくの好意にケチつけるようなこと言って…」
「その話はもういいから、行け」
と、そっぽ向いて手をひらひらされた。
う…。
なんかよくわかんないけど…怒らせちゃったみたいだ。