第四章 東京
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結局、私はカナコや両親とともに、その日の夕方の新幹線で東京へ戻った。
例の写真と手紙は、アンティークショップの店長さんの希望もあって、そのまま店に預けておくことにした。
よくわからないけど、あれだけ古い紙だと、すごくいろいろ空調とかに気を使ってないと、すぐに色あせてしまうらしい。
そんなことを、香りのいいコーヒーを淹れてくれながら、店長さんは説明してくれた。
そして、名刺をくれて、いつでも困ったら電話してほしい、とまで言ってくれた。
カナコは、そんな店長さんを、黙ってじっと見つめていた。
確かにちょっと不思議な人だし、なんで私が困ってるって気づいたのかなって思うけど…。
なんでカナコは、あんなに探るような目をして、あの人をにらんでいたんだろう。
帰りの新幹線では、そんなことを聞きたかったけど、両親がずっとそばにいて、聞き出せずに終わった。
母さんは、私以上にげっそりしちゃってて、なんかすぐ泣くし…父さんは突然、よくわかんない説教とか始めるし…。
そんなピリピリした両親の言動で、カナコに嫌な気分を味あわせたくなかったので、車内ではなんかとっても気を使ってしまった。
そして、気がついた。
私、幕末に行く前って、親がいつも私のことを気遣ってくれてるのを、すごい当たり前みたいに思ってた。
親っていうのは、私を守ってくれるスーパーマンみたいに思ってた。
たぶん、カナコに対しても、そうだ。
カナコは私よりしゃきしゃきしてて、頭もよかったから、今までずっと頼ることばっかり考えてた。
今は、何でか知らないけど、両親もカナコも、ふつうの人間に見える。
私のことを心配して、オタオタしたり、ピリピリしたりしてくれてる姿が、とってもいとおしく感じる。
そしてなぜか、いつの間にか、車内で会話を仕切って、3人をなだめているのは、私になってた。
だけど…。
家に帰って、道場の門から出て来たおじいちゃんが、私を見て、
「なんだ、ゆう。何日か見んうちにずいぶん大人っぽくなったな。色気も出て来たようじゃないか」
と、のんきなことを言ったら、父さんがキレた。
おじいちゃんに、無神経だってすっごい文句を言った後、丸一日、口を利かなかった。
私はなんで父さんが怒ったかわかんなかったけど、あせって仲裁しようとしたら、ゆうに気を使わせるなと、よけい父さんはおじいちゃんに怒ってしまった。
母さんは、それを見て落ち込んじゃって、また貧血起こしちゃったし。
そんなこんなで、なんだか家の中がすっごいぎくしゃくしてしまった。
でも、おじいちゃんは相変わらずマイペースで、のほほんとしてた。
なんで父さんが怒ったかわかんなくて、おじいちゃんに聞いたら、逆に、
「お前は別に犯罪に巻き込まれたわけじゃないんだろう?」
と聞かれた。
「うん…」
「まったく、娘を信じてやればいいものを」
「…」
そか。父さんと母さん、まだ私が何かひどい目に遭ったと思ってるんだ。
「…それより、ゆう、惚れた男でもできたか?」
と、おじいちゃんはからかうように言った。
「ええっ?」
「家を出た時は確かに娘の顔だったが、帰って来たら女の顔になっている」
「なんかそれ、意味わかんない」
おじいちゃんは、からからと笑った。
「まあ、お前に何が起きたかは知らないが、一人で抱え込むことだけはするなよ。
友達に相談するのもいいが、大人の手が必要になった時は、じいちゃんを頼れ」
そう言うと、それ以上しつこく追及せずに、おじいちゃんは手で私の頭をくしゃくしゃとなでてくれた。
そんなこんなで、私がカナコにすべてちゃんと説明できるまで落ち付けたのは、東京に戻ってからしばらくたった後だった。
その時には、もう新学期は始まってたけど、私は、まだ体調が戻ってなくて、学校を休んでた。
心配して私の家の部屋に押しかけてきたカナコは、私の説明を聞くと、なんだか複雑な顔をして考え込んでいた。
そして、大きく息を吐くと、言った。
「…ま、一応、話はわかったよ。
確かにそりゃ、信じにくいけど。
でも、あんたがものすごい高そうな着物で倒れてたのは事実だしさ」
「信じてくれるの?」
「うーん…。他にも説明できんじゃないの?とは、まだ思うけどね。
少なくとも、あんたが嘘をついてないのは信じる」
私は、すごくうれしかったけど、ここのところずっと、カナコが何かいつも、別のことを考えているみたいなのは気になった。
聞いてみたけど、
「その話は…も少し待って。
私、自分でもなんか整理できてないんだわ」
と、流されてしまった。
そして、少しからかうような口調で言った。
「しかし、大久保利通かあ…。とんでもない大物に惚れられたもんね」
「やっぱ、カナコも知ってるほど有名人なんだ」
カナコは、ちょっとあきれたように、首をふった。
「こうだもんなあ…。ま、だから惚れられたんだと思うけどさ」
「へ?」
例の写真と手紙は、アンティークショップの店長さんの希望もあって、そのまま店に預けておくことにした。
よくわからないけど、あれだけ古い紙だと、すごくいろいろ空調とかに気を使ってないと、すぐに色あせてしまうらしい。
そんなことを、香りのいいコーヒーを淹れてくれながら、店長さんは説明してくれた。
そして、名刺をくれて、いつでも困ったら電話してほしい、とまで言ってくれた。
カナコは、そんな店長さんを、黙ってじっと見つめていた。
確かにちょっと不思議な人だし、なんで私が困ってるって気づいたのかなって思うけど…。
なんでカナコは、あんなに探るような目をして、あの人をにらんでいたんだろう。
帰りの新幹線では、そんなことを聞きたかったけど、両親がずっとそばにいて、聞き出せずに終わった。
母さんは、私以上にげっそりしちゃってて、なんかすぐ泣くし…父さんは突然、よくわかんない説教とか始めるし…。
そんなピリピリした両親の言動で、カナコに嫌な気分を味あわせたくなかったので、車内ではなんかとっても気を使ってしまった。
そして、気がついた。
私、幕末に行く前って、親がいつも私のことを気遣ってくれてるのを、すごい当たり前みたいに思ってた。
親っていうのは、私を守ってくれるスーパーマンみたいに思ってた。
たぶん、カナコに対しても、そうだ。
カナコは私よりしゃきしゃきしてて、頭もよかったから、今までずっと頼ることばっかり考えてた。
今は、何でか知らないけど、両親もカナコも、ふつうの人間に見える。
私のことを心配して、オタオタしたり、ピリピリしたりしてくれてる姿が、とってもいとおしく感じる。
そしてなぜか、いつの間にか、車内で会話を仕切って、3人をなだめているのは、私になってた。
だけど…。
家に帰って、道場の門から出て来たおじいちゃんが、私を見て、
「なんだ、ゆう。何日か見んうちにずいぶん大人っぽくなったな。色気も出て来たようじゃないか」
と、のんきなことを言ったら、父さんがキレた。
おじいちゃんに、無神経だってすっごい文句を言った後、丸一日、口を利かなかった。
私はなんで父さんが怒ったかわかんなかったけど、あせって仲裁しようとしたら、ゆうに気を使わせるなと、よけい父さんはおじいちゃんに怒ってしまった。
母さんは、それを見て落ち込んじゃって、また貧血起こしちゃったし。
そんなこんなで、なんだか家の中がすっごいぎくしゃくしてしまった。
でも、おじいちゃんは相変わらずマイペースで、のほほんとしてた。
なんで父さんが怒ったかわかんなくて、おじいちゃんに聞いたら、逆に、
「お前は別に犯罪に巻き込まれたわけじゃないんだろう?」
と聞かれた。
「うん…」
「まったく、娘を信じてやればいいものを」
「…」
そか。父さんと母さん、まだ私が何かひどい目に遭ったと思ってるんだ。
「…それより、ゆう、惚れた男でもできたか?」
と、おじいちゃんはからかうように言った。
「ええっ?」
「家を出た時は確かに娘の顔だったが、帰って来たら女の顔になっている」
「なんかそれ、意味わかんない」
おじいちゃんは、からからと笑った。
「まあ、お前に何が起きたかは知らないが、一人で抱え込むことだけはするなよ。
友達に相談するのもいいが、大人の手が必要になった時は、じいちゃんを頼れ」
そう言うと、それ以上しつこく追及せずに、おじいちゃんは手で私の頭をくしゃくしゃとなでてくれた。
そんなこんなで、私がカナコにすべてちゃんと説明できるまで落ち付けたのは、東京に戻ってからしばらくたった後だった。
その時には、もう新学期は始まってたけど、私は、まだ体調が戻ってなくて、学校を休んでた。
心配して私の家の部屋に押しかけてきたカナコは、私の説明を聞くと、なんだか複雑な顔をして考え込んでいた。
そして、大きく息を吐くと、言った。
「…ま、一応、話はわかったよ。
確かにそりゃ、信じにくいけど。
でも、あんたがものすごい高そうな着物で倒れてたのは事実だしさ」
「信じてくれるの?」
「うーん…。他にも説明できんじゃないの?とは、まだ思うけどね。
少なくとも、あんたが嘘をついてないのは信じる」
私は、すごくうれしかったけど、ここのところずっと、カナコが何かいつも、別のことを考えているみたいなのは気になった。
聞いてみたけど、
「その話は…も少し待って。
私、自分でもなんか整理できてないんだわ」
と、流されてしまった。
そして、少しからかうような口調で言った。
「しかし、大久保利通かあ…。とんでもない大物に惚れられたもんね」
「やっぱ、カナコも知ってるほど有名人なんだ」
カナコは、ちょっとあきれたように、首をふった。
「こうだもんなあ…。ま、だから惚れられたんだと思うけどさ」
「へ?」