第六章 カナコ
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カナコがあんまり思わせぶりなことを言うから…。
私は、もっと詳しく尋ねてみたかったんだけど。
いつの間にか私たちは、うちの道場の入口近くまで来ちゃってた。
「まあさ、とりあえず今週末、また京都に行くよ」
と、突然カナコは宣言した。
「え…」
「切符と宿は、こっちで手配するから。
さすがに指定席は贅沢だから、土曜始発の新幹線、禁煙席自由席っつーことで。宿は適当に女性向けで安いやつ、探しとく」
「あの…」
「何よ?」
「新幹線だと、お小遣い足りないかも…」
「ああ。お金は心配しなくていいよ。大叔母様からたっぷり軍資金をいただいてるんだ。
もっとも、毎日、領収書付きで収支報告書出せとか言われてんだけどねえ…。まったくお堅い人だからさ。
それより、あんたは、家族の説得をちゃんとしなさい。この時期にまた京都って、絶対反対されるに決まってるっしょ」
なんかよくわかんないけど、カナコんちでも、今度のことは、すごい大騒ぎになってるみたいだ。
「あの、それって…」
と、私は聞きかけたんだけど、それにかぶせて、もっと大きな声がした。
「お前たち二人、何をよからぬ相談をしているんだ」
そっちを見ると、道場の門の前で、おじいちゃんが少しイラついた顔をして立っていた。
私が遅いから、迎えに出ようとしてたみたい。
「だいたい、こんな夜中まで何をやっているんだ、ゆう。
お前のことだから、別にやましいことはしていないとは思うがな。
今は家の中に、ひどく心配性になっている人間が2人もいるんだ。
少し気を使ってやれ」
「ご…ごめんなさいっ」
私は思わず下を向いてしまった。
やばいな…。確かに、今ごろ、父さんがキレちゃったり、母さんがへたりこんだりしてるかも。
だけど…。
「申し訳ありませんでした」
私の横で、ひどくきっぱりした声が聞こえた。
えっ、とそちらを見ると、カナコがおじいちゃんに、頭を下げていた。
な…なんで?
「か…カナコが悪いんじゃないよっ」
カナコはそれを無視して、おじいちゃんに言った。
「先日は私の不注意で、京都であんなご迷惑をおかけしておきながら、また、ゆうを夜中に連れ出すような真似をして、申し訳ありません。
考えあってやったことですが、今日は時間も遅いですし、いずれ、日を改めて出直して、きちんとご説明させていただきます」
カナコはいつも、まるでおじいちゃんのもうひとりの孫みたいに、親しげに話すのに…。
今日は何だか、別人みたいに礼儀正しかった。
何ていうか…女中頭さんが大久保さんに接してた時みたいに、折り目正しい態度。
おじいちゃんも、びっくりしてた。
「いや…そこまで丁寧に詫びられては…却ってこちらが申し訳ない…」
カナコは、顔を上げてにっ、と笑った。何を考えているのか、よくわからない笑み。
「重ね重ね、勝手を言って申し訳ありませんが…どうしても、ゆうを京都に行かせたい理由があるんです。
その…ゆうのご両親は、この時期に何を、とお怒りになるかもしれませんが…。
ぜひ、おじい様からもお口添えをお願いします」
あの…なんでそんなに大仰な…まるで私を嫁にでももらうみたいな話し方になっちゃってるわけ?
頭の中で、クエスチョンマークが大量発生してしまった。
「よく、わからんが…」とおじいちゃんが言いながら、私を見た。
ううん、私もわかんない、と私は首をふって見せた。
「まあ、カナちゃんと一緒なら、旅行ぐらいは問題がないとは思うが…。
今日はもう遅い。明日にでもゆうから返事をさせるから、しばらく待っていてくれ」
おお、なんか大人の対応だなあ…というセリフをおじいちゃんは言った。
カナコは、もう一回、まるでマナー教室のお手本みたいなきれいなお辞儀をすると、にこっ、と私に笑いかけて
「じゃ、ゆう、またね」
と、軽く手を振りながら去って行った。
な、何だったんだろう…。
よくわかんないまま、私が家に入ろうとすると、おじいちゃんが言った。
「で、ゆう。お前、何かでっかい秘密を、私に隠しているだろう」
私は、もっと詳しく尋ねてみたかったんだけど。
いつの間にか私たちは、うちの道場の入口近くまで来ちゃってた。
「まあさ、とりあえず今週末、また京都に行くよ」
と、突然カナコは宣言した。
「え…」
「切符と宿は、こっちで手配するから。
さすがに指定席は贅沢だから、土曜始発の新幹線、禁煙席自由席っつーことで。宿は適当に女性向けで安いやつ、探しとく」
「あの…」
「何よ?」
「新幹線だと、お小遣い足りないかも…」
「ああ。お金は心配しなくていいよ。大叔母様からたっぷり軍資金をいただいてるんだ。
もっとも、毎日、領収書付きで収支報告書出せとか言われてんだけどねえ…。まったくお堅い人だからさ。
それより、あんたは、家族の説得をちゃんとしなさい。この時期にまた京都って、絶対反対されるに決まってるっしょ」
なんかよくわかんないけど、カナコんちでも、今度のことは、すごい大騒ぎになってるみたいだ。
「あの、それって…」
と、私は聞きかけたんだけど、それにかぶせて、もっと大きな声がした。
「お前たち二人、何をよからぬ相談をしているんだ」
そっちを見ると、道場の門の前で、おじいちゃんが少しイラついた顔をして立っていた。
私が遅いから、迎えに出ようとしてたみたい。
「だいたい、こんな夜中まで何をやっているんだ、ゆう。
お前のことだから、別にやましいことはしていないとは思うがな。
今は家の中に、ひどく心配性になっている人間が2人もいるんだ。
少し気を使ってやれ」
「ご…ごめんなさいっ」
私は思わず下を向いてしまった。
やばいな…。確かに、今ごろ、父さんがキレちゃったり、母さんがへたりこんだりしてるかも。
だけど…。
「申し訳ありませんでした」
私の横で、ひどくきっぱりした声が聞こえた。
えっ、とそちらを見ると、カナコがおじいちゃんに、頭を下げていた。
な…なんで?
「か…カナコが悪いんじゃないよっ」
カナコはそれを無視して、おじいちゃんに言った。
「先日は私の不注意で、京都であんなご迷惑をおかけしておきながら、また、ゆうを夜中に連れ出すような真似をして、申し訳ありません。
考えあってやったことですが、今日は時間も遅いですし、いずれ、日を改めて出直して、きちんとご説明させていただきます」
カナコはいつも、まるでおじいちゃんのもうひとりの孫みたいに、親しげに話すのに…。
今日は何だか、別人みたいに礼儀正しかった。
何ていうか…女中頭さんが大久保さんに接してた時みたいに、折り目正しい態度。
おじいちゃんも、びっくりしてた。
「いや…そこまで丁寧に詫びられては…却ってこちらが申し訳ない…」
カナコは、顔を上げてにっ、と笑った。何を考えているのか、よくわからない笑み。
「重ね重ね、勝手を言って申し訳ありませんが…どうしても、ゆうを京都に行かせたい理由があるんです。
その…ゆうのご両親は、この時期に何を、とお怒りになるかもしれませんが…。
ぜひ、おじい様からもお口添えをお願いします」
あの…なんでそんなに大仰な…まるで私を嫁にでももらうみたいな話し方になっちゃってるわけ?
頭の中で、クエスチョンマークが大量発生してしまった。
「よく、わからんが…」とおじいちゃんが言いながら、私を見た。
ううん、私もわかんない、と私は首をふって見せた。
「まあ、カナちゃんと一緒なら、旅行ぐらいは問題がないとは思うが…。
今日はもう遅い。明日にでもゆうから返事をさせるから、しばらく待っていてくれ」
おお、なんか大人の対応だなあ…というセリフをおじいちゃんは言った。
カナコは、もう一回、まるでマナー教室のお手本みたいなきれいなお辞儀をすると、にこっ、と私に笑いかけて
「じゃ、ゆう、またね」
と、軽く手を振りながら去って行った。
な、何だったんだろう…。
よくわかんないまま、私が家に入ろうとすると、おじいちゃんが言った。
「で、ゆう。お前、何かでっかい秘密を、私に隠しているだろう」