第十一章 この浦舟に帆を上げて
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とにかくまあ、私たちはごくごく内輪でかんたんに、祝言を挙げました。
なにしろ急だったし、伏見の酒蔵はずいぶん燃えちゃって品薄だったもんで、三々九度も焼酎になっちゃったんですが…。
ま、それも薩摩っぽくて、いい思い出になったかもしんない。
式の方は簡単だったけど、西郷さんや半次郎さん他、親しい薩摩藩士の皆さんとか、なぜか日本の習慣に興味津々で飛び入りしてきた外国人のお二人とか、いろんな人がお祝いしてくれたから、宴席の方は、なんかすっごいにぎやかではありました。
小松さんの加減が悪くて、お琴さんも出てこれなかったのは、ちょっとさびしかったけど。
それで結局…式の方はなんか、あっと言う間に…体育会系ノリの男の人たちの、どんちゃん騒ぎの会になっちゃって。
無礼講とか言っちゃって…もう、すごい騒ぎになってしまった。
なにしろ利通さん以外の薩摩の人たちは皆、これから東国での戦に出征するというのでピリピリしてんのに…。
利通さんたら「ふん。うらやましいだろう」とか…もう、場をわきまえてよって感じのこと言っちゃうし。
皆は皆で、「何だとっ。だったら今日は足腰立たなくしてやるっ」とか、いかにも男同士っぽい会話になって、入れ替わり立ち代わり、利通さんに酒の飲み比べ勝負を挑んできて…。
利通さんはそれをいちいち律儀に受けちゃって…。
利通さん、そんなにお酒強くないのに大丈夫かなあ…。
「もう。皆さん、いい加減にしてくださいっ」
と、つい私は言っちゃってた。
「利通さんも、皆を戦に行かせて自分だけ京都に残るのが悔しいからって、スネて嫌味言わないの。
怖がりのお公家さんが、そばにいてくれって泣きべそで頼むんだから、しょうがないじゃないですか。
そりゃ、戦に行く皆さんのことを思えば、お一人お一人の杯を断れないのもわかりますけど、さすがにこれ以上は体に障ります!」
で、ふと気づくと…なんか皆、茫然と私を見てて。
あれ…やだ…なんか恥ずかしい…。
そのうち、ひとりの藩士さんがぽろっと言った。
「大久保さぁ…そんなこっ、考げてたとですか。こやわからん」
続いて、皆がどっと笑う。
「よか嫁女を貰ろたもしたなあ…。こげなふうに、時々解説してもらわんと、皆、大久保さぁの気持っを誤解したまま、不満を募らせかねもはん」
「ふん。余計なお世話だ。私の感情など、どうでもいい」
「いやぁ…大久保さぁはどうでもいい言うても、我々には大事なこっです」
なんかよくわかんないけど…さっきまでのピリピリした感じ、いつの間にか皆から消えて、柔らかい、機嫌のいい雰囲気になってた。
ちょっと安心。
もしかして…藩士さん達が、このまま利通さんの嫌味を言葉通り受け取ってたら…。
皆は危険な戦場に行くけど、自分は安全な京都で、平穏に過ごせるんだ、いいだろうって…そう言われたと思ってたら…。
そんな小さな気持ちのすれ違いが…いつか大きな深い深いへだたりになりそうで…私、ちょっと怖かったんだもん。
なにしろ急だったし、伏見の酒蔵はずいぶん燃えちゃって品薄だったもんで、三々九度も焼酎になっちゃったんですが…。
ま、それも薩摩っぽくて、いい思い出になったかもしんない。
式の方は簡単だったけど、西郷さんや半次郎さん他、親しい薩摩藩士の皆さんとか、なぜか日本の習慣に興味津々で飛び入りしてきた外国人のお二人とか、いろんな人がお祝いしてくれたから、宴席の方は、なんかすっごいにぎやかではありました。
小松さんの加減が悪くて、お琴さんも出てこれなかったのは、ちょっとさびしかったけど。
それで結局…式の方はなんか、あっと言う間に…体育会系ノリの男の人たちの、どんちゃん騒ぎの会になっちゃって。
無礼講とか言っちゃって…もう、すごい騒ぎになってしまった。
なにしろ利通さん以外の薩摩の人たちは皆、これから東国での戦に出征するというのでピリピリしてんのに…。
利通さんたら「ふん。うらやましいだろう」とか…もう、場をわきまえてよって感じのこと言っちゃうし。
皆は皆で、「何だとっ。だったら今日は足腰立たなくしてやるっ」とか、いかにも男同士っぽい会話になって、入れ替わり立ち代わり、利通さんに酒の飲み比べ勝負を挑んできて…。
利通さんはそれをいちいち律儀に受けちゃって…。
利通さん、そんなにお酒強くないのに大丈夫かなあ…。
「もう。皆さん、いい加減にしてくださいっ」
と、つい私は言っちゃってた。
「利通さんも、皆を戦に行かせて自分だけ京都に残るのが悔しいからって、スネて嫌味言わないの。
怖がりのお公家さんが、そばにいてくれって泣きべそで頼むんだから、しょうがないじゃないですか。
そりゃ、戦に行く皆さんのことを思えば、お一人お一人の杯を断れないのもわかりますけど、さすがにこれ以上は体に障ります!」
で、ふと気づくと…なんか皆、茫然と私を見てて。
あれ…やだ…なんか恥ずかしい…。
そのうち、ひとりの藩士さんがぽろっと言った。
「大久保さぁ…そんなこっ、考げてたとですか。こやわからん」
続いて、皆がどっと笑う。
「よか嫁女を貰ろたもしたなあ…。こげなふうに、時々解説してもらわんと、皆、大久保さぁの気持っを誤解したまま、不満を募らせかねもはん」
「ふん。余計なお世話だ。私の感情など、どうでもいい」
「いやぁ…大久保さぁはどうでもいい言うても、我々には大事なこっです」
なんかよくわかんないけど…さっきまでのピリピリした感じ、いつの間にか皆から消えて、柔らかい、機嫌のいい雰囲気になってた。
ちょっと安心。
もしかして…藩士さん達が、このまま利通さんの嫌味を言葉通り受け取ってたら…。
皆は危険な戦場に行くけど、自分は安全な京都で、平穏に過ごせるんだ、いいだろうって…そう言われたと思ってたら…。
そんな小さな気持ちのすれ違いが…いつか大きな深い深いへだたりになりそうで…私、ちょっと怖かったんだもん。