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七月の季節

【心臓に刺さったもの】
 少し可笑しな話をしよう――。

 それは夕日が眩しい国道でのこと。一台の車が居眠り運転をしてしまい、帰宅のために渋滞していた車の列に突っ込んだ。
 その事故は13台の車を巻き込んだ玉突き事故になったのだが、幸運なことに軽傷者が出ただけでだった。

 ここからが話の本番。

 玉突き事故の中で一番損傷が激しい車は軽傷で済んだのが不思議なくらいで、理由はその前の車が工事現場の足場のパイプを運んでいるトラックだったために、鉄パイプが何本もフロントガラスを突き抜けて刺さっていた。

 救助が来るまで運転手はサーカスのナイフ投げの的にされた人のように運転席にはりつけになっていたそうだ。
 特に胸の真ん中、心臓の位置ギリギリで止まった鉄パイプには微かに血が付着していたそうで誰もが奇跡的だと手を叩いた。

 やたらと肌が白い運転手は助け出されると笑いながら「鉄パイプじゃなくて、木の杭だったら死んでましたね」と言って周りを笑わせたという。

 世の中には度胸のある人がいるものだ。
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