第七章 小娘、遁走する
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それから私は、カナコとなんか、いろいろ話した。
私の家出はもうばれてるから、父さん母さんが京都府警とかに連絡してたら、ヤバかったのかもしんないけど…。
ほんとはそんなことしてたら、和田さんに迷惑のかかる話だったのかもしんないけど…。
じゃあ幕末行きます、さようならって、カナコを置いといてあっさり飛んで行っちゃう気分にはなれなかった。
私たちは、初めて会った時の話や、ケンカした時の話や、いろんな思い出の話をした。
冗談を言ったり、カナコの好きな映画の話をしたり、私がもうきっと作ることはないだろう料理のレシピの話なんかした。
カナコが絶対言わなかったのは、私が最初に消えた時、どんなふうに探して、どんなに心配してたかって話だったけど…。
それは私も、無理に聞かなかった。
何となく、それって、カナコにはとってもつらい話なんだろうなって思ったから。
なんかいつの間にかお昼になっちゃって、和田さんが特別にランチを作ってくれた。
それは、私が好きなメニューばっかりで、なおかつ、幕末や明治じゃ食材の手に入らないものばっかりで…。
きっとカナコが、こっそり頼んでおいてくれたんだろうなって思ったら…。
ほんとに、ちょっと切なくなってしまった。
しかし、和田さん、異常に料理うまいな。
自家製ブルーベリーヨーグルトなんかつつきながら、よくこんなシンプルなもの、ここまでおいしく作れるよってちょっと思った。
そしてさすがに午後になって…もう行かなくちゃねって、二人のどちらともなく言い出して…。
私たちは、あの、地下神社の前に立ってた。
和田さんは、私たち二人を邪魔してはいけないと思ったのか、少し離れたところで見守ってた。
しめ縄は、もうほどかれてた。和田さんがやったのかな。
カナコは、これを結べばいいだけだから簡単だよねって言って、私の手に、自分の猫のキーホルダーを押し込んだ。
「これさぁ、こないだ渋谷行ったら、まだ売ってたよ。
つか、売れ残ってて、500円が300円になってた」
なんてカナコは言って、無理やり、深刻になっちゃった空気をひっくり返そうとしてた。
「カナコ…なんかほんと…いろいろありがとう…」
私は、そう言うしかなかった。
「ゆう…。最後にもう一回だけ、忠告しとく」
と、カナコは言った。
言ったんだけど…その後、しばらく黙っていた。
言葉を選んでるみたいだった。
「…あのさ、ゆう。また過去に飛んだとしたって、慶応2年に戻れる保証はないわけよ。
そこはわかってる?」
私は答えた。
「うん…それでも、できることはやってみたい」
「下手すれば、命の保証がなくても?」
「かまわない。そんなの、あっちの世界なら、当たり前のことだもの」
カナコは、やれやれと言うように首をふった。
「ほんとに…軽くものを言うわよね。あんた。
マジに、命の保証がないってのはさ…例えば極端な話、旧石器時代に飛んじゃえば、海だよ、ここ。
つか…私がすっごく気になってんのは…。
少なくとも、今のところ、あんたがその大久保さんのところに戻ったって記録はないわけよ。
記録がないってことはさ…。
幕末に戻れなかったか…。
戻っても、大久保さんに会う前に死んじゃったとか…。
嫌な可能性は山ほどあるのよ。
それに…あんたが別の時代に飛んだ可能性は…記録に残ってる」
「へ?」
「あ゛ーっ、鈍いやつ!」
と、カナコはいらいらしながら言った。
「高杉さんの本に、記録残ってたっしょ?
下手すりゃ、あんた、幕末に戻んなくて、奈良時代に飛んでかぐや姫になっちゃうかもしんないって、可能性だってあるわけよ」
私の家出はもうばれてるから、父さん母さんが京都府警とかに連絡してたら、ヤバかったのかもしんないけど…。
ほんとはそんなことしてたら、和田さんに迷惑のかかる話だったのかもしんないけど…。
じゃあ幕末行きます、さようならって、カナコを置いといてあっさり飛んで行っちゃう気分にはなれなかった。
私たちは、初めて会った時の話や、ケンカした時の話や、いろんな思い出の話をした。
冗談を言ったり、カナコの好きな映画の話をしたり、私がもうきっと作ることはないだろう料理のレシピの話なんかした。
カナコが絶対言わなかったのは、私が最初に消えた時、どんなふうに探して、どんなに心配してたかって話だったけど…。
それは私も、無理に聞かなかった。
何となく、それって、カナコにはとってもつらい話なんだろうなって思ったから。
なんかいつの間にかお昼になっちゃって、和田さんが特別にランチを作ってくれた。
それは、私が好きなメニューばっかりで、なおかつ、幕末や明治じゃ食材の手に入らないものばっかりで…。
きっとカナコが、こっそり頼んでおいてくれたんだろうなって思ったら…。
ほんとに、ちょっと切なくなってしまった。
しかし、和田さん、異常に料理うまいな。
自家製ブルーベリーヨーグルトなんかつつきながら、よくこんなシンプルなもの、ここまでおいしく作れるよってちょっと思った。
そしてさすがに午後になって…もう行かなくちゃねって、二人のどちらともなく言い出して…。
私たちは、あの、地下神社の前に立ってた。
和田さんは、私たち二人を邪魔してはいけないと思ったのか、少し離れたところで見守ってた。
しめ縄は、もうほどかれてた。和田さんがやったのかな。
カナコは、これを結べばいいだけだから簡単だよねって言って、私の手に、自分の猫のキーホルダーを押し込んだ。
「これさぁ、こないだ渋谷行ったら、まだ売ってたよ。
つか、売れ残ってて、500円が300円になってた」
なんてカナコは言って、無理やり、深刻になっちゃった空気をひっくり返そうとしてた。
「カナコ…なんかほんと…いろいろありがとう…」
私は、そう言うしかなかった。
「ゆう…。最後にもう一回だけ、忠告しとく」
と、カナコは言った。
言ったんだけど…その後、しばらく黙っていた。
言葉を選んでるみたいだった。
「…あのさ、ゆう。また過去に飛んだとしたって、慶応2年に戻れる保証はないわけよ。
そこはわかってる?」
私は答えた。
「うん…それでも、できることはやってみたい」
「下手すれば、命の保証がなくても?」
「かまわない。そんなの、あっちの世界なら、当たり前のことだもの」
カナコは、やれやれと言うように首をふった。
「ほんとに…軽くものを言うわよね。あんた。
マジに、命の保証がないってのはさ…例えば極端な話、旧石器時代に飛んじゃえば、海だよ、ここ。
つか…私がすっごく気になってんのは…。
少なくとも、今のところ、あんたがその大久保さんのところに戻ったって記録はないわけよ。
記録がないってことはさ…。
幕末に戻れなかったか…。
戻っても、大久保さんに会う前に死んじゃったとか…。
嫌な可能性は山ほどあるのよ。
それに…あんたが別の時代に飛んだ可能性は…記録に残ってる」
「へ?」
「あ゛ーっ、鈍いやつ!」
と、カナコはいらいらしながら言った。
「高杉さんの本に、記録残ってたっしょ?
下手すりゃ、あんた、幕末に戻んなくて、奈良時代に飛んでかぐや姫になっちゃうかもしんないって、可能性だってあるわけよ」