「ただな、言わせてもらうが、お前、何様のつもりだ?」
と、大久保さんの話のトーンがいきなり変わった。

「え?」

「見たろうが。ここで奉公している連中は、まだ年端もいかぬ幼な子のころから働き始めた人間ばかりだ。
何年か働いて、やっと奥向きの仕事を任されるようになる。

ぽっと来たばかりのお前が、何か手伝ってやろうなどと、まあずいぶんと上から物が言えたものだ」
と、バッサリ切り捨てられる。

「だって…」

私は、言葉につまったけど、大久保さんの嫌味は、容赦なく続く。

「前にも言ったが…よしんば、お前が未来から来た人間だったとしても、だ。
私は、お前が未来人だというだけで、評価する気など、さらさらない。

お前は、どうやら我々が昔の人間だというだけで、無意識のうちに下に見ているようだがな」

「そんなことないですっ!」
私は思わず、大声を上げた。

さすがに、その言い方はないと思う。
私、そんなこと思ってないよ…。でも、無意識って…そう言われちゃうと、反論しにくい。

「ではなぜ、こちらの人間でも時間をかけねばできるようにならないことを、お前が片手間にひょいひょいと手伝えるなどと思う?

別に未来から来た人間ではなくてもな、私は、お前のような態度に出る人間を、あと一種類だけ知っている」
と、冷たい口調で言う。

何が、言いたいんだろう?

「それはな。西洋人だ。

勝手に日本に押しかけて来ておいて、会ったばかりの日本人に、いきなり、何か手伝ってあげましょう、教えてあげましょうなどとほざく。
技術者ならまだわからんでもないが。
お前のように、ろくに仕事などしたこともないおなごでもそうだ。

日本と中国の違いすら解せぬようなイギリス女がな、東洋人のすることなど、自分なら何も努力せずともできると決めつけて、いらん口出しして引っ掻き回す。

そのくせ、日本語も日本文化も、まったく学ぼうとせん。
ただ、自分が役に立つところを見せるから、褒めてくれとばかり要求する。いい迷惑だ」

それって…。
つまり、私も同じってこと…?
外国人と同じように、私も、この時代の日本人を下に見てるって…そういう意味?

何だか、全人格否定されたような気になった。
ちょっとカチンときた。