第三章 ストーリーテラー
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結局私は病院に連れ戻された。
私の消えた事件は、想像以上に大ごとになってた。
何しろ、人目につかない雑木林の近くで、女子高生が消えて。
女子高生に家出するような理由はまったくなく、友達と直前まで午後の予定を話してて。
3日後に突然現れたかと思ったら、太秦だってありえないぐらい、時代考証に凝りまくった着物を着てて。
下着から何から、失踪当時に身に着けていたものは、バッグ以外、すべて別のものに替えられてた。
それも、女子高生ではとうてい買えない高級品ばかりで。
…と言うか、機械化の進んだ日本で、今これだけのものを全部手作りで作っている職人さんはいないだろって品物ばかりで。
品物だけなら、異常に保存のいいアンティークかとも思えるけど、私の髪も、聞き込みで写真を見せられた祇園の髪結いさんが驚くぐらい本格的に結われてた。
そして、ふつうは他のアジアの国にでも行かないとかからない病気になってて。
しかも、病名がわかっているにも関わらず、抗生物質を投与された形跡がない…と言うか、薬が入手できないから、帰されたような気配がする。
送って来た妙なメールに添付された写真の地面には、成人男性らしい影が写りこんでいたけれど…。
シルエットだけでも、肩のあたりの袖付けのやり方が、やはり妙に古いタイプの洋服を着ているように見える。
被害者(?)の女子高生は泣くばかりで、何が起きたか、一切語ろうとしない。
…怪しいことこの上ない。
ついには、どこかの国にでも拉致されかけたんじゃないかって、公安の人まで2人も来てしまった。
ただまあ、公安の人は、なんか勢い込んで来たわりには、その後すぐに職場から帰れって連絡が入ったみたいで。
病院の廊下の、携帯OKの場所で話している声が聞こえたけど…。
「なぜ、永田町がこんな話に首を突っ込んでくるんですか?!」
とか、わけわかんないこと話してた。
その後すぐ、公安の人のひとりは私に、
「杉浦さん、妙なことを聞きますが…あなたは最近、『小娘』と呼ばれたことはありますか?」
なんて、聞いてきた。
「へ?」
「すみません…変な質問でしたね。忘れてください」
「いえ…その…呼ばれてましたけど…」
そうすると、もうひとりの公安の人が、
「お前、何バカなことを聞いているんだ。あれは霞が関の伝説みたいなものだろう」
とツッコミを入れた。
すると、私に質問した方の人は、余計に困った顔をしてもじもじしてしまった。
「俺もそう言ったんだが…なんか知らんが今日、衆院の古株議員の秘書で似たようなことを言ってきたやつがいるとかで…」
「はあ?何だそれは」
と、二人は議論を始めちゃったけど…話が読めない。
「伝説って…何ですか?」
「いや、何と言うか…ですね。
私ら警察庁が、明治時代に内務省警保局として発足した直後から、代々伝わってるという変な申し送り事項がありまして…。
この先、何年後になるかはわからないけれど、京都で杉浦ゆうという名前の小娘が奇妙な失踪をするだろうが、特に事件性はないから放っといてやれと言う内容なんですが…。
すみません…。あなたに聞かせても、意味不明ですよね」
公安の人は、そんなふうに、何だかよくわからないことを言うと、その日のうちに帰って行った。
父さんと母さんや、剣道部のコーチは、そんなわけにはいかなくて…。
でも、本当のことを話しても、信じてもらえるわけもなくて…。
父さんと母さんとカナコには、少しだけ、本当のことを言いかけたんだけど…。
うちの親の話を聞いている時の顔や、受け答えを聞いてて…やっぱダメだよね…と途中でやめてしまった。
何というか…。
ああ、この子はひどい目にあったことを忘れたくて、こんな夢物語を作っちゃったのね…みたいな…悲しそうな顔をされてしまった。
それでもカナコだけは、ただただ、真剣な顔で聞いていてくれた。
ふだん、おしゃべりなカナコとは思えないくらいに黙りこくっていて、話を聞いた後もずっと、何かを考え込んだまま、一言もしゃべらなかった。
私の消えた事件は、想像以上に大ごとになってた。
何しろ、人目につかない雑木林の近くで、女子高生が消えて。
女子高生に家出するような理由はまったくなく、友達と直前まで午後の予定を話してて。
3日後に突然現れたかと思ったら、太秦だってありえないぐらい、時代考証に凝りまくった着物を着てて。
下着から何から、失踪当時に身に着けていたものは、バッグ以外、すべて別のものに替えられてた。
それも、女子高生ではとうてい買えない高級品ばかりで。
…と言うか、機械化の進んだ日本で、今これだけのものを全部手作りで作っている職人さんはいないだろって品物ばかりで。
品物だけなら、異常に保存のいいアンティークかとも思えるけど、私の髪も、聞き込みで写真を見せられた祇園の髪結いさんが驚くぐらい本格的に結われてた。
そして、ふつうは他のアジアの国にでも行かないとかからない病気になってて。
しかも、病名がわかっているにも関わらず、抗生物質を投与された形跡がない…と言うか、薬が入手できないから、帰されたような気配がする。
送って来た妙なメールに添付された写真の地面には、成人男性らしい影が写りこんでいたけれど…。
シルエットだけでも、肩のあたりの袖付けのやり方が、やはり妙に古いタイプの洋服を着ているように見える。
被害者(?)の女子高生は泣くばかりで、何が起きたか、一切語ろうとしない。
…怪しいことこの上ない。
ついには、どこかの国にでも拉致されかけたんじゃないかって、公安の人まで2人も来てしまった。
ただまあ、公安の人は、なんか勢い込んで来たわりには、その後すぐに職場から帰れって連絡が入ったみたいで。
病院の廊下の、携帯OKの場所で話している声が聞こえたけど…。
「なぜ、永田町がこんな話に首を突っ込んでくるんですか?!」
とか、わけわかんないこと話してた。
その後すぐ、公安の人のひとりは私に、
「杉浦さん、妙なことを聞きますが…あなたは最近、『小娘』と呼ばれたことはありますか?」
なんて、聞いてきた。
「へ?」
「すみません…変な質問でしたね。忘れてください」
「いえ…その…呼ばれてましたけど…」
そうすると、もうひとりの公安の人が、
「お前、何バカなことを聞いているんだ。あれは霞が関の伝説みたいなものだろう」
とツッコミを入れた。
すると、私に質問した方の人は、余計に困った顔をしてもじもじしてしまった。
「俺もそう言ったんだが…なんか知らんが今日、衆院の古株議員の秘書で似たようなことを言ってきたやつがいるとかで…」
「はあ?何だそれは」
と、二人は議論を始めちゃったけど…話が読めない。
「伝説って…何ですか?」
「いや、何と言うか…ですね。
私ら警察庁が、明治時代に内務省警保局として発足した直後から、代々伝わってるという変な申し送り事項がありまして…。
この先、何年後になるかはわからないけれど、京都で杉浦ゆうという名前の小娘が奇妙な失踪をするだろうが、特に事件性はないから放っといてやれと言う内容なんですが…。
すみません…。あなたに聞かせても、意味不明ですよね」
公安の人は、そんなふうに、何だかよくわからないことを言うと、その日のうちに帰って行った。
父さんと母さんや、剣道部のコーチは、そんなわけにはいかなくて…。
でも、本当のことを話しても、信じてもらえるわけもなくて…。
父さんと母さんとカナコには、少しだけ、本当のことを言いかけたんだけど…。
うちの親の話を聞いている時の顔や、受け答えを聞いてて…やっぱダメだよね…と途中でやめてしまった。
何というか…。
ああ、この子はひどい目にあったことを忘れたくて、こんな夢物語を作っちゃったのね…みたいな…悲しそうな顔をされてしまった。
それでもカナコだけは、ただただ、真剣な顔で聞いていてくれた。
ふだん、おしゃべりなカナコとは思えないくらいに黙りこくっていて、話を聞いた後もずっと、何かを考え込んだまま、一言もしゃべらなかった。