第三章 ストーリーテラー
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その手紙は、ものすごく古くなっていて、折り目のところなど、ところどころ読めなくなっていた。
それに、ふだん漢字ばかりの事務的な文章を書いている人が、無理に私に合わせて、やさしいひらがなで書いたものだから、ぎこちなくて読みにくいところもあった。昔のかな文字だから、今と違うのもあったし。
でも、そんなことより私は、もう見ることなんてないかもしれないと思っていた大久保さんの癖のある字が、目の前にあることが嬉しかった。
なんかちょっと…私にあわせて、無理して書いてるっぽい字だな…なんて…。
---しかし、未来のひらがなというやつは、読みにくいな。
なんて言ってたっけ。
なんか嬉しいのに、泣きそうになるのって、なんでだろ。
手紙の宛名は
『小娘へ。』
になってた。
もう。
この人は一生、私に小娘以外の呼び方はしないつもりらしい。
何故なんだろうな…なんてことも、もう一生聞けないのか…。
続く本文以下は、こんな感じで始まってた。
『この手紙を書くかどうかは、正直、迷った。
だが、お前のことだ。今回自分が未来に帰されたのは、自分が何か失敗をしたからに違いない、原因はあれだろうかこれだろうかと、空気のように軽い脳みそを無駄に絞っていることだろう。
私に嫌われたから自分は価値のない人間に決まっているだの、未来で生きておってもつまらんだの、まあおそらくくだらん御託を、回り灯籠の絵のように、一日中ぐるぐると繰り返しているに違いない。
お前の考えることなど、どうせ休んで寝ているのとたいして変わらん。
そんなろくでもないことで毎日嘆き暮されてしまったのでは、せっかく帰してやった意味がない。
だから、一筆、ふざけるなと苦言を書いておくことにした。』
う…。
す…鋭い…。
ここ最近の自分の様子を、百何十年も前の手紙で言い当てられて、私はどきっとしてしまった。
なんでこの人には、私の予想もしてなかった自分の反応が、こんなに簡単にわかっちゃうんだろう。
ううん…。簡単ってことはないね。
それだけ、真剣に私のことを考えてくれたから、出た結論なんだろうな。
『どうもお前には、必要以上に自分を下に見るところがある。
謙遜は美徳だが、お前が悩んでいても、誰の得にもならん。
今回のことは、お前の非ではない。
すべて、私の力不足によるものだ。
こちらの時代には、猩紅熱に効く薬はない。
お前の年でも、死ぬ者、目の光を失う者、心の臓をやられて床に臥せったままになる者もいる。
それをお前に教え込んでおかなかったのは、こちらの責任だ。
また、おぞましい話ゆえ、詳細は省くが、お前の身に危険が迫っていた。そして、私には、お前をそばに置いたままで守りきるだけの力がなかった。
要するに、お前を帰すことにしたのは、あくまでも安全上の理由だ。
ただ、未来に着いたお前が、また例の神社に赴き、戻って来てしまっては、さらに危険だ。
そのため、あの神社はお前の知らぬ地方の小村に移した。移動の記録もすべて抹消した。お前に探すことは不可能だろう。
例の薩摩の神社も、別の理由で、今はない。
残念だが、もうこちらに戻る手段は無いと知れ』
…やっぱり…神社がないのって、大久保さんのしわざだったんだ。
なんか、さらっと書いちゃってるけどさ。
ふつうの人は、そんな極端なこと、しないよ。
つかさ。
理由があるなら言ってくれたってよかったじゃん。
何よ、これ。
自分ひとりでなんでも抱え込んじゃってさ。
勝手にいろいろ決めて、とんでもないことまで全部、私には事後承諾でさ。
こんなの、ひどいよ。
それに、ふだん漢字ばかりの事務的な文章を書いている人が、無理に私に合わせて、やさしいひらがなで書いたものだから、ぎこちなくて読みにくいところもあった。昔のかな文字だから、今と違うのもあったし。
でも、そんなことより私は、もう見ることなんてないかもしれないと思っていた大久保さんの癖のある字が、目の前にあることが嬉しかった。
なんかちょっと…私にあわせて、無理して書いてるっぽい字だな…なんて…。
---しかし、未来のひらがなというやつは、読みにくいな。
なんて言ってたっけ。
なんか嬉しいのに、泣きそうになるのって、なんでだろ。
手紙の宛名は
『小娘へ。』
になってた。
もう。
この人は一生、私に小娘以外の呼び方はしないつもりらしい。
何故なんだろうな…なんてことも、もう一生聞けないのか…。
続く本文以下は、こんな感じで始まってた。
『この手紙を書くかどうかは、正直、迷った。
だが、お前のことだ。今回自分が未来に帰されたのは、自分が何か失敗をしたからに違いない、原因はあれだろうかこれだろうかと、空気のように軽い脳みそを無駄に絞っていることだろう。
私に嫌われたから自分は価値のない人間に決まっているだの、未来で生きておってもつまらんだの、まあおそらくくだらん御託を、回り灯籠の絵のように、一日中ぐるぐると繰り返しているに違いない。
お前の考えることなど、どうせ休んで寝ているのとたいして変わらん。
そんなろくでもないことで毎日嘆き暮されてしまったのでは、せっかく帰してやった意味がない。
だから、一筆、ふざけるなと苦言を書いておくことにした。』
う…。
す…鋭い…。
ここ最近の自分の様子を、百何十年も前の手紙で言い当てられて、私はどきっとしてしまった。
なんでこの人には、私の予想もしてなかった自分の反応が、こんなに簡単にわかっちゃうんだろう。
ううん…。簡単ってことはないね。
それだけ、真剣に私のことを考えてくれたから、出た結論なんだろうな。
『どうもお前には、必要以上に自分を下に見るところがある。
謙遜は美徳だが、お前が悩んでいても、誰の得にもならん。
今回のことは、お前の非ではない。
すべて、私の力不足によるものだ。
こちらの時代には、猩紅熱に効く薬はない。
お前の年でも、死ぬ者、目の光を失う者、心の臓をやられて床に臥せったままになる者もいる。
それをお前に教え込んでおかなかったのは、こちらの責任だ。
また、おぞましい話ゆえ、詳細は省くが、お前の身に危険が迫っていた。そして、私には、お前をそばに置いたままで守りきるだけの力がなかった。
要するに、お前を帰すことにしたのは、あくまでも安全上の理由だ。
ただ、未来に着いたお前が、また例の神社に赴き、戻って来てしまっては、さらに危険だ。
そのため、あの神社はお前の知らぬ地方の小村に移した。移動の記録もすべて抹消した。お前に探すことは不可能だろう。
例の薩摩の神社も、別の理由で、今はない。
残念だが、もうこちらに戻る手段は無いと知れ』
…やっぱり…神社がないのって、大久保さんのしわざだったんだ。
なんか、さらっと書いちゃってるけどさ。
ふつうの人は、そんな極端なこと、しないよ。
つかさ。
理由があるなら言ってくれたってよかったじゃん。
何よ、これ。
自分ひとりでなんでも抱え込んじゃってさ。
勝手にいろいろ決めて、とんでもないことまで全部、私には事後承諾でさ。
こんなの、ひどいよ。