第六章 カナコ
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私は少し考えた。
なんかよくわかんないけど。
「歴史知識をこねくり回しても、事件を確実に防ぐ方法はない…かぁ…」
ちょっと間抜けな声だったかな?
カナコは、あれ?って顔で私を見た。ちょっと予想と違ったぞって表情。
でも結局それって、未来の人間だからってだけで、自分が過去の人間より価値があると思うなって、大久保さんが、いつも言ってたのと同じだしなぁ。
「どっちにしたって、私、歴史知識ないもん。こねくり回せないよ」
カナコは吹き出した。
「…あんた、最強だよ」
「へ?」
ほめられたのかな?ほめられてない気がする。
「ほんとあんたって、上から目線の発想とは無縁っつか…。
大久保さんを『助ける』とか絶対言わないよね」
「そんなこと言ったら、速攻で『要らん。余計なお世話だ』って言われるもん」
「言えてるかも…」
と、カナコは笑った。それから、ちょっと真面目な顔になった。
「だいたいさぁ、亡くなる前の大久保さんの行動って、ちょっと変なのよ。
大久保さん、暗殺計画を聞いてたのに、がんとして警備をつけようとしなかった。
でもって、几帳面なくらい決まった日、決まった時間に同じルートを通ってる。
しかも、食違見附のある紀尾井坂とか、暗殺者側から見たら、東京の中でもこれ以上ないくらい狙いやすい道だよ?
そりゃ、今と違ってSPマニュアルとかないけどさ。不用心すぎるよ」
「それって…土地勘ないから、危険に気づかなかったってこと?」
「気づいてたはずだよ。同じ場所、4年前に岩倉さんが襲われてる。その上で、あの道を選んだんだ」
「…どういうこと?」
なんか嫌な予感がする。きっと嫌な話だ。
「他にも、変なことはいっぱいあるんだ。
西郷さんが下野してからの大久保さん、自分の命にぜんぜん頓着しない行動が多い。
まるで…やらなきゃいけない仕事があるから生きてるけど、本当は誰かに殺してほしい…とでも考えてんじゃないかってくらい。
それは、私の想像だけどね」
「やっぱり…」
「え?」
私は、またちょっと腹が立ってしまった。
「その発想さ…。
正助君が妹たちに食べさせるためにぎりぎりの状態で生きてるけど、本音じゃ憑り殺してほしいとかなんとか、弱音吐いてた。あれと同じ。
なによもう、ほんとに進歩がないったら…。
なんつか、歴史知識とかどうでもいいから、とにかく私、飛んで行って説教してやらないと気が済まないよ」
カナコはそれを聞いてくすくす笑い出した。
「やっぱ、あんた、いいわ。最高」
「何よっ」
カナコはまあまあ…というふうに、手をひらひらさせた。
「ほめてんだから、怒らない、怒らない。
要は、そういうことよ。
たまたま未来に生まれ育ったってだけの、ただの女子高生のあたしらがさ、歴史に名を残すような日本最高の人材の運命を、たかだか歴史ムックに載ってる程度の知識で『助けよう』とかって、おこがましいんだって。
本当に大久保さんに幸せになってほしいんならさ、大久保さん自身に未来を切り開いてもらうしかないわけよ。
つまり、あの人が自分から変わろうと思わなきゃだめなわけ。
そうして、世間に誤解されやすくて、自分から憎まれ役になっちゃうような…暗殺のターゲットになりやすい性格を変えていただかないと。
まあ、大人になってからの性格なんて、よっぽどのことがないと変わんないけどさ」
なんか、カナコの言いたいことが、わかった気がする。
「よっぽどのこと…って…」
「惚れた女の影響、しかないっしょ。ベタだけどさ。
もしあんたが幕末に戻れたとしたら、だよ。
で、あんたが考えているように、大久保さんのあの憎まれ役になりたがる性格の原因が昔の心の傷だとしたら…。
あんたがその傷をどれだけ癒せるか…。
ごくふつうの幸せな、あったかい会話ってやつに、浴びるほど触れさせて…。
憎まれ役にならなくてもいい、誰でも愛される資格はあるってことを、心の底から実感してもらえるような家庭を作って…。
頭がよすぎて、どうせ理解してもらえないと一人で突っ走るなら…。
お馬鹿な小娘として、大久保さんの話を辛抱強く聞いて、お馬鹿でもわかるレベルの言葉を引っ張り出して…。
その言葉を周囲や世間に伝えて、大久保さんの気持ちはこうなんだって、理解してもらうように働きかけて…。
そうやって、あんたがどこまで支えていくことができるかが、結局、悲劇を防げるかどうかの勝負の分かれ目なんだと思う」
なんかよくわかんないけど。
「歴史知識をこねくり回しても、事件を確実に防ぐ方法はない…かぁ…」
ちょっと間抜けな声だったかな?
カナコは、あれ?って顔で私を見た。ちょっと予想と違ったぞって表情。
でも結局それって、未来の人間だからってだけで、自分が過去の人間より価値があると思うなって、大久保さんが、いつも言ってたのと同じだしなぁ。
「どっちにしたって、私、歴史知識ないもん。こねくり回せないよ」
カナコは吹き出した。
「…あんた、最強だよ」
「へ?」
ほめられたのかな?ほめられてない気がする。
「ほんとあんたって、上から目線の発想とは無縁っつか…。
大久保さんを『助ける』とか絶対言わないよね」
「そんなこと言ったら、速攻で『要らん。余計なお世話だ』って言われるもん」
「言えてるかも…」
と、カナコは笑った。それから、ちょっと真面目な顔になった。
「だいたいさぁ、亡くなる前の大久保さんの行動って、ちょっと変なのよ。
大久保さん、暗殺計画を聞いてたのに、がんとして警備をつけようとしなかった。
でもって、几帳面なくらい決まった日、決まった時間に同じルートを通ってる。
しかも、食違見附のある紀尾井坂とか、暗殺者側から見たら、東京の中でもこれ以上ないくらい狙いやすい道だよ?
そりゃ、今と違ってSPマニュアルとかないけどさ。不用心すぎるよ」
「それって…土地勘ないから、危険に気づかなかったってこと?」
「気づいてたはずだよ。同じ場所、4年前に岩倉さんが襲われてる。その上で、あの道を選んだんだ」
「…どういうこと?」
なんか嫌な予感がする。きっと嫌な話だ。
「他にも、変なことはいっぱいあるんだ。
西郷さんが下野してからの大久保さん、自分の命にぜんぜん頓着しない行動が多い。
まるで…やらなきゃいけない仕事があるから生きてるけど、本当は誰かに殺してほしい…とでも考えてんじゃないかってくらい。
それは、私の想像だけどね」
「やっぱり…」
「え?」
私は、またちょっと腹が立ってしまった。
「その発想さ…。
正助君が妹たちに食べさせるためにぎりぎりの状態で生きてるけど、本音じゃ憑り殺してほしいとかなんとか、弱音吐いてた。あれと同じ。
なによもう、ほんとに進歩がないったら…。
なんつか、歴史知識とかどうでもいいから、とにかく私、飛んで行って説教してやらないと気が済まないよ」
カナコはそれを聞いてくすくす笑い出した。
「やっぱ、あんた、いいわ。最高」
「何よっ」
カナコはまあまあ…というふうに、手をひらひらさせた。
「ほめてんだから、怒らない、怒らない。
要は、そういうことよ。
たまたま未来に生まれ育ったってだけの、ただの女子高生のあたしらがさ、歴史に名を残すような日本最高の人材の運命を、たかだか歴史ムックに載ってる程度の知識で『助けよう』とかって、おこがましいんだって。
本当に大久保さんに幸せになってほしいんならさ、大久保さん自身に未来を切り開いてもらうしかないわけよ。
つまり、あの人が自分から変わろうと思わなきゃだめなわけ。
そうして、世間に誤解されやすくて、自分から憎まれ役になっちゃうような…暗殺のターゲットになりやすい性格を変えていただかないと。
まあ、大人になってからの性格なんて、よっぽどのことがないと変わんないけどさ」
なんか、カナコの言いたいことが、わかった気がする。
「よっぽどのこと…って…」
「惚れた女の影響、しかないっしょ。ベタだけどさ。
もしあんたが幕末に戻れたとしたら、だよ。
で、あんたが考えているように、大久保さんのあの憎まれ役になりたがる性格の原因が昔の心の傷だとしたら…。
あんたがその傷をどれだけ癒せるか…。
ごくふつうの幸せな、あったかい会話ってやつに、浴びるほど触れさせて…。
憎まれ役にならなくてもいい、誰でも愛される資格はあるってことを、心の底から実感してもらえるような家庭を作って…。
頭がよすぎて、どうせ理解してもらえないと一人で突っ走るなら…。
お馬鹿な小娘として、大久保さんの話を辛抱強く聞いて、お馬鹿でもわかるレベルの言葉を引っ張り出して…。
その言葉を周囲や世間に伝えて、大久保さんの気持ちはこうなんだって、理解してもらうように働きかけて…。
そうやって、あんたがどこまで支えていくことができるかが、結局、悲劇を防げるかどうかの勝負の分かれ目なんだと思う」