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七月の季節

【断髪心中】
 奇怪な事件が起きた。それはきっとどんな名探偵でも解けないような理解できない殺人で、我々も事故で処理しようか迷ったほどだ。

 しかし、原因不明の死体の転がる現場に散らばるソレは、あまりにも事故現場にはするには不釣り合いだった。

 この事件で亡くなったのは高校三年生の男子。恨みをかうことはないような、少しお洒落にうるさい明るめの一般的な少年で、学校生活も家庭事情も普通。友人もおり、トラブルもなければ、死ぬような理由も殺される理由もなかった。

 でも、犯人だけはこう語る。「悪いのはあの人です」と。

 犯人は彼の同級生である女子生徒だった。長い黒髪が特徴的だったらしい。何故“らしい”という言葉を付けるかと言えば、目の前の少女にそんなものは存在していないからだ。

 この女子生徒も特別なこともなければ、問題もない生徒。

 そんな少女の髪がどこにあったのかということを先にいえば、殺人現場という答えになる。そう、遺体の周りに散らばる黒い髪はまるでそこで死体をみながら切ったかのようだった。

「中学の頃に、彼、綺麗な長い黒髪が好きだと言っていたんです。だから、わたし頑張って髪を伸ばし続けたんですけど……」
 少女は短くなった髪をいじりながら話を続ける。
「でもこないだ、言われたんです。『お前の髪だけはさわりたくない』って。他の子の髪を撫でながら」

 とても寂しそうな少女に問いかけた。
「だから、殺したのか??」
 伏目がちに少女は口を開く。

「違うんですよ、殺すつもりはなかったんです。ただどうしても悔しかったから、自分の髪を切るのと一緒にアノ人の髪も切ってやろうと思ったんです」

 たしかにそこら辺の女子よりも綺麗に整えられた黒く艶やかな髪を少年はしていた。

「そしたら少し切っただけで、死んでしまったのです。一緒に死のうと、無理心中になるんですかね。わたしも一生懸命髪を切ったのに…………なんで死ねなかったんだろう??」
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