第三章 ストーリーテラー
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私がびっくりして顔を上げると、カナコはちょっとオタオタした。
たぶん、カナコも混乱してて、自分で何を言ってるのか、よくわかんなかったんだと思う。
「ほ、ほら。前に授業でやったじゃん…。
…て、そか。あんた地理選択だったか。
よかったわよ。あの授業聞かなくて…。
うちの高校、暗殺現場近いからさあ…日本史の先生、すっごい詳しく説明してくれたんだけど。
なにしろ集団で刀持って取り囲んで、斬り刻んで…でしょ。
もう完全にスプラッタだもん。皆トラウマになっちゃったわよ、あの話…。
って…え?
あんた、大丈夫?」
大丈夫じゃ…なかった。
なんか…もう…立っていられなかった。
「嘘…」
「えっ」
「そんなの嘘だ。
嘘じゃなきゃいやだっ」
「ちょっと…」
私は、その場にしゃがみ込んだ。
ショックで、目の前が真っ暗になるって…こういうことなんだなと思った。
ただ、周囲で自動車の走る音だけは、なぜか頭の中でうわんうわんと反響してた。
なんか耳の隅で、誰かほかの人が病院から出てくる気配がして…。
カナコと二人で私の体を支えて、病院に連れ帰ろうとしたのはかすかに覚えてるけど…。
その後、どうなったかは、あんまりよくわかんない。
…そりゃ、今は未来だもん…。
理屈では、わかってた。
あの人は死んだんだ。
遠い昔に。
もう、この世界の、どこにもいない。
だけど…気持ちはそんな理屈を、無視しようとしてた。
それが、甘いことだって…思い知らされた。
いきなり突き付けられた真実は…冷たくて…容赦なくて…。
私は…襲われた龍馬さんたちが意識のないまま、藩邸に運び込まれてきた時のことを思った。
そして、あの人たちの体にあった、むごい刀傷のことを…。
あの夜、刀を抜いた新選組の人たちの前に、武器も持たずに立ちはだかった大久保さんのことを思った。
『集団で刀持って取り囲んで、斬り刻んで…』
『完全にスプラッタだもん』
カナコの言葉が、私の頭の中で、何度も何度もぐるぐるとループしてた。
いやだ。
そんなの、いやだ。
絶対いやだ。
できることなら、私が身代わりになってでも、そんなの、止めさせたい。
だけど…もう私にはどうしようもない。
遠い、過去の出来事だから。
たぶん、カナコも混乱してて、自分で何を言ってるのか、よくわかんなかったんだと思う。
「ほ、ほら。前に授業でやったじゃん…。
…て、そか。あんた地理選択だったか。
よかったわよ。あの授業聞かなくて…。
うちの高校、暗殺現場近いからさあ…日本史の先生、すっごい詳しく説明してくれたんだけど。
なにしろ集団で刀持って取り囲んで、斬り刻んで…でしょ。
もう完全にスプラッタだもん。皆トラウマになっちゃったわよ、あの話…。
って…え?
あんた、大丈夫?」
大丈夫じゃ…なかった。
なんか…もう…立っていられなかった。
「嘘…」
「えっ」
「そんなの嘘だ。
嘘じゃなきゃいやだっ」
「ちょっと…」
私は、その場にしゃがみ込んだ。
ショックで、目の前が真っ暗になるって…こういうことなんだなと思った。
ただ、周囲で自動車の走る音だけは、なぜか頭の中でうわんうわんと反響してた。
なんか耳の隅で、誰かほかの人が病院から出てくる気配がして…。
カナコと二人で私の体を支えて、病院に連れ帰ろうとしたのはかすかに覚えてるけど…。
その後、どうなったかは、あんまりよくわかんない。
…そりゃ、今は未来だもん…。
理屈では、わかってた。
あの人は死んだんだ。
遠い昔に。
もう、この世界の、どこにもいない。
だけど…気持ちはそんな理屈を、無視しようとしてた。
それが、甘いことだって…思い知らされた。
いきなり突き付けられた真実は…冷たくて…容赦なくて…。
私は…襲われた龍馬さんたちが意識のないまま、藩邸に運び込まれてきた時のことを思った。
そして、あの人たちの体にあった、むごい刀傷のことを…。
あの夜、刀を抜いた新選組の人たちの前に、武器も持たずに立ちはだかった大久保さんのことを思った。
『集団で刀持って取り囲んで、斬り刻んで…』
『完全にスプラッタだもん』
カナコの言葉が、私の頭の中で、何度も何度もぐるぐるとループしてた。
いやだ。
そんなの、いやだ。
絶対いやだ。
できることなら、私が身代わりになってでも、そんなの、止めさせたい。
だけど…もう私にはどうしようもない。
遠い、過去の出来事だから。