その一 幕末初日
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私は、薩摩藩邸に行きませんってきっちり断ろうと思ったんだけど…。
なんかすごい勢いで周りから口を挟まれてしまった。
「それは大久保さん、ずるいぜよっ」と龍馬さんが叫ぶと、
「理由も説明せず、横合いからゆうさんを掠め取ろうとは、卑怯ですね」と、武市さんもすかさず同意した。
「こらこら、ゆうは俺のだぞっ!」と、高杉さんがよくわからない宣言をすると、
「大久保さん、さすがにそれは横暴っス」と、慎ちゃんが抗議した。
大久保さんは、思いっきり馬鹿にしたような、やれやれという顔をした。
「何がずるい、だ。私とてこんなものを背負いこみたくはないが、この場合はしかたあるまい」
「こ、こんなものって何なんですかっ!」
と、私は思わず言ってしまった。
…やばい。いちおう龍馬さんの仕事相手の偉い人だったっけ。
ふふん。
大久保さんが、とーっても意地悪そうな、嬉しそうな顔で笑った。
「…確かに、こんなものだと思うが、だからと言って薩摩が勝手に持って行くのも気に食わん」と、以蔵が言った。
ひ…ひどい…。
でも、助けようとしてくれてんのかな?
だけど、大久保さんは、しらーっとした顔で、いきなりすごいことを言った。
「何をごちゃごちゃと。このお尋ね者どもがっ!」
「う…」
何人かの声が重なって、一斉に皆、黙っちゃった。
「お…お尋ね者?」
「そうだ。こいつら全員、幕吏に追われておる。
このうちの誰かと一緒にいるところを新選組あたりに見つかれば、小娘、お前もまとめてバッサリと斬り殺されるぞ」
「ええっ」
私は思わず、皆の顔を見てしまった。
お尋ね者って…。
あの…指名手配とか、WANTEDとかの…あれですか?
斬り殺されるって…なんですか、それ。
「…そんなの、信じられませんっ」
「なぜ、そう言い切れる?」
「だって…みんな親切だし、いい人です」
「姉さん…」
「ゆうさん…」
皆がなんだか感動したような声で、口ごもった。
…あれ?
…なんで一人も、すぐに否定してくんないんですか…。
た、武市さん…桂さん…目、そらさないでください…。
すると突然、大久保さんは、弾けたように笑い出した。
「な…なんで笑うんですかっ」
なんかこの人、いちいち失礼じゃないですか?
「これはいい。お前がこの時代の人間でないことは確かなようだ。
…小娘、未来では、お尋ね者は、不親切で悪い人なのか?」
え…。
いや…そう言われると…お尋ね者に知り合いはいないんですけど…。
「…違うんですか?」
「今の時世ではな。
真剣に国を憂うことは、時に罪になる。
自分はどうなってもいいから、皆が幸せに暮らせる世を作ろうなどと考えるお人よしが、お尋ね者になるのだ。
さしずめ、坂本君などはその典型だろう」
「お、大久保さん…」
龍馬さんが、リアクションに困ったような顔をする。
私も何だか、頭が混乱してしまった。
「よくわかんないけど…それってつまり…。
ここでは、いい人は政府に追われてて、見つかったら殺されちゃうってことですか?」
「…まあ、そうだ。
えらく大ざっぱなまとめだが、お前の脳みそでは、それだけ理解していれば十分だ」
むっ…。大久保さんって、いちいち一言多いんですけど。
だけど、混乱したのは、大久保さんの嫌味のせいじゃなかった。
いい人が追われて簡単に殺されちゃう世の中って…何?
言葉では理解できてるし、本やテレビでそういう話は聞いたことあるけど…。
いきなりそんな話をされても、それが自分にどうかかわってくるのか、全然わかんない。
ただ、もしかして私、思った以上にとんでもないことに巻き込まれてるんだろうかと思った。
こっちに来てから、私は、わけもわからず龍馬さんたちの後をついて歩いて、言われた場所に動いてたけど…。
たぶんそれって、龍馬さんたちが優しいから、ただ、言われた通りにしてれば間違いないって…なんか無意識に思ってたのかな。
大久保さんと話をしていたら…。
この人の言うとおりにしてたらやばいって、そういう気にさせられてきて…。
変なこと言われた時は言い返さなきゃって思ってたら…。
大久保さんの言う通りにするんじゃなくて、自分の頭で考えて行動を選ばなきゃって思ってたら…。
なんだか頭が冷静になって、ちょっとずつ、自分の置かれた状況が、さっきより見えてきた気がする。
そしたら、これは怖いと思ってもいい状況なんだってことが、なんかひしひしとわかって来た。
怖くて…今度はそのせいで、頭が混乱してきた。
優しくて頼りになると思ってた龍馬さんたちが…お尋ね者で、そばにいると危ない人たちだったらしいってことは、ショックだったけど…。
それって、つまり…あれ?
「えと…じゃ…ひとりだけお尋ね者じゃない大久保さんは、この中で一番いい人じゃないってことですか?」
「ね、姉さんっ…!」と、慎ちゃんがあわてたように言った。
「阿呆でもそれはわかるらしいな」と、ボソッと以蔵が言った。
でも、大久保さんは動じなかった。
「ほう、わかっているではないか」
と、なぜか満面の笑みで言う。
「では決まりだな。この娘は私が預かる」
そう言って、大久保さんはふふんと鼻を鳴らした。なんでそんなに得意そうなんだろう。
「…だから、なんでそうなるんですかっ」
そんな、自分で自分が一番やな性格だって、笑って肯定しちゃう人のとこなんか、行きたくないよっ。
なんかすごい勢いで周りから口を挟まれてしまった。
「それは大久保さん、ずるいぜよっ」と龍馬さんが叫ぶと、
「理由も説明せず、横合いからゆうさんを掠め取ろうとは、卑怯ですね」と、武市さんもすかさず同意した。
「こらこら、ゆうは俺のだぞっ!」と、高杉さんがよくわからない宣言をすると、
「大久保さん、さすがにそれは横暴っス」と、慎ちゃんが抗議した。
大久保さんは、思いっきり馬鹿にしたような、やれやれという顔をした。
「何がずるい、だ。私とてこんなものを背負いこみたくはないが、この場合はしかたあるまい」
「こ、こんなものって何なんですかっ!」
と、私は思わず言ってしまった。
…やばい。いちおう龍馬さんの仕事相手の偉い人だったっけ。
ふふん。
大久保さんが、とーっても意地悪そうな、嬉しそうな顔で笑った。
「…確かに、こんなものだと思うが、だからと言って薩摩が勝手に持って行くのも気に食わん」と、以蔵が言った。
ひ…ひどい…。
でも、助けようとしてくれてんのかな?
だけど、大久保さんは、しらーっとした顔で、いきなりすごいことを言った。
「何をごちゃごちゃと。このお尋ね者どもがっ!」
「う…」
何人かの声が重なって、一斉に皆、黙っちゃった。
「お…お尋ね者?」
「そうだ。こいつら全員、幕吏に追われておる。
このうちの誰かと一緒にいるところを新選組あたりに見つかれば、小娘、お前もまとめてバッサリと斬り殺されるぞ」
「ええっ」
私は思わず、皆の顔を見てしまった。
お尋ね者って…。
あの…指名手配とか、WANTEDとかの…あれですか?
斬り殺されるって…なんですか、それ。
「…そんなの、信じられませんっ」
「なぜ、そう言い切れる?」
「だって…みんな親切だし、いい人です」
「姉さん…」
「ゆうさん…」
皆がなんだか感動したような声で、口ごもった。
…あれ?
…なんで一人も、すぐに否定してくんないんですか…。
た、武市さん…桂さん…目、そらさないでください…。
すると突然、大久保さんは、弾けたように笑い出した。
「な…なんで笑うんですかっ」
なんかこの人、いちいち失礼じゃないですか?
「これはいい。お前がこの時代の人間でないことは確かなようだ。
…小娘、未来では、お尋ね者は、不親切で悪い人なのか?」
え…。
いや…そう言われると…お尋ね者に知り合いはいないんですけど…。
「…違うんですか?」
「今の時世ではな。
真剣に国を憂うことは、時に罪になる。
自分はどうなってもいいから、皆が幸せに暮らせる世を作ろうなどと考えるお人よしが、お尋ね者になるのだ。
さしずめ、坂本君などはその典型だろう」
「お、大久保さん…」
龍馬さんが、リアクションに困ったような顔をする。
私も何だか、頭が混乱してしまった。
「よくわかんないけど…それってつまり…。
ここでは、いい人は政府に追われてて、見つかったら殺されちゃうってことですか?」
「…まあ、そうだ。
えらく大ざっぱなまとめだが、お前の脳みそでは、それだけ理解していれば十分だ」
むっ…。大久保さんって、いちいち一言多いんですけど。
だけど、混乱したのは、大久保さんの嫌味のせいじゃなかった。
いい人が追われて簡単に殺されちゃう世の中って…何?
言葉では理解できてるし、本やテレビでそういう話は聞いたことあるけど…。
いきなりそんな話をされても、それが自分にどうかかわってくるのか、全然わかんない。
ただ、もしかして私、思った以上にとんでもないことに巻き込まれてるんだろうかと思った。
こっちに来てから、私は、わけもわからず龍馬さんたちの後をついて歩いて、言われた場所に動いてたけど…。
たぶんそれって、龍馬さんたちが優しいから、ただ、言われた通りにしてれば間違いないって…なんか無意識に思ってたのかな。
大久保さんと話をしていたら…。
この人の言うとおりにしてたらやばいって、そういう気にさせられてきて…。
変なこと言われた時は言い返さなきゃって思ってたら…。
大久保さんの言う通りにするんじゃなくて、自分の頭で考えて行動を選ばなきゃって思ってたら…。
なんだか頭が冷静になって、ちょっとずつ、自分の置かれた状況が、さっきより見えてきた気がする。
そしたら、これは怖いと思ってもいい状況なんだってことが、なんかひしひしとわかって来た。
怖くて…今度はそのせいで、頭が混乱してきた。
優しくて頼りになると思ってた龍馬さんたちが…お尋ね者で、そばにいると危ない人たちだったらしいってことは、ショックだったけど…。
それって、つまり…あれ?
「えと…じゃ…ひとりだけお尋ね者じゃない大久保さんは、この中で一番いい人じゃないってことですか?」
「ね、姉さんっ…!」と、慎ちゃんがあわてたように言った。
「阿呆でもそれはわかるらしいな」と、ボソッと以蔵が言った。
でも、大久保さんは動じなかった。
「ほう、わかっているではないか」
と、なぜか満面の笑みで言う。
「では決まりだな。この娘は私が預かる」
そう言って、大久保さんはふふんと鼻を鳴らした。なんでそんなに得意そうなんだろう。
「…だから、なんでそうなるんですかっ」
そんな、自分で自分が一番やな性格だって、笑って肯定しちゃう人のとこなんか、行きたくないよっ。