第二章 物知らぬことなのたまひそ
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「へ?」
私は、一瞬、言われた意味がわからなかった。
それは、あんまり突然だったから。
「未来に帰れ…って、今、そう言ったんですか?」
大久保さんは、私の反応を無視した。
ふところから、キラキラ光るものを取り出すと、私の手に握らせた。
それから、スクバも。
「これ…猫のキーホルダー…。なんで大久保さんが持ってるんですか?」
「知らなくていい」
「そんなこと…。
だって…。これがなくて…未来へ帰る手がかりが見つからなくて…。
私がどんな思いをしてたと思うんですかっ」
「なら、今、手がかりが見つかったんだ。うれしかろう」
大久保さんの顔は、冷たいくらい無表情だった。
「この間、お前が意識だけ過去に飛んだ時にも、このキーホルダーはお前の近くにあった。
だからおそらく、お前がそれを持っていれば、体ごと未来に戻れるだろう。保証はしないが」
そう言って、大久保さんは刀を抜くと、しめ縄を軽くつついた。
ずん、と地響きがした。
「小娘、よかったな。どうやら、お前は帰れるようだ」
そう言って、大久保さんは、自嘲するように嗤った。
「まったく…芸がないな。二番煎じは、私の性に合わないのだが」
その時、私は思い出した。
そう言えば、正助君が泣きそうな表情をしたり、あわてたり、赤い顔をしたりするたびに、私は思ったんだっけ…。
大人の大久保さんなら、ここは、ポーカーフェイスで、何事もなかったような顔して、うそぶくよって…。
私は、大久保さんにすがりついた。
「何をいきなり…。危ないだろうがっ」
「私は…帰りませんっ!」
「お前に選択の自由は無いっ」
「無茶言わないでくださいっ!私、大久保さんのそばにずっとずっといたいんです!
無理やり帰されたって、未来に着いたら、そのまま、またしめ縄結んで帰って来ますからっ!」
大久保さんは左手で私の肩をつかむと、どん、と拝殿の太い柱に私の背中をたたきつけた。
意地悪そうな冷笑を浮かべて、私の顔をのぞきこむ。
「ほう?未来に着いたら、帰って来るのか?
戻れるものなら、戻ってみろ」
私には、何がなんだか、もう、わけがわからなかった。
「…なんで、そんな意地悪言うんですか?
私、何か、悪いことしたんですか…?
私、この時代にいるって決めたんです!
大久保さんの側にいるのが、私の幸せなんです!
私を、大久保ゆうにしてくれるって言ったじゃないですか…。
やると言ってやらなかったことなんか、ないって…」
大久保さんは、まったく表情を変えずに、私の顔をしばらく見つめていた。
それから、ふっと、下を向いた。
前髪が落ちて、目の表情が見えなくなった。
そうして、大久保さんは唇を噛んだ。きつく噛みすぎて、唇の端から、血がにじんだのに、気づいてないみたいだった。
「悪いな。あれは、嘘だ」
「利通さんっ!」
「気が変わった。お前で遊ぶのも、いい加減、飽きた。
それに、状況がいろいろと紛糾してきたのでな。お前に手数をかけている暇も、もうない。
…だから、帰って来るな」
最後の言葉の、語尾が震えているような気がしたけど、気のせいだったかもしれない。
大久保さんは、刀を上げると、しめ縄を切った。
その途端、がくん、と大きく世界がゆれた。
私の体は光につつまれて、周りの景色は歪み、消えた。
私は、一瞬、言われた意味がわからなかった。
それは、あんまり突然だったから。
「未来に帰れ…って、今、そう言ったんですか?」
大久保さんは、私の反応を無視した。
ふところから、キラキラ光るものを取り出すと、私の手に握らせた。
それから、スクバも。
「これ…猫のキーホルダー…。なんで大久保さんが持ってるんですか?」
「知らなくていい」
「そんなこと…。
だって…。これがなくて…未来へ帰る手がかりが見つからなくて…。
私がどんな思いをしてたと思うんですかっ」
「なら、今、手がかりが見つかったんだ。うれしかろう」
大久保さんの顔は、冷たいくらい無表情だった。
「この間、お前が意識だけ過去に飛んだ時にも、このキーホルダーはお前の近くにあった。
だからおそらく、お前がそれを持っていれば、体ごと未来に戻れるだろう。保証はしないが」
そう言って、大久保さんは刀を抜くと、しめ縄を軽くつついた。
ずん、と地響きがした。
「小娘、よかったな。どうやら、お前は帰れるようだ」
そう言って、大久保さんは、自嘲するように嗤った。
「まったく…芸がないな。二番煎じは、私の性に合わないのだが」
その時、私は思い出した。
そう言えば、正助君が泣きそうな表情をしたり、あわてたり、赤い顔をしたりするたびに、私は思ったんだっけ…。
大人の大久保さんなら、ここは、ポーカーフェイスで、何事もなかったような顔して、うそぶくよって…。
私は、大久保さんにすがりついた。
「何をいきなり…。危ないだろうがっ」
「私は…帰りませんっ!」
「お前に選択の自由は無いっ」
「無茶言わないでくださいっ!私、大久保さんのそばにずっとずっといたいんです!
無理やり帰されたって、未来に着いたら、そのまま、またしめ縄結んで帰って来ますからっ!」
大久保さんは左手で私の肩をつかむと、どん、と拝殿の太い柱に私の背中をたたきつけた。
意地悪そうな冷笑を浮かべて、私の顔をのぞきこむ。
「ほう?未来に着いたら、帰って来るのか?
戻れるものなら、戻ってみろ」
私には、何がなんだか、もう、わけがわからなかった。
「…なんで、そんな意地悪言うんですか?
私、何か、悪いことしたんですか…?
私、この時代にいるって決めたんです!
大久保さんの側にいるのが、私の幸せなんです!
私を、大久保ゆうにしてくれるって言ったじゃないですか…。
やると言ってやらなかったことなんか、ないって…」
大久保さんは、まったく表情を変えずに、私の顔をしばらく見つめていた。
それから、ふっと、下を向いた。
前髪が落ちて、目の表情が見えなくなった。
そうして、大久保さんは唇を噛んだ。きつく噛みすぎて、唇の端から、血がにじんだのに、気づいてないみたいだった。
「悪いな。あれは、嘘だ」
「利通さんっ!」
「気が変わった。お前で遊ぶのも、いい加減、飽きた。
それに、状況がいろいろと紛糾してきたのでな。お前に手数をかけている暇も、もうない。
…だから、帰って来るな」
最後の言葉の、語尾が震えているような気がしたけど、気のせいだったかもしれない。
大久保さんは、刀を上げると、しめ縄を切った。
その途端、がくん、と大きく世界がゆれた。
私の体は光につつまれて、周りの景色は歪み、消えた。