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七月の季節

【出して】
 この街には人を食らうという化け物が住んでいる屋敷があった。先生はその屋敷に近付いてはいけないと言ってるけれど、みんな無事に帰ってきてる――。

「俺たちも行こうぜ!!」
 いつも一緒に投稿する幼馴染のみっくんは左頬にオリオン座のようなほくろがある。
「いつ行くの??」と尋ねると、「今日!!」と言われた。

「ランドセルを置いたら、神社に集合な」
 雲一つない夏の青空の下、みっくんは楽しそうに大きく手を振る。
「ちゃんと、武器を持って来いよ」
 その言葉に大きく手を振り返す。

 武器か……。姉と二人で使っている部屋にランドセルを投げ捨て、自分の机をあさる。化け物を倒すのにはなにが良いだろう。
 水鉄砲か、オモチャのナイフ。こんなんじゃきっと駄目だ。ヨーヨー?? ビー玉?? メンコ?? こんなんじゃ駄目だ!!

 神社に着くと、みっくんがいつも野球で使ってる赤いバットを持って立っていた。
「お前は何を持ってきたんだ??」

 悩んだ結果、僕はお姉ちゃんのコンパクトミラーを持ってきた。金色でキラキラで、魔法陣みたいな綺麗な模様が入ってる。これを見せればきっと化け物も逃げ出すと思う。
 それをみっくんに見せると笑いながら「まあ、何かあったら俺が助けてやるよ!!」と言った。

 化け物の屋敷は神社の裏の頂上へ続く道の途中に不自然に立ってるポストの奥にあるらしい。
 自分たちの背の高さほどある草をかき分け、進むと5分くらいで大きな鉄の門があって、そのさらに奥にこの辺りでは珍しい洋館が立っていた。

 蔦だらけの洋館だけれど本当に誰かが出入りしているらしくて、扉の周りだけは蔦がなくなている。

「ねえ。屋敷に出る化け物ってどんなのかな??」
「子供は食べない化け物じゃないか。みんな帰ってきてるし」
「そっか」

 僕はコンパクトを取り出して、手に持ってから屋敷に入った。
 入ってすぐ、屋敷は鏡だらけだったのでとても驚いたけど、人が住んでるんじゃないかというくらい綺麗で、大小の色んな鏡はちょっとミラーハウスに遊びに来たみたいで僕は段々楽しくなっている。

 屋敷を一周ぐるりと回り、外に出ると来る前と同じ綺麗な夏の青空が広がっていた。
「全然怖くなかったね。また遊びに来たくらい」
 僕が笑いながらそういうと、みっくんは笑いながら「俺はもういいかな」と言って左手で僕の右手を掴んで走り出す。

 走りながら、僕はその特徴のない横顔を見て首を傾げた。

「ねえ。あなた、誰??」
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