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七月の季節

【みんなの会】
 私の通っていた高校は一般的な市立高校でしたが、とある一つの取り組みから“即戦力がある”として多くの企業から好評です。その取り組みは《みんなの会》というもの――。

 みんなの会は学級会のようなもので、授業終わりのホームルーム後におこなわれます。
 内容は簡単で一つの決められた議題について話し合いをするだけです。

 議題は様々で、学生のSNSの使い方について話し合う日もあれば、アンパンの中身は何であるべきかという日さえもあります。

 時間制限はありません。ただし、みんなの会を終わらせるためには《クラス全員の意見が一致すること》。という条件がありました。

 全員の意見がすぐに一致すれば、それで帰ったり部活に行くことができます。逆に一人でも違う意見を言う人がいれば、何時間経っても帰れません。
 みんなの会はどんなに急いでいる人がいてもおこなわれましたし、歯医者の予約くらいでは抜けることは許されませんでした。

 ですから先生には出来る限りバレないようにでしたが、急いでいる子はあらかじめ周囲の人に協力を求めておいたり、交換条件を出す、弱みを握る、物を渡してお願いするなんていうことも日常的でした。というより、そういったことがない日の方が少なかったです。

 それでも慣れてくると、何度か多数決をとるうちに人数の多い方に意見を合わせ、少数派を潰していくということが普通になりました。

 大半の生徒は自分の意見を主張することなどなかったですし、部活などに早く参加したかったので本当は違う意見があっても周りに合わせる人が多かったと思います。
 なので回数を重ねるごとにみんなの会はスムーズに終わるようになっていきました。

 そうして、学生の頃はみんなの会の意味なんて深く考えたことはなかったのですが、社会に出てからはそのありがたみがよくわかりましたし、もっと昔から義務教育に取り入れておけばよかったのではないかとすら思う日も多いです。
 私は問題を起こすこともなくとても上手く会社に適合しています。
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