その一 幕末初日
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私が縁側に立ってぼーっとしてたら、
「失礼します。お着替えをお持ちしました」
と、いかにも大人の女の人って感じのおちついた声がして、女中頭さんらしい人が入ってきた。
きれいな着物の入った箱みたいのを持っている。
私が庭の花に見とれているのを見ると…
「まあ…やはり気に入っていただけたようですね」
と、にこにこと大久保さんに笑いかけた。
「お文をいただいて、いそいでお部屋の準備をした甲斐がありました」
と言いながら、女中頭さんは箱を開けて、着物を出した。
私は思わずのぞき込んで、
「わ…きれい…」
と目を見張ってしまった。
これは、未来でも見たぞ。
西陣織ってやつ?それもむちゃくちゃ手が込んでる。
ものすごく、すてき。
女中頭さんは、私が喜んでいるのを見て、すごくうれしそうな顔をした。
「…こちらも大急ぎで手に入れたんですよ。
ご指示のあったとおり、急いで小松様のお屋敷からお着物を拝借してきましたが…。
これは袖丈を直さないといけませんね」
そう言いながら、私の腕とか体とかを珍しそうに見ていた。
昔の人って体格が小さかったってよく言うけど…。たしかに女中さんたちって、皆、華奢だな。
「お着物を滅多に着ない遠い国のお客様とは伺っておりましたが…。
お髪(おぐし)もこんなに散らして…結う前に何とかしないと」
口にはしなかったけど、女中頭さんの目は明らかに『女の子がこんな格好ではしたない』と言っていた。
女中頭さんは、なんだか真剣に考え込んでしまった。
「大久保様。これは少し…お時間をちょうだいしないと」
女中頭さんがそう言った途端、襖が開いて、さらに女中さんたちが何人も部屋に入って来た。
「へ?」
私が話を飲み込めずにポケっとしてたら…。
大久保さんは横目で私を見ると、ふんと言ってそのまま部屋を出て行ってしまった。
「後は、頼む」
え…。
あ、そうか。着替えするんだもんね。
…とか思う間もなく、いろんなところから手が伸びてきて、私は女中さんたちにあちこち採寸され始めてしまった。
まあ、とか、あら、とか言いながら、女中さんたちは、私の腕が長いだの、胸が大きすぎるだの、けっこう言い放題のこと言ってくれちゃって…。
採寸が終わると、今度はよくわかんないうちにお風呂とか入れられて…。
自分でやりますって言ったのに、とんでもないとか言われて、またいろんな手が伸びて、髪の毛とか体とか、ものすごく丁寧に洗われちゃって…。
なんて感じで、女中さん達によってたかって、何だかよくわかんないうちに、すごい身分の高そうな武家娘の格好にさせられてしまった。
もうほとんど、どこのお姫様ですかって感じ。
着物の直しに時間がかかったせいもあるけど…そんなことをしているうちに、いつの間にかすっかり夜になっていて…。
私は、大久保さんにお礼に行かなきゃと思っていたのに…。
なんだか女中さんたちに髪の毛をいじられているうちに、なんか気持ちよくなってしまって…。
いつの間にか、こっくりこっくり、首が動いて、居眠りしちゃってた。
「よほどお疲れだったんですね。もうお休みくださいまし」
と、女中頭さんが、やさしい声で言うのも、なんだか、夢うつつに聞こえてきて。
また、いろんな手が伸びて、私を寝巻に着替えさせてくれて、高級そうな昔風のお布団に寝かしつけてくれたけど…。
もうその辺は頭がもうろうとしてて、よく覚えていない。
だけど、半分眠りながら、私は考えていた。
…なんか、姫様の乗るような駕籠だの、お花いっぱいの部屋だの、西陣織の着物だの…。
いろいろ準備してもらったから、こう言うのって、現金だけどさ。
やっぱり大久保さんって、嫌味を言うわりに、ものすごく親切なんじゃないかな。
それでもって、自分が気を使ってるってことを、隠そうとするよね。
つか、ふつう、単に親切なだけで、こんなにいろいろ、短時間で準備できないよ。
ちょっと、私が想像もつかないくらい、すごい人なのかも。
なんかさ。
昼間は、すっごい不安を感じてたけど…。薩摩藩邸に来るのは、そんなに悪いことじゃなかったよね。
うん。
明日になったら…。
お礼言わなくちゃ。
物をもらったことだけじゃなく。
いっぱい見えないところまで、気を使って親切にしてくれて、ありがとうって。
「失礼します。お着替えをお持ちしました」
と、いかにも大人の女の人って感じのおちついた声がして、女中頭さんらしい人が入ってきた。
きれいな着物の入った箱みたいのを持っている。
私が庭の花に見とれているのを見ると…
「まあ…やはり気に入っていただけたようですね」
と、にこにこと大久保さんに笑いかけた。
「お文をいただいて、いそいでお部屋の準備をした甲斐がありました」
と言いながら、女中頭さんは箱を開けて、着物を出した。
私は思わずのぞき込んで、
「わ…きれい…」
と目を見張ってしまった。
これは、未来でも見たぞ。
西陣織ってやつ?それもむちゃくちゃ手が込んでる。
ものすごく、すてき。
女中頭さんは、私が喜んでいるのを見て、すごくうれしそうな顔をした。
「…こちらも大急ぎで手に入れたんですよ。
ご指示のあったとおり、急いで小松様のお屋敷からお着物を拝借してきましたが…。
これは袖丈を直さないといけませんね」
そう言いながら、私の腕とか体とかを珍しそうに見ていた。
昔の人って体格が小さかったってよく言うけど…。たしかに女中さんたちって、皆、華奢だな。
「お着物を滅多に着ない遠い国のお客様とは伺っておりましたが…。
お髪(おぐし)もこんなに散らして…結う前に何とかしないと」
口にはしなかったけど、女中頭さんの目は明らかに『女の子がこんな格好ではしたない』と言っていた。
女中頭さんは、なんだか真剣に考え込んでしまった。
「大久保様。これは少し…お時間をちょうだいしないと」
女中頭さんがそう言った途端、襖が開いて、さらに女中さんたちが何人も部屋に入って来た。
「へ?」
私が話を飲み込めずにポケっとしてたら…。
大久保さんは横目で私を見ると、ふんと言ってそのまま部屋を出て行ってしまった。
「後は、頼む」
え…。
あ、そうか。着替えするんだもんね。
…とか思う間もなく、いろんなところから手が伸びてきて、私は女中さんたちにあちこち採寸され始めてしまった。
まあ、とか、あら、とか言いながら、女中さんたちは、私の腕が長いだの、胸が大きすぎるだの、けっこう言い放題のこと言ってくれちゃって…。
採寸が終わると、今度はよくわかんないうちにお風呂とか入れられて…。
自分でやりますって言ったのに、とんでもないとか言われて、またいろんな手が伸びて、髪の毛とか体とか、ものすごく丁寧に洗われちゃって…。
なんて感じで、女中さん達によってたかって、何だかよくわかんないうちに、すごい身分の高そうな武家娘の格好にさせられてしまった。
もうほとんど、どこのお姫様ですかって感じ。
着物の直しに時間がかかったせいもあるけど…そんなことをしているうちに、いつの間にかすっかり夜になっていて…。
私は、大久保さんにお礼に行かなきゃと思っていたのに…。
なんだか女中さんたちに髪の毛をいじられているうちに、なんか気持ちよくなってしまって…。
いつの間にか、こっくりこっくり、首が動いて、居眠りしちゃってた。
「よほどお疲れだったんですね。もうお休みくださいまし」
と、女中頭さんが、やさしい声で言うのも、なんだか、夢うつつに聞こえてきて。
また、いろんな手が伸びて、私を寝巻に着替えさせてくれて、高級そうな昔風のお布団に寝かしつけてくれたけど…。
もうその辺は頭がもうろうとしてて、よく覚えていない。
だけど、半分眠りながら、私は考えていた。
…なんか、姫様の乗るような駕籠だの、お花いっぱいの部屋だの、西陣織の着物だの…。
いろいろ準備してもらったから、こう言うのって、現金だけどさ。
やっぱり大久保さんって、嫌味を言うわりに、ものすごく親切なんじゃないかな。
それでもって、自分が気を使ってるってことを、隠そうとするよね。
つか、ふつう、単に親切なだけで、こんなにいろいろ、短時間で準備できないよ。
ちょっと、私が想像もつかないくらい、すごい人なのかも。
なんかさ。
昼間は、すっごい不安を感じてたけど…。薩摩藩邸に来るのは、そんなに悪いことじゃなかったよね。
うん。
明日になったら…。
お礼言わなくちゃ。
物をもらったことだけじゃなく。
いっぱい見えないところまで、気を使って親切にしてくれて、ありがとうって。