第十章 炎上
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「降りろ…って…」
私は、何だかもう、目の前が真っ暗になるような気持がした。
「…この先は、会津と新選組の兵がいる。
私がこちら側に来る時は、まだ奴らは移動してくる最中だったからいいが…。
今頃はびっしりと薩摩の陣営を取り囲んでいるはずだ。
命の保証はできん」
大久保さんは、何が気になるのか、まっすぐ前の空を見つめたまま、言った。
私の顔を見ようともしない。
「会津や新選組の連中の密集する中を突っ切らんと、味方の元へは戻れんが…。
一人でお前を抱えて何十人もの敵兵と斬り結んで、血路を開くわけにもいくまい。
だいたい、ここでそんな時間のかかることをしている間に、土佐や幕府の連中に朝廷を抑えられたら…。
薩摩は負ける。
今、静観している他藩の連中どもが、一斉に襲い掛かって来て、なぶり殺しだ。
悪いが、今のお前は足手まといだ。
つべこべ言わず、降りろ」
そんなふうに、不自然なくらい淡々と、冷静に説明する大久保さんの声を聴いていたら…。
なんだか、もう、たまんなくなってきた。
「いやですっ」
と、私は叫んだ。
「何だと?」
「お、降りたら…また、未来に帰れって言うつもりですか?
そんなの、絶対いやですっ!」
私は、大久保さんの首に回していた腕に、ぎゅっと力をこめた。
何があったって、絶対離れてやるもんかと思った。
そしたら、なんでか知らないけど、ものすごい勢いで涙がこみ上げて来た。
「絶対…いやだっ…!」
そう叫んだとたん、涙がぼろぼろ落ちてきた。
「ずっと…会いたかったんだからっ…もう会えないかと思ってた…。
さみしくて…会いたくて…もう、胸がつぶれて死んじゃうかと思った…。
やっと…やっと会えたのに…」
そんな場合ではないとわかっていたけど、涙は後から後から出てきて、私は、同じようなことを泣きながら繰り返した。
「もう絶対に帰れなんて言わないで…。
私を無理やり、帰そうなんてしないでよ…。
離れるなんて嫌だよ…。ずっとずーっと、そばにいたいよ…」
なんか喉から固まりみたいなものがこみあげてきて、私は、えぐっ、えぐって変な音を立てながら…。
大久保さんの首にかじりついて、肩に顔をうずめて、絶対引きはがされないように体を突っ張らかせて…。
ただ、ただ、泣き喚いた。
「小娘…」
大久保さんは、それだけ言うと…。
すごい長い間…ずっと黙ってた。
それから、長い長いため息をついた。
大久保さんが、どんな顔をしていたかは知らない。首にかじりついていたから、見えなかった。
だけど、緊張していた大久保さんの体から力が抜けて、私の頭をがしがしとなでるのは、感じた。
「馬鹿か…おまえは…」
「どうせ…馬鹿です…」
ふん、と大久保さんは鼻を鳴らした。
「お前がどう考えているかは知らんが…。
私とて、木や石でできているわけではない。それなりに、感情くらいはある」
「へ…?」
「お前は…無理やり帰そうとするなと、簡単に言うが…。
こっちが、どれだけの思いで、二度もお前を未来に帰してやったと思っているんだ。ふざけるのもたいがいにしろ」
「え?」
私は…大久保さんが何を言いたいのか、わからなかった。
そして、大久保さんは、もう一回ため息をつくと、とんでもないことを言った。
「悪いが…私にも、耐えられる限界というものはある。
今度、お前を、無理に未来に帰せば…。
もう一度、お前を生涯失う覚悟をせねばならんほどに、追い詰められれば…。
おそらく、私は気が狂う」
「…!」
私は、何だかもう、目の前が真っ暗になるような気持がした。
「…この先は、会津と新選組の兵がいる。
私がこちら側に来る時は、まだ奴らは移動してくる最中だったからいいが…。
今頃はびっしりと薩摩の陣営を取り囲んでいるはずだ。
命の保証はできん」
大久保さんは、何が気になるのか、まっすぐ前の空を見つめたまま、言った。
私の顔を見ようともしない。
「会津や新選組の連中の密集する中を突っ切らんと、味方の元へは戻れんが…。
一人でお前を抱えて何十人もの敵兵と斬り結んで、血路を開くわけにもいくまい。
だいたい、ここでそんな時間のかかることをしている間に、土佐や幕府の連中に朝廷を抑えられたら…。
薩摩は負ける。
今、静観している他藩の連中どもが、一斉に襲い掛かって来て、なぶり殺しだ。
悪いが、今のお前は足手まといだ。
つべこべ言わず、降りろ」
そんなふうに、不自然なくらい淡々と、冷静に説明する大久保さんの声を聴いていたら…。
なんだか、もう、たまんなくなってきた。
「いやですっ」
と、私は叫んだ。
「何だと?」
「お、降りたら…また、未来に帰れって言うつもりですか?
そんなの、絶対いやですっ!」
私は、大久保さんの首に回していた腕に、ぎゅっと力をこめた。
何があったって、絶対離れてやるもんかと思った。
そしたら、なんでか知らないけど、ものすごい勢いで涙がこみ上げて来た。
「絶対…いやだっ…!」
そう叫んだとたん、涙がぼろぼろ落ちてきた。
「ずっと…会いたかったんだからっ…もう会えないかと思ってた…。
さみしくて…会いたくて…もう、胸がつぶれて死んじゃうかと思った…。
やっと…やっと会えたのに…」
そんな場合ではないとわかっていたけど、涙は後から後から出てきて、私は、同じようなことを泣きながら繰り返した。
「もう絶対に帰れなんて言わないで…。
私を無理やり、帰そうなんてしないでよ…。
離れるなんて嫌だよ…。ずっとずーっと、そばにいたいよ…」
なんか喉から固まりみたいなものがこみあげてきて、私は、えぐっ、えぐって変な音を立てながら…。
大久保さんの首にかじりついて、肩に顔をうずめて、絶対引きはがされないように体を突っ張らかせて…。
ただ、ただ、泣き喚いた。
「小娘…」
大久保さんは、それだけ言うと…。
すごい長い間…ずっと黙ってた。
それから、長い長いため息をついた。
大久保さんが、どんな顔をしていたかは知らない。首にかじりついていたから、見えなかった。
だけど、緊張していた大久保さんの体から力が抜けて、私の頭をがしがしとなでるのは、感じた。
「馬鹿か…おまえは…」
「どうせ…馬鹿です…」
ふん、と大久保さんは鼻を鳴らした。
「お前がどう考えているかは知らんが…。
私とて、木や石でできているわけではない。それなりに、感情くらいはある」
「へ…?」
「お前は…無理やり帰そうとするなと、簡単に言うが…。
こっちが、どれだけの思いで、二度もお前を未来に帰してやったと思っているんだ。ふざけるのもたいがいにしろ」
「え?」
私は…大久保さんが何を言いたいのか、わからなかった。
そして、大久保さんは、もう一回ため息をつくと、とんでもないことを言った。
「悪いが…私にも、耐えられる限界というものはある。
今度、お前を、無理に未来に帰せば…。
もう一度、お前を生涯失う覚悟をせねばならんほどに、追い詰められれば…。
おそらく、私は気が狂う」
「…!」