第十一章 この浦舟に帆を上げて
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でもやっぱり、皆さん、私が止めても飲むんだよね。
夜も更けるころには、そろって、べろんべろんに酔っちゃって。
お約束の…。
「利通、畳回して見せろ!」
「誰がやるかっ」
「大久保さぁ、けちごろ言わんで、おいどんにも見せてくいやい」
「せからしいっ」
…なんか、よくわかんない掛け合いになってしまった。
つか…利通さん…酔ってる?
二十一世紀だったら…結婚式って花嫁のもの、って言われてるけどさ。
そこは私も、女中頭さんやお琴さんや、いろんな人に釘を刺されてた。
この時代の祝言って、新郎新婦は形ばかりの主役で、これからお世話になる人たちのものだから。
国元で祝言したら一週間くらい宴会続きかもしれないんだから、どんちゃん騒ぎになって、花嫁は放っとかれても怒っちゃだめだよって。
しかしほんと…薩摩の男の人たちって、お酒がばがば飲むし、皆で盛り上がっちゃうんだなあ…。
でさ…。
なんか、見てて思ったんだよね。
藩の偉い人って言われて、いつも皆に顔色をうかがわれている利通さんも、大物っぽくていいけどさ。
皆にお祝いされて、からかわれて、律儀にいちいちリアクションしちゃってる利通さんも…。
周りの人たちに好かれてるんだなって気がして…なんか、いいなあ。
でもって、利通さん、さっきまでさんざん飲まされてたお酒が回ってきちゃったみたいで。
「大久保さぁ、やったもんせ」
「誰いが畳なんち回ゆいかっ!」
うーむ…。
やっぱ、酔うとお国言葉、出るんですね。
半次郎さんとは、微妙に違って…薩摩弁でもあんまりいい人っぽくなんないけど。
どっちかっていうと、悪ガキっぽくなって、かわいいかも。
私は、ちょっと離れたところで、半分あきれて畳回しコールを聞いてたんだけど。
利通さん、酔っぱらった感じでふらふらっと立ち上がると、ずんずん、と無言で私の方に大股で歩いてきた。
「え…きゃっ!」
腕を引っ張られて立ち上がらされたと思ったら、ふわっ、と私の体は宙に浮いてた。
くるん、と体が一回転して、えっと思ったら、利通さんの顔が私の目の前にあった。
いつの間にか、お姫様だっこ体勢にされちゃってたんだ。
「どげんなっ」
なんか、得意そうなのはいいですけど、顔、ものすごく赤いです。
「大久保さぁ、嫁女回して何ぃをしちょいやっ…」
「その言い方は…誤解をまねくぞ、半次郎」
「ふふん。こんまま部屋まで行っぞ」
と、利通さんは笑うと、そのまま私を抱えて部屋を出て、寝室に向かおうとした。
「ちょ…ちょっと待ってっ」
こっ、このシチュエーションの意味するものは…。
そんな…皆の前で堂々と…。
いくらなんでも…恥ずかしすぎるよっ…。
でも。
私が思わずじたばたしちゃったら…。
利通さんは、ただでさえ酔っぱらって千鳥足になっちゃってたから、ふらっと後ろに倒れた。
背中から壁にぶつかって、私を抱っこしたまま、ずるずると滑るようにしゃがみ込む。
で…。
あれ…?
「…」
利通さん、私を膝の上で抱っこしたまま…酔いつぶれて、すうすう寝息を立ててました。
わあ…完全に熟睡してる…。
これは、簡単に目が覚めそうにないぞ。
「…もう…知らないっ」
何か、恥ずかしがって、損した。
とりあえず、まあ…このまま寝かせて体冷やすといけないよね。
何かかけてあげよ…。
と思って、私が少し身じろぎすると、利通さんが寝言でごにょごにょと何か言った。
「え…?」
「…ゆう…」
それは、私にしか、聞こえないような小さな小さな声のつぶやきだった。
「…ゆう…お前が…愛しうて愛しうてならん…」
…わお。
初めて、愛してるって、言葉で言われた。
…寝言だけど。
きっと、本人、言った自覚ないと思うけど。
でも、一生、言ってもらえないかと思ってたんだよね。この手のセリフ。
うーん…。
なんか…これ聞いちゃったら…細かいことは、もうどうでもよくなってきた。
やっぱ私、このひと、一生大事にしよ。
…なんか、そう思っちゃいました。
夜も更けるころには、そろって、べろんべろんに酔っちゃって。
お約束の…。
「利通、畳回して見せろ!」
「誰がやるかっ」
「大久保さぁ、けちごろ言わんで、おいどんにも見せてくいやい」
「せからしいっ」
…なんか、よくわかんない掛け合いになってしまった。
つか…利通さん…酔ってる?
二十一世紀だったら…結婚式って花嫁のもの、って言われてるけどさ。
そこは私も、女中頭さんやお琴さんや、いろんな人に釘を刺されてた。
この時代の祝言って、新郎新婦は形ばかりの主役で、これからお世話になる人たちのものだから。
国元で祝言したら一週間くらい宴会続きかもしれないんだから、どんちゃん騒ぎになって、花嫁は放っとかれても怒っちゃだめだよって。
しかしほんと…薩摩の男の人たちって、お酒がばがば飲むし、皆で盛り上がっちゃうんだなあ…。
でさ…。
なんか、見てて思ったんだよね。
藩の偉い人って言われて、いつも皆に顔色をうかがわれている利通さんも、大物っぽくていいけどさ。
皆にお祝いされて、からかわれて、律儀にいちいちリアクションしちゃってる利通さんも…。
周りの人たちに好かれてるんだなって気がして…なんか、いいなあ。
でもって、利通さん、さっきまでさんざん飲まされてたお酒が回ってきちゃったみたいで。
「大久保さぁ、やったもんせ」
「誰いが畳なんち回ゆいかっ!」
うーむ…。
やっぱ、酔うとお国言葉、出るんですね。
半次郎さんとは、微妙に違って…薩摩弁でもあんまりいい人っぽくなんないけど。
どっちかっていうと、悪ガキっぽくなって、かわいいかも。
私は、ちょっと離れたところで、半分あきれて畳回しコールを聞いてたんだけど。
利通さん、酔っぱらった感じでふらふらっと立ち上がると、ずんずん、と無言で私の方に大股で歩いてきた。
「え…きゃっ!」
腕を引っ張られて立ち上がらされたと思ったら、ふわっ、と私の体は宙に浮いてた。
くるん、と体が一回転して、えっと思ったら、利通さんの顔が私の目の前にあった。
いつの間にか、お姫様だっこ体勢にされちゃってたんだ。
「どげんなっ」
なんか、得意そうなのはいいですけど、顔、ものすごく赤いです。
「大久保さぁ、嫁女回して何ぃをしちょいやっ…」
「その言い方は…誤解をまねくぞ、半次郎」
「ふふん。こんまま部屋まで行っぞ」
と、利通さんは笑うと、そのまま私を抱えて部屋を出て、寝室に向かおうとした。
「ちょ…ちょっと待ってっ」
こっ、このシチュエーションの意味するものは…。
そんな…皆の前で堂々と…。
いくらなんでも…恥ずかしすぎるよっ…。
でも。
私が思わずじたばたしちゃったら…。
利通さんは、ただでさえ酔っぱらって千鳥足になっちゃってたから、ふらっと後ろに倒れた。
背中から壁にぶつかって、私を抱っこしたまま、ずるずると滑るようにしゃがみ込む。
で…。
あれ…?
「…」
利通さん、私を膝の上で抱っこしたまま…酔いつぶれて、すうすう寝息を立ててました。
わあ…完全に熟睡してる…。
これは、簡単に目が覚めそうにないぞ。
「…もう…知らないっ」
何か、恥ずかしがって、損した。
とりあえず、まあ…このまま寝かせて体冷やすといけないよね。
何かかけてあげよ…。
と思って、私が少し身じろぎすると、利通さんが寝言でごにょごにょと何か言った。
「え…?」
「…ゆう…」
それは、私にしか、聞こえないような小さな小さな声のつぶやきだった。
「…ゆう…お前が…愛しうて愛しうてならん…」
…わお。
初めて、愛してるって、言葉で言われた。
…寝言だけど。
きっと、本人、言った自覚ないと思うけど。
でも、一生、言ってもらえないかと思ってたんだよね。この手のセリフ。
うーん…。
なんか…これ聞いちゃったら…細かいことは、もうどうでもよくなってきた。
やっぱ私、このひと、一生大事にしよ。
…なんか、そう思っちゃいました。