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のばらとモブ

女友達から、フリオニールの名前が出て、はじめて、嫉妬という感情を覚えた。
「フリオニールってさ、優しいよね。女子が重いもの持ってたらすぐに持とうか?って声かけてた。かっこいいよねえ。あんた、仲いいんでしょ?連絡先教えてよ」
クラス替え当時は微塵も興味がなかったくせに、と心のなかでおもった。
女は染めた金色の髪を片手でいじりながら、携帯画面を見ている。
きつい香水に、ほんのり混じった煙草の香りに、嫌気がさした。
フリオニールという男は、そんなもの、一切ない。典型的な反抗期とは無縁の存在だった。
自分の携帯が震えている。
「あいつ、携帯もってねーから」
「嘘でしょ?」
はじめてこちらの顔を見た女は、だらしない顔をしている。
「本当」
嘘をいって、立ち上がる。
空き教室から出て、ずっと震えている携帯を取り出す。画面に名前が浮かんでいる。すぐに電話をとった。
電話越しに、名前を呼ばれた。
「フリオニール、俺しか出ないから、大丈夫だよ」
自分でも驚くほど、やわらかい声が出た。
口角が上がっているのを感じながら、フリオニールの声をきく。
「ああ、すまない。今、委員会が終わったんだ」
「おつかれ。じゃあ、下駄箱の前で待ってるな」
「わかった。俺もすぐ行くよ」
通話をきる。フリオニールは、いつも、自分から決してきることはない。そんなところにも、いとしさを感じてしまう。
下駄箱へ向かう足取りは、軽快だった。
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