第一章 それぞれの思惑
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とにかく、その夜。私は大久保さんに打ち明けようと思って、遅くまで悩んでいた。
大久保さんが昔の話をしたときのつらそうな顔と、今日見た子どもたちの苦しそうな顔と、両方が交互に思い浮かんで…。
「ええい。何とかなるっ」
と、私は立ち上がった。
で、大久保さんの部屋に行こうと、自分の部屋を出たとたん…。
あの騒ぎが起きた。
龍馬さんたちが襲われたと言って、怪我をした慎ちゃんが藩邸に飛び込んで来たんだ。
その途端、藩邸の中はものすごい緊張に包まれて、皆が、自分たちの持ち場の仕事をするために、せかせかと動き出した。
その後のことは、今書こうとしている話の筋とは関係がないので、細かくは書かないけれど…。
とにかく、私の悩み事など、言い出すような事態ではなくなってしまった。
間もなく、龍馬さん、以蔵、武市さんが意識がないまま、運び込まれてきた。
3人の容体はそれぞれ違ったけど…、皆、なんとか命には別条がないけど、それでもけっこう深刻な状態だった。
私は、お医者様を手伝って、道具を消毒したり、3人の汚れや汗を拭いたりした。
大久保さんはそれを見て、不器用な小娘にしては妙に手馴れていると、不思議そうな顔をしていた。
4人が藩邸に逃げ込んできたことは、新選組にも知られてしまっていた。
だから、大久保さんと西郷さんは、皆が小康状態になったら、船で薩摩に逃がす…と決めた。
西郷さんはもともと、同盟が結ばれたら薩摩に戻る予定だったから、4人と一緒に薩摩に戻るのには、問題がなかった。
大久保さんは、京都でまだまだ仕事があるから残ると言った。
京都はもう危険だから、小娘も一緒に薩摩に行けって言われたけど…。
危険なのに、大久保さんを一人残して、薩摩に行くなんて、嫌だった。
それに…その…ちょっと不安になっちゃったんだよね。
考えてみれば、当たり前の話なんだけど…薩摩に行ったら、大久保さんの実家に泊めてもらえって言われて…。
えっ…私ひとりでですか…って…?
薩摩は保守的な土地柄だから、いくら心配だからって、土佐の独身男性4人組と、私が行動を共にするわけにはいかないって…言われちゃいました。
西郷さんちに泊めてもらうのもOKだけど、同じ町内だから、大久保さんの親族には挨拶しないといけないって言われて…。
私…今の自分の立場って…すっごい微妙だなあ…って思っちゃいました。
あんまりそういうのわかんないけど…二十一世紀だって、わりと地方の旧家のとこに、今までずっと結婚しようとしなかった跡取り息子の恋人ですって、一回りくらい年下の女の子だけ一人でぽっと訪ねて行ったら、親戚中ひっくり返るような大騒ぎになるよね。きっと。
なんかやっぱ不安かも…。
そりゃ、そんなこと言ってる場合じゃないってのは、わかるんだけど。
大久保さんが昔の話をしたときのつらそうな顔と、今日見た子どもたちの苦しそうな顔と、両方が交互に思い浮かんで…。
「ええい。何とかなるっ」
と、私は立ち上がった。
で、大久保さんの部屋に行こうと、自分の部屋を出たとたん…。
あの騒ぎが起きた。
龍馬さんたちが襲われたと言って、怪我をした慎ちゃんが藩邸に飛び込んで来たんだ。
その途端、藩邸の中はものすごい緊張に包まれて、皆が、自分たちの持ち場の仕事をするために、せかせかと動き出した。
その後のことは、今書こうとしている話の筋とは関係がないので、細かくは書かないけれど…。
とにかく、私の悩み事など、言い出すような事態ではなくなってしまった。
間もなく、龍馬さん、以蔵、武市さんが意識がないまま、運び込まれてきた。
3人の容体はそれぞれ違ったけど…、皆、なんとか命には別条がないけど、それでもけっこう深刻な状態だった。
私は、お医者様を手伝って、道具を消毒したり、3人の汚れや汗を拭いたりした。
大久保さんはそれを見て、不器用な小娘にしては妙に手馴れていると、不思議そうな顔をしていた。
4人が藩邸に逃げ込んできたことは、新選組にも知られてしまっていた。
だから、大久保さんと西郷さんは、皆が小康状態になったら、船で薩摩に逃がす…と決めた。
西郷さんはもともと、同盟が結ばれたら薩摩に戻る予定だったから、4人と一緒に薩摩に戻るのには、問題がなかった。
大久保さんは、京都でまだまだ仕事があるから残ると言った。
京都はもう危険だから、小娘も一緒に薩摩に行けって言われたけど…。
危険なのに、大久保さんを一人残して、薩摩に行くなんて、嫌だった。
それに…その…ちょっと不安になっちゃったんだよね。
考えてみれば、当たり前の話なんだけど…薩摩に行ったら、大久保さんの実家に泊めてもらえって言われて…。
えっ…私ひとりでですか…って…?
薩摩は保守的な土地柄だから、いくら心配だからって、土佐の独身男性4人組と、私が行動を共にするわけにはいかないって…言われちゃいました。
西郷さんちに泊めてもらうのもOKだけど、同じ町内だから、大久保さんの親族には挨拶しないといけないって言われて…。
私…今の自分の立場って…すっごい微妙だなあ…って思っちゃいました。
あんまりそういうのわかんないけど…二十一世紀だって、わりと地方の旧家のとこに、今までずっと結婚しようとしなかった跡取り息子の恋人ですって、一回りくらい年下の女の子だけ一人でぽっと訪ねて行ったら、親戚中ひっくり返るような大騒ぎになるよね。きっと。
なんかやっぱ不安かも…。
そりゃ、そんなこと言ってる場合じゃないってのは、わかるんだけど。