第八章 小娘、逃げ回る
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
神社の境内を走り出て、少し広い通りに入る。
見覚えのある店々が目に入ってきて、ほっとする。
やっぱり、あれからほとんど年月はたってない。
でも、どこも昼間だと言うのに、固く戸を閉ざしていて、町には見捨てられたような雰囲気が漂っていた。
えっ…と一瞬思ったけど…。
店の入り口に門松が飾ってあるのに気付いた。
やっぱり…お正月…なんだ。
お店が休業だから、人の姿がないんだ。
そう言えば、江戸時代のお正月って、経験してなかった。
でも、普通に考えて、子どもが凧揚げしてたり、晴れ着姿の人が歩いてたりって、しないんだろうか…。
何だか、いやな予感がする。
ここも、煙がただよっている。
さっきより、火薬のにおいが濃い。
何…これ…?
江戸時代には、正月にたき火をする習慣でも、あるんだろうか?
それにしても、煙が多すぎるよ。
さらに走って水路を渡り、商店でなく、長屋…つまり、人の家が多い一角に入ると、様子が一変した。
たくさんの人が、荷物を抱えて、こちらに向かって逃げてくる。
何…なんで?
いったい、何があったんだろう?
私は、なんだか気持ちがざわざわしてきた。
私は人波を掻き分けて走った。
藩邸の皆に早く会って、元気な顔を確かめたい。皆、どうしてるだろう…。
大久保さんに、半次郎さんに、女中さんたちに、小松さんに、それから…。
私は、大通りをそれて、水路沿いの道に入った。
こっちの道を行けば、橋のかなり手前で、向こう岸にある藩邸が見えてくるはず。
水路が大きく曲がって、目の前が、開けてきた。
あと少しで、藩邸が見えてくるはず…。
そう思った時。
私は、ぎくっとした。
向こう岸に見えるものって…。
あの、縦長の旗…のぼり、って言うんだっけ?
すっごいなじみのある模様がついてる。
水戸黄門と同じやつ。
葵の紋所ってやつだっけ?
その模様のついた旗が、何十本も、もしかしたら百本以上…。
薩摩藩邸を取り囲んでた。
火薬のにおいは…そっちの方角から、いちばん強く匂ってた。
私…そう言えば今まで、考えたことなかった。
未来に帰って、おじいちゃんが時代劇を見てんの、のぞいたりもしてたけど…意識してなかった。
葵の紋の、幟の意味。
つまり、幕府側の軍隊が、あそこを取り囲んでいるんだ。
あれだけ幟があるってことは…千人とかより、もっと多いよね?
そんな…すごい数の軍隊が、薩摩藩邸を襲いに来た。
私が今、薩摩藩邸に行けば、きっと殺される。
そういう意味だ。
見覚えのある店々が目に入ってきて、ほっとする。
やっぱり、あれからほとんど年月はたってない。
でも、どこも昼間だと言うのに、固く戸を閉ざしていて、町には見捨てられたような雰囲気が漂っていた。
えっ…と一瞬思ったけど…。
店の入り口に門松が飾ってあるのに気付いた。
やっぱり…お正月…なんだ。
お店が休業だから、人の姿がないんだ。
そう言えば、江戸時代のお正月って、経験してなかった。
でも、普通に考えて、子どもが凧揚げしてたり、晴れ着姿の人が歩いてたりって、しないんだろうか…。
何だか、いやな予感がする。
ここも、煙がただよっている。
さっきより、火薬のにおいが濃い。
何…これ…?
江戸時代には、正月にたき火をする習慣でも、あるんだろうか?
それにしても、煙が多すぎるよ。
さらに走って水路を渡り、商店でなく、長屋…つまり、人の家が多い一角に入ると、様子が一変した。
たくさんの人が、荷物を抱えて、こちらに向かって逃げてくる。
何…なんで?
いったい、何があったんだろう?
私は、なんだか気持ちがざわざわしてきた。
私は人波を掻き分けて走った。
藩邸の皆に早く会って、元気な顔を確かめたい。皆、どうしてるだろう…。
大久保さんに、半次郎さんに、女中さんたちに、小松さんに、それから…。
私は、大通りをそれて、水路沿いの道に入った。
こっちの道を行けば、橋のかなり手前で、向こう岸にある藩邸が見えてくるはず。
水路が大きく曲がって、目の前が、開けてきた。
あと少しで、藩邸が見えてくるはず…。
そう思った時。
私は、ぎくっとした。
向こう岸に見えるものって…。
あの、縦長の旗…のぼり、って言うんだっけ?
すっごいなじみのある模様がついてる。
水戸黄門と同じやつ。
葵の紋所ってやつだっけ?
その模様のついた旗が、何十本も、もしかしたら百本以上…。
薩摩藩邸を取り囲んでた。
火薬のにおいは…そっちの方角から、いちばん強く匂ってた。
私…そう言えば今まで、考えたことなかった。
未来に帰って、おじいちゃんが時代劇を見てんの、のぞいたりもしてたけど…意識してなかった。
葵の紋の、幟の意味。
つまり、幕府側の軍隊が、あそこを取り囲んでいるんだ。
あれだけ幟があるってことは…千人とかより、もっと多いよね?
そんな…すごい数の軍隊が、薩摩藩邸を襲いに来た。
私が今、薩摩藩邸に行けば、きっと殺される。
そういう意味だ。