第四章 東京
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私の事件の影響って、校内の噂以外にも、いろんなとこに出てた。
剣道部も、しばらく活動自粛みたいになっちゃってた。
別に誰も悪いことしてないからいいじゃんって思ったんだけど…。
スズミみたいな発想の人が保護者にもいて、そもそも京都なんかに合宿に行くのがいけない、学校は学生を危険に遭わせた責任を取れ…って騒いでたらしい。
それも、あんたの娘が危険にあったわけじゃないじゃん、みたいな子の親が、いちばん騒いでて…。
なんか、私は剣道部の皆に会わせる顔がなくて…。
部長とか、他の部員の子には謝ったんだけど、皆に気にしないでってサラッと言われちゃって、かえって申し訳なくてたまんなくなった。
カナコもいないし、学校に残っていづらかったので、私は家に早く帰っておじいちゃんの手伝いなんかしてた。
でも、私がお茶を出すと、
「おい、ゆう。玉露をこんな熱い湯で淹れるもんじゃないと教えたろう。だから渋くなるんだ」
と怒られた。
おじいちゃんは何か小さい字で書かれた手紙を、老眼鏡を使って見てたけど、よく読めないので機嫌が悪かったみたい。
覗いてみると、去年の夏に国際交流試合でハワイに行ったときに試合した日系の人からの手紙だった。
すっごいへたくそな日本語だったので、老眼じゃなくてもよくわかんない内容だった。
英語で同じ文章が書いてあったので、おじいちゃんに訳して教えてあげた。
「なんかさ、あの試合の後で、あの日系の人の先祖は百年前にハワイに移民してきた杉浦ゆうって女の人だって言われたじゃん?
あの後で調べてみたら、東京の杉浦道場の娘だってわかったから、たぶん私らと遠い親戚だと思うって。
日本に親戚がいるのがわかって、とってもうれしいし光栄だから、今後は仲良くしましょうねって書いてある」
「…ああ、あの話か。それならこっちでも調べた。
ハワイの男と文通して親しくなって、写真と手紙でしか知らない相手に、嫁いでいったという話だ。今なら絶対ありえない話だな」
「…そなんだ…」
「ん、どうした?」
と、おじいちゃんは不思議な顔をした。
「…百年前の、私とおんなじ名前の人の話なんだよなあって思って。
もう、親兄弟と一生会えないかもしれないのに…好きだって気持ちだけで、その人は海渡って、ぜんぜん知らない世界に飛び込んでっちゃったんだね」
なんか…ちょっと身につまされてしみじみと言ってしまったら、おじいちゃんが、
「ま、当時は日本も貧乏だったから、似た話は多かったそうだ。中には結婚詐欺のような目にあった女性もいたらしいぞ」
と、ツッコミを入れた。
「そ…そうなの?」
「この百年前のハワイの男は、まあまあ誠実でまともな奴だったみたいだがなあ」
あ…あせった。ちょっと安心した。
すると、今度はおじいちゃんがしみじみと言った。
「うちの家系は昔から、女でも妙に大ざっぱで、やることが極端というか、時々とんでもない方向に突っ走るからなあ…。
ゆうも、地頭は悪くないんだが、学校の暗記問題は毎回赤点取って来るし…。
思いやりがあって自慢のいい娘なんだが、どうも女らしい細やかさの方はさっぱりだし…。
今のせせこましい日本には合わないんじゃないか、いつかどこかもっと広い世界に行ったきり、帰って来なくなるんじゃないかと心配になるときがある」
「おじいちゃん…」
ごめんなさい。…実際、帰って来ないつもりでいました。
「で、なんだ?お前の惚れた男も外国の人間なのか?」
「ち…違いますっ!」
なんで、そういう話になるのよ、おじいちゃんっ!
「そうか。日本人か」
おじいちゃんは、そう言って、声を立てて笑った。
うっ…。
もしかして、誘導尋問にひっかかったってやつだろうか。
剣道部も、しばらく活動自粛みたいになっちゃってた。
別に誰も悪いことしてないからいいじゃんって思ったんだけど…。
スズミみたいな発想の人が保護者にもいて、そもそも京都なんかに合宿に行くのがいけない、学校は学生を危険に遭わせた責任を取れ…って騒いでたらしい。
それも、あんたの娘が危険にあったわけじゃないじゃん、みたいな子の親が、いちばん騒いでて…。
なんか、私は剣道部の皆に会わせる顔がなくて…。
部長とか、他の部員の子には謝ったんだけど、皆に気にしないでってサラッと言われちゃって、かえって申し訳なくてたまんなくなった。
カナコもいないし、学校に残っていづらかったので、私は家に早く帰っておじいちゃんの手伝いなんかしてた。
でも、私がお茶を出すと、
「おい、ゆう。玉露をこんな熱い湯で淹れるもんじゃないと教えたろう。だから渋くなるんだ」
と怒られた。
おじいちゃんは何か小さい字で書かれた手紙を、老眼鏡を使って見てたけど、よく読めないので機嫌が悪かったみたい。
覗いてみると、去年の夏に国際交流試合でハワイに行ったときに試合した日系の人からの手紙だった。
すっごいへたくそな日本語だったので、老眼じゃなくてもよくわかんない内容だった。
英語で同じ文章が書いてあったので、おじいちゃんに訳して教えてあげた。
「なんかさ、あの試合の後で、あの日系の人の先祖は百年前にハワイに移民してきた杉浦ゆうって女の人だって言われたじゃん?
あの後で調べてみたら、東京の杉浦道場の娘だってわかったから、たぶん私らと遠い親戚だと思うって。
日本に親戚がいるのがわかって、とってもうれしいし光栄だから、今後は仲良くしましょうねって書いてある」
「…ああ、あの話か。それならこっちでも調べた。
ハワイの男と文通して親しくなって、写真と手紙でしか知らない相手に、嫁いでいったという話だ。今なら絶対ありえない話だな」
「…そなんだ…」
「ん、どうした?」
と、おじいちゃんは不思議な顔をした。
「…百年前の、私とおんなじ名前の人の話なんだよなあって思って。
もう、親兄弟と一生会えないかもしれないのに…好きだって気持ちだけで、その人は海渡って、ぜんぜん知らない世界に飛び込んでっちゃったんだね」
なんか…ちょっと身につまされてしみじみと言ってしまったら、おじいちゃんが、
「ま、当時は日本も貧乏だったから、似た話は多かったそうだ。中には結婚詐欺のような目にあった女性もいたらしいぞ」
と、ツッコミを入れた。
「そ…そうなの?」
「この百年前のハワイの男は、まあまあ誠実でまともな奴だったみたいだがなあ」
あ…あせった。ちょっと安心した。
すると、今度はおじいちゃんがしみじみと言った。
「うちの家系は昔から、女でも妙に大ざっぱで、やることが極端というか、時々とんでもない方向に突っ走るからなあ…。
ゆうも、地頭は悪くないんだが、学校の暗記問題は毎回赤点取って来るし…。
思いやりがあって自慢のいい娘なんだが、どうも女らしい細やかさの方はさっぱりだし…。
今のせせこましい日本には合わないんじゃないか、いつかどこかもっと広い世界に行ったきり、帰って来なくなるんじゃないかと心配になるときがある」
「おじいちゃん…」
ごめんなさい。…実際、帰って来ないつもりでいました。
「で、なんだ?お前の惚れた男も外国の人間なのか?」
「ち…違いますっ!」
なんで、そういう話になるのよ、おじいちゃんっ!
「そうか。日本人か」
おじいちゃんは、そう言って、声を立てて笑った。
うっ…。
もしかして、誘導尋問にひっかかったってやつだろうか。