第一章 それぞれの思惑
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寺田屋事件翌日。京都のとある路傍。
【薩摩藩】大久保利通
「あ、いたいた。大久保さん、探しましたよ。昨夜はお世話になりました」
御所での仕事を終えて藩邸へ戻る帰り道で、その男は、そう言いながら、子供じみた笑顔を浮かべて近づいて来た。
その馴れ馴れしさが、かえってこちらの警戒を煽る。
こいつに、昨夜はお世話になりましたなどと言われる云われはない。
「何の用だ。昨日斬りそびれた仕返しにでも来たのか」
と、こちらが不快感を露わにしても、その男…沖田はまったく動じる風もなく、旧来の知己にでも会ったような笑顔を崩さなかった。
「いやだなあ。昨日はほら、お尋ね者をあなたがかばおうとするから、いけないんですよ。
薩摩藩士自体は、ぼくらに斬る理由がないですからね。往来で剣を抜いたりしません」
「で。何の用なんだ?」
沖田は、少年じみたすねた表情でそっぽを向いてみせた。
「あーあ。あなたも土方さんと同じで、気が短いったらないな…。
そうですね。表向きは…まあ、人に聞かれたら…ぼくが最近の薩摩は不審だからって問い正してたことにしておいてください」
と、意味不明なことを言う。
何だ、こいつは。
なまじ態度が柔和なだけに、どこか壊れたような会話の内容に、薄ら寒さを覚える。
「ふふ…今、何だこいつはって思ったでしょう?
実はね。あなたにこれを渡しに来たんです」
そう言うと、沖田は懐から、根付のようなものを取り出した。
その紐を持って、猫の気でも引くように、こちらを見ながら振って見せる。
猫…?
派手派手しい色の、やけに光る猫の飾りのついた洋風の根付。
いや…小娘の失くしたという『きいほるだあ』だ。
思わず、手を伸ばしてひったくる。
「…乱暴だなあ…」
と、言いつつ、こちらの反応が期待通りだったのか、やけに嬉しそうな顔をしていた。
【薩摩藩】大久保利通
「あ、いたいた。大久保さん、探しましたよ。昨夜はお世話になりました」
御所での仕事を終えて藩邸へ戻る帰り道で、その男は、そう言いながら、子供じみた笑顔を浮かべて近づいて来た。
その馴れ馴れしさが、かえってこちらの警戒を煽る。
こいつに、昨夜はお世話になりましたなどと言われる云われはない。
「何の用だ。昨日斬りそびれた仕返しにでも来たのか」
と、こちらが不快感を露わにしても、その男…沖田はまったく動じる風もなく、旧来の知己にでも会ったような笑顔を崩さなかった。
「いやだなあ。昨日はほら、お尋ね者をあなたがかばおうとするから、いけないんですよ。
薩摩藩士自体は、ぼくらに斬る理由がないですからね。往来で剣を抜いたりしません」
「で。何の用なんだ?」
沖田は、少年じみたすねた表情でそっぽを向いてみせた。
「あーあ。あなたも土方さんと同じで、気が短いったらないな…。
そうですね。表向きは…まあ、人に聞かれたら…ぼくが最近の薩摩は不審だからって問い正してたことにしておいてください」
と、意味不明なことを言う。
何だ、こいつは。
なまじ態度が柔和なだけに、どこか壊れたような会話の内容に、薄ら寒さを覚える。
「ふふ…今、何だこいつはって思ったでしょう?
実はね。あなたにこれを渡しに来たんです」
そう言うと、沖田は懐から、根付のようなものを取り出した。
その紐を持って、猫の気でも引くように、こちらを見ながら振って見せる。
猫…?
派手派手しい色の、やけに光る猫の飾りのついた洋風の根付。
いや…小娘の失くしたという『きいほるだあ』だ。
思わず、手を伸ばしてひったくる。
「…乱暴だなあ…」
と、言いつつ、こちらの反応が期待通りだったのか、やけに嬉しそうな顔をしていた。