第五章 ファントム
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カナコは、人差し指をちょっとふって、得意げに言った。
「まあ、あんたの彼氏ってのは、惚れた女がまた危険に飛び込んで来ないようにって、先回りして神社ひとつ消滅させちゃうくらい、とんでもない力を持ってた人だった訳だけど。
それと張り合うくらい、力のある人は、明治にはもう一人いたじゃない?
その人が、あんたがやっぱり帰りたいって思ったときのために、ちょっと味方してやろうかなあ…なんて思ってたとしたら、どうする?」
「味方…?」
カナコはため息をついた。
「ほんと、あんたの歴史の知識の無さってさ、そこまで行くと運命的なものを感じちゃうわ。
…私のフルネームを考えたら、ふつうそこで気づくもんなんだけどね」
「フルネームって…」
「そ。でも、私があんたと仲良くなったのって、あんたが気に入ったからだからねっ。
そもそも、こないだ、あんたと写ってる動画をたまたま本家の大叔母様に見られてさ。呼びつけられるまで、私も知らなかった。
つか、あんときも、他人のそら似ってあるんだなあ…名前まで同じなんて、すごい偶然って思っただけだけどさ。
ま、もっとも、うちの高校って入学当初の席順、入試でトップだった子と最下位の子が隣で、2位だった子と下から2位だった子が隣って並べる伝統があるから…。
あんたと席が近くて仲良くなったのが完全に偶然かどうかってのは…いや、その話はツッコまないことにしとこ…」
と、なんかカナコはセリフの最後をごにょごにょと濁らせた。
「何の話?」
「あんたが京都のアンティークショップで見つけた写真だけどね。
あれ、同時に何枚も撮影してさ、知り合いに配りまくったでしょ?
山口県にあるうちの本家の土蔵にも、一枚残ってるのよ。写真の裏に手紙がついてるのも同じ。
ただし、こっちの手紙はあんた宛じゃない。子孫…つまりあたしら宛てで、書いたのも大久保さんじゃなくて、うちのご本家の何代か前の当主」
「何代か前の当主って…」
「うん。そこまで言っても、気づかないか。まあ、あんたはそういう人だから、タイムスリップしたのかな、と思うけどさ」
「カナコのフルネームって…木戸カナコ…だよね…」
はああ…とカナコはまたため息をついた。
「何、その反応の薄さ。やんなっちゃう」
なんかやっぱり、カナコとお琴さんって似てるな…。
私がそう言ったら、カナコは笑った。
「ま、似てるかもね。うちのご先祖も某藩情報収集担当だったわけだし」
「へ?」
「山口っつったら、長州藩だけどさ」
「ええっ?」
「つまりさ。何代か前の当主っつーのは、木戸孝允」
カナコは、両腰にこぶしを当てて、少し怒った声で言った。
「だーっ。もう、いい加減、気づきなさいよっ。
こう言や、わかるでしょ。…長州藩情報収集担当、桂小五郎」
「は?」
カナコはちょっと得意げにもったいをつけて言うと、付け加えた。
「…そこ。子孫の割りに、私は美形じゃないとか思ったんだったら、殴るからね。
ま、直系じゃないから、すっごく血は遠いんだけどさ」
え…。
えええええええーーーーーーーっ!!
「かっ…カナコんち…かかかか桂さんと親戚?」
「まあね」
…とカナコは言った。
「あんたって、ほんとなかなか気づかないけど、その後のド派手な反応を見ると、なんか助けがいがあるかもって思っちゃうんだよねえ」
私は、また、高杉さんの最後に会った時の言葉を思い出していた。
--- ま、小五郎には、分かったみたいだからな。困ったときは、こいつか、こいつの手の者を探せ。
桂さんには、何がわかったって言うんだろう。
そして、今、困っている私の前に、桂さんが百何十年もかけて送り込んだ手の者…カナコが現れたってわけ?
「まあ、あんたの彼氏ってのは、惚れた女がまた危険に飛び込んで来ないようにって、先回りして神社ひとつ消滅させちゃうくらい、とんでもない力を持ってた人だった訳だけど。
それと張り合うくらい、力のある人は、明治にはもう一人いたじゃない?
その人が、あんたがやっぱり帰りたいって思ったときのために、ちょっと味方してやろうかなあ…なんて思ってたとしたら、どうする?」
「味方…?」
カナコはため息をついた。
「ほんと、あんたの歴史の知識の無さってさ、そこまで行くと運命的なものを感じちゃうわ。
…私のフルネームを考えたら、ふつうそこで気づくもんなんだけどね」
「フルネームって…」
「そ。でも、私があんたと仲良くなったのって、あんたが気に入ったからだからねっ。
そもそも、こないだ、あんたと写ってる動画をたまたま本家の大叔母様に見られてさ。呼びつけられるまで、私も知らなかった。
つか、あんときも、他人のそら似ってあるんだなあ…名前まで同じなんて、すごい偶然って思っただけだけどさ。
ま、もっとも、うちの高校って入学当初の席順、入試でトップだった子と最下位の子が隣で、2位だった子と下から2位だった子が隣って並べる伝統があるから…。
あんたと席が近くて仲良くなったのが完全に偶然かどうかってのは…いや、その話はツッコまないことにしとこ…」
と、なんかカナコはセリフの最後をごにょごにょと濁らせた。
「何の話?」
「あんたが京都のアンティークショップで見つけた写真だけどね。
あれ、同時に何枚も撮影してさ、知り合いに配りまくったでしょ?
山口県にあるうちの本家の土蔵にも、一枚残ってるのよ。写真の裏に手紙がついてるのも同じ。
ただし、こっちの手紙はあんた宛じゃない。子孫…つまりあたしら宛てで、書いたのも大久保さんじゃなくて、うちのご本家の何代か前の当主」
「何代か前の当主って…」
「うん。そこまで言っても、気づかないか。まあ、あんたはそういう人だから、タイムスリップしたのかな、と思うけどさ」
「カナコのフルネームって…木戸カナコ…だよね…」
はああ…とカナコはまたため息をついた。
「何、その反応の薄さ。やんなっちゃう」
なんかやっぱり、カナコとお琴さんって似てるな…。
私がそう言ったら、カナコは笑った。
「ま、似てるかもね。うちのご先祖も某藩情報収集担当だったわけだし」
「へ?」
「山口っつったら、長州藩だけどさ」
「ええっ?」
「つまりさ。何代か前の当主っつーのは、木戸孝允」
カナコは、両腰にこぶしを当てて、少し怒った声で言った。
「だーっ。もう、いい加減、気づきなさいよっ。
こう言や、わかるでしょ。…長州藩情報収集担当、桂小五郎」
「は?」
カナコはちょっと得意げにもったいをつけて言うと、付け加えた。
「…そこ。子孫の割りに、私は美形じゃないとか思ったんだったら、殴るからね。
ま、直系じゃないから、すっごく血は遠いんだけどさ」
え…。
えええええええーーーーーーーっ!!
「かっ…カナコんち…かかかか桂さんと親戚?」
「まあね」
…とカナコは言った。
「あんたって、ほんとなかなか気づかないけど、その後のド派手な反応を見ると、なんか助けがいがあるかもって思っちゃうんだよねえ」
私は、また、高杉さんの最後に会った時の言葉を思い出していた。
--- ま、小五郎には、分かったみたいだからな。困ったときは、こいつか、こいつの手の者を探せ。
桂さんには、何がわかったって言うんだろう。
そして、今、困っている私の前に、桂さんが百何十年もかけて送り込んだ手の者…カナコが現れたってわけ?