私は、女中さんたちにワガママを言ってみた。

女中さんたちの着物を着せてもらい、タスキをかけ、仕事を手伝わせてほしいと頼んだ。

女中さんたちも困っていたけど…。

体を使わない仕事、ということで、帳面を持ってきてくれた。
でも、あの、ミミズがのたくったような字は、まったく読めなかった。

では、花を活けてくださいって言われたけど…そんなこと、したことなかった。

着物を畳んでと言われてやろうとしたら…女中さんたちがあわてて止めた。
着物には、決まった畳み方があって、それを間違えると変なしわがついて、きれいに着れなくなるなんて、その日まで全然知らなかった。

じゃあ雑巾を…と言われ、私は飛びついた。
うん!雑巾がけなら、道場で毎日やってるもん!

…と思ったら…。
端切れをたくさん渡されて、雑巾を縫ってくれと言われてしまった。
もちろん、手縫いだ。
ええーっと思ったけど、見よう見まねで頑張ってみたけど…。
なんか、できた雑巾はまったく使い物にならなかったみたいで。
針箱を取り上げられてしまった。

じゃあ、お茶を淹れてと言われた。
それならできる!と思ったら…やっぱり甘かった。

鉄瓶で湯を沸かせと言われて、囲炉裏で必死で炭をふうふう吹いて頑張ったけど…。
途中で間違って、鉄瓶をひっくり返して、湯をこぼしてしまった。

その途端。

ものすごい勢いで、囲炉裏の灰が、あたり一面に舞い上がった。
そういうの、灰神楽って言うらしい。

一瞬後、私は、頭からすっぽり、灰で覆われて、真っ白になっていた。