第六章 カナコ
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「だからさ、私が言いたいのは、こういうことよ」
と、カナコはもうひとつ、図を描いた。
「神社があるのとないのと、2つの未来がどうも存在してるみたいだ…って考えると。
他のことに関してだって、複数の未来があっていいじゃんって話になる。
たとえば、こんな感じ」
「何か、さっきよりよくわかんない図だね」
ちらり、とカナコは上目づかいに私を見た。
「お気楽なやつ」
「何よ」
「あたしが言いたいのはさ…。
あんたが、また幕末に戻れたとする。
で、何かをやって、うまいこと分岐点を発生させられたとする。
そすっと…今、私らが歴史の教科書で習ってるのとは、違う未来になるかもしんないってこと」
「…え?」
カナコは、なんかすごくもじもじしながら言った。
「だからさ、あくまでも私が勝手に考えた理屈ではそうなるって話だけどねっ。
あんたが幕末に行ったことで、神社がひとつ無くなったんなら…。
1878年に大久保さんが殺されるって事件だって、無かったことにできるかもしんない」
あ…。
私は、カナコの顔を見た。
「…ほんとに?」
「あくまでも、理論上の話。それも、たかだか女子高生の考えた理論だから、あんまり期待されても困るけどね」
カナコはそこまで言って、何だかすごく機嫌悪そうに、口を尖らせた。
「それに…こと、紀尾井坂の変に関しては、日付と時間を知ってるとか程度の歴史知識があったって、防げないと思う。
いろいろ考えたけど、この事件、構造的な問題過ぎてさ。
それこそ、大久保さんの言ってたように、私らが未来の人間だからと言って、過去の人たちが一生懸命に頑張ってもうまくいかなかったことを、片手間に出来るなんて考えるなって話になっちゃうけど。
私らには歴史知識があるから、過去の人たちと違って、人を救えるのよなんて、お気楽な話じゃないと思うよ」
私は、カナコの言っていることが理解できなかった。
「でも…日付がわかってるんだし…ちゃんと歴史勉強して…危ない日とか、道順を避ければ…」
「そんな小手先の細工じゃ、ダメだと思うよ。
相手も脳みそのある人間だからね。その日、阻止したって、別の日に計画変更するだけだったと思う。
もし、その人たちを事前に逮捕できてたとしても…仲間いたから…すごいたくさんの人に恨み買ってたから…別の人たちに襲われてたと思う」。
それから、カナコは私を見て、少しきつい声で続けた。
「だったら半次郎さんの真似して、大久保さんの護衛気取りでついて歩くとか思ってないでしょうね?
…いくらあんたが剣道できても、集団で取り囲まれて、真剣振り下ろされたら、勝てないよ」
「でも…そんなこと言ったって…」
私は納得がいかなかった。
カナコは、少し苦々しげに言った。
「それにさ…スズミが言ってたの覚えてるよね。
龍馬さんと慎ちゃんの襲われた事件の…陰で糸を引いてたのは、大久保さんだってことになってる歴史小説とかドラマって、確かに多いんだよ。
あたしはあんたと同じで、そんな説、まともに信じる気はないけどさ。
でも、もし、過去にタイムスリップして龍馬さんたちを救いたいって思ってる人がさ、それが正しい歴史知識だと信じてれば…。
当然、大久保さんさえいなくなれば、龍馬さんと慎ちゃんを救えるだろうとか考えかねないわけよ。
私らが、今の時代に入手できる歴史知識なんて、その程度のあやふやなもんなのよ。
しょせん、昔に書かれたものをひっくり返して、きっとこうだろうって考えてるだけだからね。
その時代に本人とじかに接して、周辺の事情を熟知している人から見たら、すっごいトンチンカンなことしちゃう可能性の方が、よっぽど高いわけ。
あんたがそんなものをこねくり回して、歴史を変えるとか言うつもりなら…ごめん、ただ危険なだけで意味はないと思うから、私は協力しない」
協力しない…って…。
なぜカナコは、もう、帰れるって前提で話してんだろ。
「でも…日付とか背景とかの歴史知識集めて、事件を防ぐってのがダメなら…。
あと、方法ってないじゃん」
カナコはため息をついた。
「そういうこと。大久保さんの事件については、確実に防ぐ方法なんてない。それが私の結論」
と、カナコはもうひとつ、図を描いた。
「神社があるのとないのと、2つの未来がどうも存在してるみたいだ…って考えると。
他のことに関してだって、複数の未来があっていいじゃんって話になる。
たとえば、こんな感じ」
「何か、さっきよりよくわかんない図だね」
ちらり、とカナコは上目づかいに私を見た。
「お気楽なやつ」
「何よ」
「あたしが言いたいのはさ…。
あんたが、また幕末に戻れたとする。
で、何かをやって、うまいこと分岐点を発生させられたとする。
そすっと…今、私らが歴史の教科書で習ってるのとは、違う未来になるかもしんないってこと」
「…え?」
カナコは、なんかすごくもじもじしながら言った。
「だからさ、あくまでも私が勝手に考えた理屈ではそうなるって話だけどねっ。
あんたが幕末に行ったことで、神社がひとつ無くなったんなら…。
1878年に大久保さんが殺されるって事件だって、無かったことにできるかもしんない」
あ…。
私は、カナコの顔を見た。
「…ほんとに?」
「あくまでも、理論上の話。それも、たかだか女子高生の考えた理論だから、あんまり期待されても困るけどね」
カナコはそこまで言って、何だかすごく機嫌悪そうに、口を尖らせた。
「それに…こと、紀尾井坂の変に関しては、日付と時間を知ってるとか程度の歴史知識があったって、防げないと思う。
いろいろ考えたけど、この事件、構造的な問題過ぎてさ。
それこそ、大久保さんの言ってたように、私らが未来の人間だからと言って、過去の人たちが一生懸命に頑張ってもうまくいかなかったことを、片手間に出来るなんて考えるなって話になっちゃうけど。
私らには歴史知識があるから、過去の人たちと違って、人を救えるのよなんて、お気楽な話じゃないと思うよ」
私は、カナコの言っていることが理解できなかった。
「でも…日付がわかってるんだし…ちゃんと歴史勉強して…危ない日とか、道順を避ければ…」
「そんな小手先の細工じゃ、ダメだと思うよ。
相手も脳みそのある人間だからね。その日、阻止したって、別の日に計画変更するだけだったと思う。
もし、その人たちを事前に逮捕できてたとしても…仲間いたから…すごいたくさんの人に恨み買ってたから…別の人たちに襲われてたと思う」。
それから、カナコは私を見て、少しきつい声で続けた。
「だったら半次郎さんの真似して、大久保さんの護衛気取りでついて歩くとか思ってないでしょうね?
…いくらあんたが剣道できても、集団で取り囲まれて、真剣振り下ろされたら、勝てないよ」
「でも…そんなこと言ったって…」
私は納得がいかなかった。
カナコは、少し苦々しげに言った。
「それにさ…スズミが言ってたの覚えてるよね。
龍馬さんと慎ちゃんの襲われた事件の…陰で糸を引いてたのは、大久保さんだってことになってる歴史小説とかドラマって、確かに多いんだよ。
あたしはあんたと同じで、そんな説、まともに信じる気はないけどさ。
でも、もし、過去にタイムスリップして龍馬さんたちを救いたいって思ってる人がさ、それが正しい歴史知識だと信じてれば…。
当然、大久保さんさえいなくなれば、龍馬さんと慎ちゃんを救えるだろうとか考えかねないわけよ。
私らが、今の時代に入手できる歴史知識なんて、その程度のあやふやなもんなのよ。
しょせん、昔に書かれたものをひっくり返して、きっとこうだろうって考えてるだけだからね。
その時代に本人とじかに接して、周辺の事情を熟知している人から見たら、すっごいトンチンカンなことしちゃう可能性の方が、よっぽど高いわけ。
あんたがそんなものをこねくり回して、歴史を変えるとか言うつもりなら…ごめん、ただ危険なだけで意味はないと思うから、私は協力しない」
協力しない…って…。
なぜカナコは、もう、帰れるって前提で話してんだろ。
「でも…日付とか背景とかの歴史知識集めて、事件を防ぐってのがダメなら…。
あと、方法ってないじゃん」
カナコはため息をついた。
「そういうこと。大久保さんの事件については、確実に防ぐ方法なんてない。それが私の結論」