第十一章 この浦舟に帆を上げて
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それから、数年。
…いろんなことがあった。
戦いは、京都から北海道まで続いて、ようやく終わった。
私たちは京都から、新しく都になった東京に移ってきた。
サムライってものが無くなって、藩とか大名もなくなって…。
久光公はぷんぷん怒ってたらしいけど、もう皆を止める力はなくなってた。
皆の髪型や服装が変わり、洋風の建物も次々と建てられて…。
江戸時代の風情がなくなっていくのは悲しいけど、皆が新しい時代に向かうんだって、熱くなってる。
ふと気づくと、見知った懐かしい顔がいなくなっていて、さびしいこともあるけれど…。
でも、そんな人たちのぶんも、がんばって夢をかなえるんだって、皆、精一杯に生きてる。
それでね、カナコ。
私も、がんばったんだよ。
出会ったころに言われたあの約束…私ががんばったら、世界一周に連れてくってのも…ついに本当になっちゃった。
あれから私たちが進んできた道って、ずいぶん遠くまで来たんだなって、改めて思う。
私は、横浜の沖に浮かぶ太平洋横断航路の定期船の上から、埠頭と海を見てる。
舟の周りには、小さなはしけが何艘も浮かんで、岸と船の間を忙しく行ったり来たりしてながら、たくさんの乗客と荷物を運んでる。
私の今乗っているアメリカの郵便蒸気帆船には、何本も高いマストが立ってて、星条旗や日本の旗や、いろんな旗がいっぱいに掲げられてる。
私たちを歓迎するように、時々汽笛が鳴らされる。
船の汽笛に応じるように、港の丘の上からも、どん、どんと祝砲を鳴らす音が聞こえる。
埠頭では、原色の服を着た楽隊が、太鼓や笛でどんちゃんとエキゾチックな音楽を演奏しているのが、遠く聞こえる。
まるで縁日みたいに、大通りからずらっと露店が並んでいて、大道芸に人だかりができているのも、小さく見える。
いろんなところから集まった見物客が、大勢埠頭に立って、こっちを見て騒いでる。
なんだかとっても、お祭り騒ぎな日。
「おいっ!ゆうっ!そんなところで何をしとるかっ」
私の足の下、十数メートル下から、お叱りの声が響いて、私は我に返った。
やっぱ、見つかったか…。
私は、マストに片手でつかまって下を見た。ちょっと怖いかも。
そのマストの根元のところで、利通さんが両腰に手を当てて怒鳴ってるのが、小さく見えた。
「えと…その…。梅子ちゃんって女の子の帽子が風に飛ばされて…マストの上に引っかかって…。
登って、取ったのはいいんだけど…なんか降りられなくなっちゃって…」
「馬鹿か、お前はっ!」
…馬鹿です。自覚してます。
…いろんなことがあった。
戦いは、京都から北海道まで続いて、ようやく終わった。
私たちは京都から、新しく都になった東京に移ってきた。
サムライってものが無くなって、藩とか大名もなくなって…。
久光公はぷんぷん怒ってたらしいけど、もう皆を止める力はなくなってた。
皆の髪型や服装が変わり、洋風の建物も次々と建てられて…。
江戸時代の風情がなくなっていくのは悲しいけど、皆が新しい時代に向かうんだって、熱くなってる。
ふと気づくと、見知った懐かしい顔がいなくなっていて、さびしいこともあるけれど…。
でも、そんな人たちのぶんも、がんばって夢をかなえるんだって、皆、精一杯に生きてる。
それでね、カナコ。
私も、がんばったんだよ。
出会ったころに言われたあの約束…私ががんばったら、世界一周に連れてくってのも…ついに本当になっちゃった。
あれから私たちが進んできた道って、ずいぶん遠くまで来たんだなって、改めて思う。
私は、横浜の沖に浮かぶ太平洋横断航路の定期船の上から、埠頭と海を見てる。
舟の周りには、小さなはしけが何艘も浮かんで、岸と船の間を忙しく行ったり来たりしてながら、たくさんの乗客と荷物を運んでる。
私の今乗っているアメリカの郵便蒸気帆船には、何本も高いマストが立ってて、星条旗や日本の旗や、いろんな旗がいっぱいに掲げられてる。
私たちを歓迎するように、時々汽笛が鳴らされる。
船の汽笛に応じるように、港の丘の上からも、どん、どんと祝砲を鳴らす音が聞こえる。
埠頭では、原色の服を着た楽隊が、太鼓や笛でどんちゃんとエキゾチックな音楽を演奏しているのが、遠く聞こえる。
まるで縁日みたいに、大通りからずらっと露店が並んでいて、大道芸に人だかりができているのも、小さく見える。
いろんなところから集まった見物客が、大勢埠頭に立って、こっちを見て騒いでる。
なんだかとっても、お祭り騒ぎな日。
「おいっ!ゆうっ!そんなところで何をしとるかっ」
私の足の下、十数メートル下から、お叱りの声が響いて、私は我に返った。
やっぱ、見つかったか…。
私は、マストに片手でつかまって下を見た。ちょっと怖いかも。
そのマストの根元のところで、利通さんが両腰に手を当てて怒鳴ってるのが、小さく見えた。
「えと…その…。梅子ちゃんって女の子の帽子が風に飛ばされて…マストの上に引っかかって…。
登って、取ったのはいいんだけど…なんか降りられなくなっちゃって…」
「馬鹿か、お前はっ!」
…馬鹿です。自覚してます。