第三章 ストーリーテラー
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カナコがどこかに電話をかけると言うので、私はひとりで店内に入った。
黒っぽい木でできた古めかしい店の扉を開けると、からころとレトロなベルの音がした。
店の中は、何かの香木のような、いい匂いがしていた。
すごくがっしりとした造りの、白い壁と、黒っぽい木の天井。
私は建築のことはわからないけど、明治あたりの洋館ってこんな感じなんだろなってインテリアだった。
もう使われていないみたいだけど、暖炉まであって、そのそばにはシャーロック・ホームズでも座れば似合いそうな椅子がある。
私が店内を見回していると、カウンターにいた店の主人らしい三十代前半くらいの男性が、顔を上げる。
「いらっしゃいませ」
昔の映画の新聞記者みたいに、ワイシャツにベスト姿で、アームバンドを巻いていて、細い銀縁の眼鏡をかけた顔もやっぱり昔の映画俳優さんみたいな、ちょっと涼やかな感じの人だ。
なんか、この人、誰かに似てる。
「あの…ウィンドウに飾ってあるドレスの女の子の写真なんですけど」
「ああ、申し訳ない」
その人は、とてもにこやかに、でもきっぱりとした様子で微笑んだ。
「あれは、非売品なんですよ。実は、うちの家宝のようなものなんです」
そう言ってから、不思議そうな顔で私を見た。
「…君は…?」
「あの…近くで見せてもらうだけなら、構わないでしょうか?」
「ええ。どうぞ」
店主さんは、白い手袋をはめて、ショーウィンドウの鍵を開けた。
「びっくりしましたよ。実は、この写真には、ちょっとした言い伝えがあるんですよ。
いつか、この子とそっくりな顔の女の子が、店にやって来るという話なんです」
「え…」
アンティークショップを経営してるくらいだから、こういう話が好きなんだろう。店主さんは、微笑みながら言った。
「面白いでしょう?
この店、ごらんのようにとても古い店なんですけど、ここが建った時に出資した人というのが、かなり変わり者だったらしくて。
出資する条件というのが、その人の昔の恋人の写真を、いちばん目立つところに飾り続けておくことだったんです。
まあ、それだけなら、ふられて未練たらたらの男が、恋人にアピールしたかったのかな…と思うところですが。
面白いのは、その条件は、百年たっても、二百年たっても、とにかくその子が現れるまで、絶対に飾り続けるようにという内容だったんです。
そして、その女の子は、写真の姿とほとんど変わらない、若いままで現れるかもしれない…と。
まさか、本当にその条件どおりのことが起きるとは思いませんでしたけれど、何しろかわいい写真ですからね。
飾っておくのには、何の問題もありませんでした」
店主さんは、私の顔を見て、何だかいたずらっぽく笑った。
黒っぽい木でできた古めかしい店の扉を開けると、からころとレトロなベルの音がした。
店の中は、何かの香木のような、いい匂いがしていた。
すごくがっしりとした造りの、白い壁と、黒っぽい木の天井。
私は建築のことはわからないけど、明治あたりの洋館ってこんな感じなんだろなってインテリアだった。
もう使われていないみたいだけど、暖炉まであって、そのそばにはシャーロック・ホームズでも座れば似合いそうな椅子がある。
私が店内を見回していると、カウンターにいた店の主人らしい三十代前半くらいの男性が、顔を上げる。
「いらっしゃいませ」
昔の映画の新聞記者みたいに、ワイシャツにベスト姿で、アームバンドを巻いていて、細い銀縁の眼鏡をかけた顔もやっぱり昔の映画俳優さんみたいな、ちょっと涼やかな感じの人だ。
なんか、この人、誰かに似てる。
「あの…ウィンドウに飾ってあるドレスの女の子の写真なんですけど」
「ああ、申し訳ない」
その人は、とてもにこやかに、でもきっぱりとした様子で微笑んだ。
「あれは、非売品なんですよ。実は、うちの家宝のようなものなんです」
そう言ってから、不思議そうな顔で私を見た。
「…君は…?」
「あの…近くで見せてもらうだけなら、構わないでしょうか?」
「ええ。どうぞ」
店主さんは、白い手袋をはめて、ショーウィンドウの鍵を開けた。
「びっくりしましたよ。実は、この写真には、ちょっとした言い伝えがあるんですよ。
いつか、この子とそっくりな顔の女の子が、店にやって来るという話なんです」
「え…」
アンティークショップを経営してるくらいだから、こういう話が好きなんだろう。店主さんは、微笑みながら言った。
「面白いでしょう?
この店、ごらんのようにとても古い店なんですけど、ここが建った時に出資した人というのが、かなり変わり者だったらしくて。
出資する条件というのが、その人の昔の恋人の写真を、いちばん目立つところに飾り続けておくことだったんです。
まあ、それだけなら、ふられて未練たらたらの男が、恋人にアピールしたかったのかな…と思うところですが。
面白いのは、その条件は、百年たっても、二百年たっても、とにかくその子が現れるまで、絶対に飾り続けるようにという内容だったんです。
そして、その女の子は、写真の姿とほとんど変わらない、若いままで現れるかもしれない…と。
まさか、本当にその条件どおりのことが起きるとは思いませんでしたけれど、何しろかわいい写真ですからね。
飾っておくのには、何の問題もありませんでした」
店主さんは、私の顔を見て、何だかいたずらっぽく笑った。