第五章 ファントム
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「あのー」
と、今までぽかんと黙って聞いていたスズミが、ひどくのんびりした声で言った。
「なんでそんなに深刻に話してるの?
西郷と大久保って…日本史の話だよね?
ふたりとも…なんかすっごい感情移入しちゃってるけど…ファンなわけ?」
スズミの声で、ふっと現実に引き戻された。
そして、また、思い知らされる。
これはすべて、百年以上前に終わったことなんだ。
例え私が知っても、何もすることはできない。
私がそんなことを考えているとも知らず、スズミは、ドラマの話題でもするような、平和な口調で言った。
「そいや、なんかこないだ、テレビでやってたかも…。
坂本龍馬と中岡慎太郎の暗殺の話で…」
カナコは、さっとスズミの方に振り返って、鋭い声を上げた。
「スズミ、あんたは黙ってなさいっ!」
でも、スズミは…何の話か全然わかってなかったから当然だけど…、のんきに、不思議そうな声で続けた。
「二人を暗殺させた黒幕って、薩摩だって…。
えとつまり、その、西郷と大久保だって、そういう話だった」
え…?
龍馬さんと慎ちゃんが殺された?
…薩摩に?
「嘘…でしょ?」
「嘘だよっ!!」とカナコは怒鳴った。
「えー…そんなことないよ」と、スズミ。「偉い歴史作家の人が言ってたもん」
「作家は学者と違うから、いい加減なこと言うのよっ」と、カナコが言い返す。
「いいじゃん、いい加減でも、面白ければ」
「何よそれ!」と、私は叫んでた。
「ゆう、ほっときなよ。そんなやつ」
「大久保さんが…龍馬さんと慎ちゃんを殺させるはずなんかないっ。
寺田屋が襲われた時だって…あんなに懸命に…皆を守ってたのに…。
あんたなんかに…大久保さんの気持ちなんかわかんないわよっ。
面白ければって何よ!
作家の書いた空想の人じゃないのよ!ちゃんと生きてた人なんだから!」
「ゆうっ!!やめなよっ」
カナコは怒鳴って、私の両肩をつかんで、乱暴にゆすった。
「…もう、今夜はこれでおしまいにしよっ。
スズミ、あんたもう帰んな。
私も、ゆうを家まで送るから」
「…でも…」と、スズミは言いかけた。
「帰んな」と、カナコはものすごく冷たい声で言った。
「う…」
スズミはカナコの迫力に押されて、しぶしぶ、帰って行った。
と、今までぽかんと黙って聞いていたスズミが、ひどくのんびりした声で言った。
「なんでそんなに深刻に話してるの?
西郷と大久保って…日本史の話だよね?
ふたりとも…なんかすっごい感情移入しちゃってるけど…ファンなわけ?」
スズミの声で、ふっと現実に引き戻された。
そして、また、思い知らされる。
これはすべて、百年以上前に終わったことなんだ。
例え私が知っても、何もすることはできない。
私がそんなことを考えているとも知らず、スズミは、ドラマの話題でもするような、平和な口調で言った。
「そいや、なんかこないだ、テレビでやってたかも…。
坂本龍馬と中岡慎太郎の暗殺の話で…」
カナコは、さっとスズミの方に振り返って、鋭い声を上げた。
「スズミ、あんたは黙ってなさいっ!」
でも、スズミは…何の話か全然わかってなかったから当然だけど…、のんきに、不思議そうな声で続けた。
「二人を暗殺させた黒幕って、薩摩だって…。
えとつまり、その、西郷と大久保だって、そういう話だった」
え…?
龍馬さんと慎ちゃんが殺された?
…薩摩に?
「嘘…でしょ?」
「嘘だよっ!!」とカナコは怒鳴った。
「えー…そんなことないよ」と、スズミ。「偉い歴史作家の人が言ってたもん」
「作家は学者と違うから、いい加減なこと言うのよっ」と、カナコが言い返す。
「いいじゃん、いい加減でも、面白ければ」
「何よそれ!」と、私は叫んでた。
「ゆう、ほっときなよ。そんなやつ」
「大久保さんが…龍馬さんと慎ちゃんを殺させるはずなんかないっ。
寺田屋が襲われた時だって…あんなに懸命に…皆を守ってたのに…。
あんたなんかに…大久保さんの気持ちなんかわかんないわよっ。
面白ければって何よ!
作家の書いた空想の人じゃないのよ!ちゃんと生きてた人なんだから!」
「ゆうっ!!やめなよっ」
カナコは怒鳴って、私の両肩をつかんで、乱暴にゆすった。
「…もう、今夜はこれでおしまいにしよっ。
スズミ、あんたもう帰んな。
私も、ゆうを家まで送るから」
「…でも…」と、スズミは言いかけた。
「帰んな」と、カナコはものすごく冷たい声で言った。
「う…」
スズミはカナコの迫力に押されて、しぶしぶ、帰って行った。